若年性認知症かもしれないと感じたとき 家族が最初にすべきことと心の整え方

#介護の悩み#若年性認知症#高齢者認知症違い

家族の様子に「以前と違う」という違和感を抱いておられる方。

同じ話を何度も繰り返す、仕事や家事の段取りが極端に悪くなった、あるいは凡ミスが増えた。それは単なる疲れや加齢では説明しきれない、胸のざわつきを伴うサインかもしれません。

一方で、「気のせいだろう」「疲れているだけだ」と自分に言い聞かせたいと思うのも、家族としての自然な心理です。大切な人だからこそ、病気を疑うことに罪悪感を覚え、今の生活が壊れる恐怖から判断を先延ばしにしてしまう方は少なくありません。

本記事は、強引に病名を特定するためのものではありません。家族が診断を下すのではなく、今の状況が「専門家に相談すべき段階なのか」を整理し、「家族の生活を守るための第一歩」を踏み出すためのガイドです。

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若年性認知症とは?家族が直面する「現実」の整理

若年性認知症は、65歳未満で発症する認知症の総称です。働き盛りや子育て世代を直撃するため、高齢者の場合よりも「家族の生活設計」に大きな影響を及ぼします。

高齢者認知症との決定的な違い

高齢者の場合は「リタイア後の課題」として捉えられますが、若年性の場合は「現在進行形の生活」そのものが激しく揺らぎます。人生のゴールデンタイムにおいて、積み上げてきたキャリアや将来設計が突然の断絶に直面するため、家族が背負う負荷は極めて多層的です。

  • 家計の支柱としての危機: 本人が家計の主要な担い手である場合、収入の減少や断絶は死活問題です。特に35年ローンなどの住宅返済、子供の大学進学といった教育資金のピーク、さらには自分たちの老後資金の形成期が重なるため、経済的な将来設計が根底から覆される恐怖と隣り合わせになります。
  • 重い社会的責任と信用の維持: 職場では管理職や責任ある立場に就いていることが多く、診断前の「不可解なミス」や「能力低下」が単なる怠慢や性格の変化と誤解され、長年築いた社会的信用を失うリスクがあります。病名が判明した後も、職場への説明、休職手続き、退職勧奨への対応など、医療的なケア以外での「社会的な調整」に家族が奔走しなければなりません。
  • 介護者の多忙と「ダブルケア」の深刻化: 介護を担う配偶者自身も、仕事の責任が重い時期にあります。加えて、まだ手のかかる子供の育児や教育、さらには自分たちの親の介護まで重なる「ダブルケア(多重ケア)」の状態に陥りやすく、精神的・体力的な限界を迎えやすいのが実情です。家族を支えるパートナーという存在を、最も必要とする時期に失う(ケアが必要な側に回る)という喪失感も、心理的な負担に拍車をかけます。

国内の現状

厚生労働省の調査(2020年)では、国内の患者数は約3.57万人と推定されています。決して稀なケースではなく、どの家庭にも起こり得るリスクです。数字を恐れるのではなく、「早く動くほど、使える制度(武器)が増える」という認識を持つことが重要です。

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違和感を言語化する:家族が気づく初期サイン

家族の「直感」は、医学的診断よりも先に変化を捉えます。その違和感を「気のせい」で終わらせないためのチェックポイントです。

日常生活の変化

  • 会話のキャッチボールがスムーズにいかない: 以前に比べて語彙が減り、「あれ」「それ」といった代名詞が増える、あるいは話の脈絡が突然途切れてしまうことが増えます。問いかけに対して的外れな回答が返ってくるようになり、家族との深いコミュニケーションに壁を感じ始めます。
  • 家事の段取り(実行機能)の低下: 料理で言えば「並行して数品作る」といった複数の工程を同時にこなせなくなり、味付けが極端に濃くなったり、掃除が中途半端な状態で放置されたりします。以前は無意識にできていた「効率的な手順の組み立て」が著しく困難になっているサインです。
  • 同じ質問や確認を短時間で繰り返す: 数分前に答えたばかりのことを、まるで初めて聞くかのように再度尋ねてきます。短期記憶の保持が難しいため、本人の中で情報が蓄積されず、不安から何度も同じ確認を繰り返すというサイクルに陥りやすくなります。
  • 使い慣れた家電操作や道具への戸惑い: 洗濯機のコース設定やテレビのリモコン、スマートフォンの操作など、長年使いこなしてきたはずの機器の前で立ち尽くす姿が見られます。身体が覚えていたはずの「操作手順(手続き記憶)」が失われ始めている可能性があります。

