在宅と医療の連携で挑む2025年問題への対応策

2025年、団塊世代と呼ばれる年齢層の方が75歳以上となり、医療・介護の需要が急増する「2025年問題」が迫っていることをご存知でしょうか。
この課題に対応するためには、在宅と医療の連携が重要な解決策として注目されています。
本記事では、在宅医療の現状と課題を分析し、具体的な推進策について解説します。
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目次
2025年問題と在宅医療の重要性
2025年問題とは、団塊世代と呼ばれる年齢層の方が75歳以上の後期高齢者となることで医療・介護の需要が急増する社会的課題のことです。
この問題への対応として、在宅医療の重要性が高まっています。
在宅医療は、医療費の抑制と高齢者のQOL(生活の質)向上の両立を可能にする重要な解決策です。
2025年問題とは
2025年問題が生じることで、医療分野と介護分野の需要が急増し、現場がひっ迫するほか、社会保障制度の持続性が危ぶまれます。
2025年には、75歳以上の人口が全人口の18%を超え、5人に1人が後期高齢者となる見込みです。
これに伴い、医療費の増加や介護需要の急増が予想されています。
在宅医療の需要増加の予測
東京都地域医療構想の推計によると、2025年の在宅医療(訪問診療)の必要量は、2013年の約1.5倍に増加すると見込まれています。
この需要増加に伴い、在宅医療の担い手の育成・確保に向けた取り組みが必要です。
また、地域における医療・介護の連携がより一層充実することも重要です。
高齢者の増加に伴い、介護を必要とする方が増加し、長期的かつ継続的な医療・介護サービスが必要になると予測されています。
在宅医療推進の意義と目的
在宅医療の推進の意義・目的は、『患者のQOL向上』と 『医療費抑制』の2つです。
高齢者が住み慣れた自宅で療養生活を送ることで、生活の質を維持しながらも、必要な医療を受けられます。
それと同時に、病院での長期入院を減らすことで医療費の抑制にもつながります。
また、在宅医療では、地域包括ケアシステムの重要な要素として、医療・介護・生活支援の一体型提供を行うことが今後の課題です。
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在宅医療の現状と課題
在宅医療の現状と課題について、「提供体制」「医療・介護連携」「人材確保・育成」の観点から解説します。
これらの課題を理解し、適切に対応することが、2025年問題への効果的な対策につながるでしょう。
在宅医療の提供体制の現状
現在の在宅医療の提供体制は、以下の専門機関が連携して構築されています。
- 訪問診療を行う医療機関(医師)
- 訪問看護ステーション(看護師)
- 薬局(薬剤師)
- 訪問介護事業所(介護職)
しかし、24時間対応可能な在宅医療体制や、急変時の対応体制など、まだ多くの課題が残されている状況です。
地域によっては在宅医療を提供する医療機関や訪問看護・訪問介護事業所の数が不足しており、サービスの地域格差も問題となっています。
医療・介護連携における課題
医療・介護連携における主な課題は、『情報共有の不足』と『多職種間でのコミュニケーション不足』です。
患者の健康状態や治療方針に関する情報が、医療機関と介護事業所の間で十分に共有されていないケースがあり、適切なケアの提供に支障をきたすことがあります。
また、医療職と介護職の専門性の違いにより、使用する専門用語の違いがコミュニケーションの障壁となっている場合もあるのです。
これらの課題を解決するために、ICTを活用した情報共有システムの構築や、多職種連携のための研修会の開催が進められています。
在宅医療に関わる人材の確保と育成
在宅医療の需要増加に伴い、人材の確保と育成が緊急課題となっています。
特に、在宅医療を担う医師や訪問看護師の不足が深刻です。
また、在宅医療には幅広い知識と技術が求められるため、継続的な教育と研修が必要です。
人材育成のために、区市町村や医師会等関係団体と連携し、人材育成・確保のための研修を実施しています。
それとともに、かかりつけ医と在宅医療を専門に担う医療機関との連携強化や、24時間診療体制の構築、新卒訪問看護師の育成にも取り組んでいます。
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在宅医療推進のための具体的施策
在宅医療を推進するための具体的施策として、『地域包括ケアシステムの構築』『多職種連携の強化』『ICT活用による効率化』があります。
これらの施策を効果的に実施することで、2025年問題に対応できる在宅医療体制の構築が期待されます。
地域包括ケアシステムの構築と強化
地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるよう、医療・介護予防・住まい・生活支援が一体的に提供される体制です。
