最期の瞬間に寄り添って
最期の瞬間に寄り添って
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執筆者
氏名:堀池和将
保有資格:介護福祉士
職務:訪問介護管理者
プロフィール:専門分野における豊富な知識と経験を持ち、数多くの新規施設立ち上げにも携わり施設長も歴任してきた。現在は地域密着介護に貢献するため、訪問介護部門の管理者として従事している。
新人の佐藤さんが初めての看取りを経験したのは、彼女が入職して4ヶ月目のことだった。
その日、私は夜勤の管理者として勤務していた。深夜2時過ぎ、突然のナースコールに佐藤さんが駆けつけた。長年当施設で過ごされていた山田さんの容態が急変したのだ。佐藤さんの声が震えているのが聞こえた。「施設長、山田さんの呼吸が…」。私はすぐに駆けつけ、状況を確認した。山田さんの最期の時が近づいていることは明らかだった。
佐藤さんの顔が青ざめているのを見て、私は静かに彼女の肩に手を置いた。「大丈夫だよ。一緒に山田さんに寄り添おう」と声をかけると、彼女はゆっくりと頷いた。私たちは山田さんのベッドサイドに座り、優しく手を握った。佐藤さんは涙を堪えながらも、しっかりと山田さんを見つめていた。「山田さん、私たちがついていますからね。安心して」と、佐藤さんが優しく語りかける。その言葉に、私も胸が熱くなった。山田さんの呼吸は徐々に弱くなり、やがて静かに息を引き取った。その瞬間、佐藤さんは涙を流しながらも、最後まで山田さんの手を握り続けていた。
看取りの後、佐藤さんと事務所で話をした。彼女は泣きながらも、「山田さんの最期に立ち会えて本当に良かったです。介護の仕事の意味を深く感じました」と語ってくれた。私は彼女の成長を感じ、誇らしく思った。そして、「佐藤さん、あなたは素晴らしい介護士になるよ。山田さんもきっと喜んでいると思う」と伝えた。その言葉に、彼女は安堵の表情を浮かべた。この経験は、佐藤さんだけでなく、施設全体にも大きな影響を与えた。職員たちは看取りの大切さを再認識し、より深い思いやりを持ってケアに当たるようになった。
介護の仕事は時に辛く、困難なこともある。しかし、利用者の人生の最後の瞬間に寄り添い、その尊厳を守ることができるのは、この仕事の大きな特権でもある。佐藤さんの成長を見守りながら、私は改めてそう感じた。これからも、温かい心と専門性を持って、一人一人の利用者に寄り添う介護を、職員全員で実践していきたい。そして、佐藤さんのような新しい世代の介護士たちが、この仕事の素晴らしさと重要性を感じ、成長していく姿を見守っていきたいと思う。
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