仕事・社会生活でのサイン

  • 金銭管理の混乱と支払いの滞り: 公共料金の支払いを忘れる、ATMでの操作が急に分からなくなる、あるいは不必要な高額商品を複数購入してしまうといった金銭トラブルが目立ち始めます。これらは単なる「うっかり」を超えた、論理的な判断力の低下を示唆しています。
  • 約束の忘却やスケジュールの破綻: 重要な会議の時間を間違える、あるいは約束そのものを完全に忘れてしまう頻度が高まります。手帳やカレンダーに記録してあっても、その情報を今の行動に結びつけることができず、社会的な信用を損なう原因となります。
  • 初歩的なミスの頻発と業務効率の著しい低下: 専門的なスキルを持つはずの業務で、新人でもしないようなミスを繰り返したり、以前の数倍の時間をかけても仕事が終わらなくなったりします。周囲からの指摘に対しても適切なリカバーができなくなることが、家庭内よりも先に職場で表面化するケースは少なくありません。

【注意】うつ病や更年期障害との混同 意欲低下やイライラは、うつ病や更年期障害、過労でも現れます。家族が診断する必要はありません。「何かが違う」という具体的なエピソードを「記録」しておくことが、専門医への最短ルートになります。

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若年性認知症を引き起こす主な疾患

原因疾患により、進行速度や現れる症状が異なります。

  1. アルツハイマー型: 最も多く、記憶障害だけでなく、空間把握能力や判断力の低下が先行することもあります。
  2. 血管性: 脳梗塞などが原因. 症状が階段状に進行し、日によって状態の良し悪しが激しいのが特徴です。
  3. 前頭側頭型(ピック病など): 記憶より先に「性格の変化」や「反社会的行動」が現れます。万引きや突然の怒りなど、家族が精神的に追い詰められやすい疾患です。
  4. レビー小体型: 「幻視(いないものが見える)」や手の震えが特徴です。

※中には、適切な治療で改善する「治る認知症」(正常圧水頭症、ビタミン欠乏症など)が隠れている場合もあります。「様子見」は、回復のチャンスを逃すリスクを孕んでいます。

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4. 疑いがあるとき、家族が取るべき「3つの行動」

感情的に動く前に、以下のステップで「環境」を整えてください。早期の対応が、将来的な家族の負担を最小限に抑える鍵となります。

STEP 1:どこに相談するかを決める

適切な診療科を選ぶことは、正確な診断への近道であると同時に、本人の心理的ハードルを下げることにもつながります。

  • かかりつけ医: いきなり専門病院へ行くことに強い抵抗がある場合、まずは風邪などで通っている信頼できる内科医に相談しましょう。これまでの健康状態を知る医師から「専門的なチェックを一度受けておこう」と促してもらうことで、スムーズに紹介状を書いてもらえるケースが多いです。
  • 専門診療科(神経内科・脳神経外科): 脳そのものの「物理的な異常」や「血流障害」などを調べるのが得意な診療科です。震えや歩きにくさなど身体症状がある場合はこちらが適しています。
  • 専門診療科(精神科・心療内科): 幻覚、妄想、気分の落ち込みといった「精神的な症状」が強く出ている場合に適しています。認知症に伴う心理的ケアにも長けています。
  • もの忘れ外来: 多くの総合病院に設置されている、認知症診断に特化した窓口です。MRIなどの最新機器による検査と、専門医による多角的な評価を同時に受けられるのが最大のメリットです。