在宅医療はこのシステムの重役を担っています。
システムの構築と強化のために、行政・医療機関・介護事業所・地域住民などが協力し、地域の特性に応じたサービスの提供体制を整備しています。
多職種連携の推進と情報共有の仕組み作り
多職種連携の推進は、質の高い在宅医療を提供するために必要不可欠です。
医師・看護師・薬剤師・ケアマネジャー・介護職など、多くの職種が協力して患者のケアにあたります。
それにより、包括的なサービスの提供が可能になるのです。多職種連携を促進するために、定期的なカンファレンスの実施・合同研修会の実施・情報共有ツールの活用などが行われています。
ICTを活用した在宅医療の効率化
ICTの活用は、在宅医療の効率化と質の向上に大きく貢献しています。
ICTとは、具体的に以下のようなものを指し、医療・介護の現場で活用されています。
ICTの例 | 詳細 |
電子カルテシステム | 患者情報の共有が容易になり、診療の質が向上します。 |
遠隔医療/オンライン診療 | 通院が困難な患者の診療に役立っています。 |
AI診断支援システム | 医療分野での診断精度の向上に役立っています。 |
IoTデバイス | これを活用した患者モニタリングにより、患者の状態をリアルタイムで把握し、早期対応が可能になります。 |
これらのICT技術の導入により、限られた人材と資源を有効活用し、効率的な在宅医療の提供を可能にしています。
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在宅医療における質向上と評価
在宅医療の質を向上させることは、2025年問題への対応において重要な取り組みです。
ここからは、「サービスの質の評価指標設定」「患者・家族の満足度向上」「在宅看取りの推進」について解説します。
在宅医療の質の評価指標
在宅医療の質を客観的に評価するため、さまざまな指標が開発されています。
具体的には、以下のような指標があります。
- 訪問診療の頻度
- 緊急時の対応体制
- 多職種連携の状況
- 患者の症状改善度
また、患者のQOL(生活の質)や ADL(日常生活動作)の維持・向上も重要な指標です。
これらの指標を用いて定期的に評価を行い、サービスの改善につなげることが求められています。
患者・家族の満足度向上への取り組み
患者と家族の満足度向上は、在宅医療の質を高める上で重要な要素です。
満足度向上のためには、まず患者と家族のニーズを的確に把握すること。
そして、それに応じたケアを提供することが必要です。具体的な取り組みとしては、以下の通りです。
- 患者・家族への定期的なアンケート調査の実施
- 意見箱の設置
- 患者参加型のケア計画の作成
また、患者と家族への丁寧な説明と情報提供、心理的サポートの充実も重要です。
これらの取り組みにより、患者と家族が安心して在宅療養を続けられる環境づくりが進められています。
在宅看取りの推進と支援体制
在宅看取りの推進は、患者の希望に沿った最期を迎えられるようにするとともに、医療費の抑制にも役立つ重要な取り組みです。
在宅看取りを推進するためには、以下のようなサポートが必要です。
- 看取りに関する知識と技術がある医療従事者・介護従事者の確保
- 24時間対応可能な支援体制の構築
- 家族への心理的サポートの充実
- 看取りに関する研修会の開催
- 緊急時のバックアップ体制の整備
- グリーフケア(遺族ケア)の提供
また、地域住民への啓発活動を通じて、在宅看取りに対する理解を深める取り組みも進められています。
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今後の在宅医療の展望と課題
2025年以降の在宅医療需要を予測し、持続可能な在宅医療体制の構築を行うことが重要です。
今後の展望と課題について考えることで、将来的な在宅医療の充実が期待されます。
2025年以降の在宅医療需要の予測
2025年以降も、在宅医療の需要は増加し続けると予測されています。
特に、2040年頃には団塊ジュニアと呼ばれる世代が65歳以上となり、さらなる高齢化が進むことが見込まれています。
この需要増加に対応するためには、在宅医療の提供体制のさらなる拡充が必要です。
また、認知症患者の増加や、独居高齢者の増加など、在宅医療を取り巻く問題にも注目する必要があります。
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まとめ:在宅医療推進のための行動指針
在宅医療推進には、『多職種連携の強化』『ICTの活用』『人材育成』が必要不可欠です。
地域の実情に応じた包括的なケアシステムを構築し、患者・家族中心の質の高い在宅医療を実現することが重要です。
継続的な評価と改善を通じて、持続可能な在宅医療体制を確立しましょう。

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