STEP 2:診察をスムーズにする準備

医師は診察室で見せる本人の「取り繕い」や一時的な「しっかりした姿」だけでは、日常の深刻な変化を見抜けません。情報を客観的に伝える工夫が必要です。

  • 「変化の記録」をメモや手紙にする: 「いつから」「どんな状況で」「どんな困ったことが起きたか」を箇条書きにしておきます。
    • 例:○月○日、いつも通っているスーパーからの帰り道が分からなくなった。
    • 例:○月○日、ガスの火をつけたまま寝てしまい、あわや火事になりかけた。
  • 診察前にこっそり渡す: 本人の前でこれらを話すと、本人が傷つき、医師への不信感を募らせる原因になります。受付時に「家族からのメモです。先に先生に読んでほしいです」と添えて手渡す、あるいは事前診察の希望を伝える準備をしておきましょう。

STEP 3:関係性を守る(やってはいけない3つの「NO」)

本人が最も不安を感じていることを理解し、家庭を「責められる場所」ではなく「守られる場所」に維持することが不可欠です。

  1. NO:本人を責める・間違いを正しすぎる: 「さっき言ったでしょ!」「どうしてこんなことができないの?」という叱責は、脳の機能が低下している本人には「理不尽な攻撃」として映ります。過度なストレスはパニックや抑うつを引き起こし、症状の進行を加速させてしまいます。
  2. NO:記憶力を試すテストを繰り返す: 「今日の朝ごはんは何だった?」「今日は何曜日?」としつこく確認するのは、本人に「できない自分」を繰り返し突きつける残酷な行為です。自尊心が失われ、家族との関係が急速に悪化し、結果として受診への強力な拒否感を生みます。
  3. NO:無理に病名を認めさせようとする: 本人が病気を否定するのは、脳の病変によって「自分の欠陥を認識する能力」自体が損なわれている(病識の欠如)可能性があるためです。理屈で説得するのではなく、「最近疲れがたまっているようだから、健康診断のつもりで一度診てもらおう」と、「本人の尊厳と安心」を最優先にした声掛けを心がけてください。

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生活と仕事を守るための「盾」を持つ

家族だけで抱え込むのは、物理的・精神的に不可能です。早い段階で以下の窓口・制度を把握してください。

  • 最初の相談先(心の孤立を防ぐために):
    • 若年性認知症コールセンター: 全国どこからでも、専門の相談員に匿名で相談可能です。医療・介護の相談だけでなく、「職場への伝え方」や「利用できる経済的支援」など、若年性特有の悩みに精通したアドバイスが受けられます。一人で悩む孤独を解消する最初の窓口として活用しましょう。
    • 地域包括支援センター: 高齢者向けの施設と思われがちですが、若年性の相談も受け付けている地域の総合相談窓口です。社会福祉士などの専門家が在籍しており、地元の福祉サービスとの連携や、将来的な介護体制の構築に向けた具体的なプランを一緒に考えてくれます。
  • 経済的支援(生活の基盤を維持するために):
    • 自立支援医療(精神通院医療): 認定を受けると、認知症の治療に関わる通院費や薬代の自己負担が、原則として「3割から1割」に軽減されます。長期にわたる投薬が必要になる場合、家計の負担を大幅に抑える重要な制度です。
    • 障害年金: 病気や怪我で働くことが難しくなった際に、国から支給される年金です。若年性認知症は支給対象となっており、生活費の補填として大きな支えになります。初めて受診した日(初診日)が重要になるため、早めに社労士や年金事務所に相談するのがコツです。
    • 介護保険: 本来は65歳からですが、若年性認知症は「特定疾病」に指定されているため、40歳以上であれば利用可能です。ヘルパーの派遣やデイサービス、福祉用具のレンタルなどを利用することで、家族の介護負担を軽減し、共倒れを防ぐための強力な武器となります。

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まとめ:あなたの「直感」は、家族を守るための決断です

「若年性認知症かもしれない」という不安に向き合うことは、本人への裏切りではなく、「これからの家族の生活を守るための誠実な行動」です。

まずは「診断」を目指すのではなく、「話を聞いてもらう」ことから始めてください。専門の相談窓口へ電話を一本かける。その小さな一歩が、あなたと家族の尊厳を守る大きな分岐点になります。

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