【ストレス・セルフチェック付き】「仕事に行きたくない」は正常な反応 「心」がエラーを起こしている
「利用者の呼び出し音が、家に帰っても耳に残っている」 「仕事に行く前、玄関で靴を履こうとすると涙が出る」 「あんなに好きだったお年寄りが、今はただの『業務対象』にしか見えない」
もしあなたが今、このような状態なら、このページを開いたことは正解です。 まず最初に断言します。あなたが辛いのは、あなたが弱いからではありません。ましてや能力不足でもありません。
介護職は構造的に「共感疲労(Compassion Fatigue)」と「道徳的損傷(Moral Injury)」が起きやすい、高負荷な専門職です。あなたの脳は今、その優しさゆえにエラーを起こしている状態です。
この記事では、医学的・心理学的見地に基づいたセルフチェックで現状を「可視化」し、今日からあなたの心身を守るための「具体的な防衛策」を提示します。
精神論はいりません。必要なのは、今の状態を客観視する「物差し」と、環境を変えるための「武器」です。
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目次
なぜ、あなたの心は「エラー」を起こしているのか?
「忙しいから」「人がいないから」それだけが原因ではありません。 介護職特有のメンタル不調のメカニズムを知ることで、不要な自責の念を捨ててください。
① 共感疲労:優しさが「刃」に変わる
介護職を選ぶ人は、本来「共感性」が高い人です。しかし、他者の痛みや苦しみに深く寄り添い続けることで、心が摩耗し、感覚が麻痺してしまう現象を心理学で「共感疲労」と呼びます。 「最近、利用者に冷たくなった気がする」と感じるなら、それは性格が悪くなったのではなく、心が防衛本能として感情のスイッチを切っている証拠です。
「放射線を浴び続ければ誰でも被曝するように、他者の痛みに触れ続ければ誰でも心は摩耗する」 これは職業的な必然なのです。
② モラル・インジュリー(道徳的損傷)
「もっと一人ひとりに時間をかけたいのに、業務に追われて流れ作業になってしまう」 自分の倫理観(こうあるべき)と、現実の行動(こうせざるを得ない)のギャップが続くと、心は深い傷を負います。これを「道徳的損傷」と呼び、燃え尽き症候群(バーンアウト)の大きな原因となります。
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【緊急度別】介護職専用ストレス・セルフチェック
厚生労働省の指標およびバーンアウトのサインをベースに、現場特有の症状を反映させました。今の状態を客観的に判定してください。
【危険度レベル:中】黄色信号(5個以上で要注意)
身体的・行動的な変化が出始めています。まだ動けるうちにケアが必要です。
- [ ] 休日は泥のように眠り、家事が手につかない
- [ ] 以前楽しめていた趣味が、今は億劫で仕方がない
- [ ] 些細なことで同僚や家族にイライラしてしまう
- [ ] 「辞めたい」と毎日一度は考えている
- [ ] 食欲が極端に落ちた、または過食が止まらない
- [ ] 常に肩こりや頭痛、胃痛がある
- [ ] 睡眠途中で目が覚めてしまい、その後眠れない
【危険度レベル:高】赤信号(1個でも当てはまれば即離脱)
以下は、脳が「限界」を超えているサインです。理性が効かなくなる前に、強制的な休息が必要です。
- [ ] 幻聴が聞こえる(いないはずの場所でナースコールや利用者の声が聞こえる)
- [ ] 感情失禁がある(通勤中やふとした瞬間に、理由もなく涙が止まらない)
- [ ] 離人感がある(自分がロボットのように感じ、手足の感覚が遠い)
- [ ] 希死念慮(「消えてしまいたい」「朝、目が覚めなければいいのに」と思う)
- [ ] 虐待への衝動(利用者に手を上げそうになる、暴言を吐きそうになる瞬間がある)
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赤信号が点灯したあなたへ:即日実行すべき「緊急回避」3ステップ
この状態は「うつ病の一歩手前」ではなく、すでに「脳の機能障害」が起きています。 「明日からどうするか」を考えないでください。 判断能力が奪われている状態で決断するのは危険です。 以下の手順で、「物理的に職場から離れる」ことだけを実行してください。
ステップ1:心療内科に電話する
まずは専門医の予約をしてください。しかし、現在は初診まで数週間〜数ヶ月待ちと言われることも珍しくありません。 もし「すぐには診れない」と言われたら、迷わずステップ2へ進んでください。
ステップ2:近所の「内科」を受診する(裏ルート)
精神科が満員なら、まずは内科を受診してください。 医師にこう伝えます。 「仕事のストレスで眠れず、食事が喉を通らない。動悸がする」
精神疾患の診断はできなくても、不眠や胃炎などの「身体症状」があれば、内科医でも「加療(休養)を要する」という診断書を書ける場合があります。まずはこれで「2週間の休み」を確保し、その間に精神科を探してください。
ステップ3:「診断書」を盾にする
診断書は「水戸黄門の印籠」です。これが出た時点で、会社は安全配慮義務により、あなたを働かせることが法律上ほぼ不可能になります。「辞めさせてくれない」という心配は無用です。休む権利が法的に確定します。
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黄色信号のあなたへ:交渉ではなく「通告」をする
まだ働けると思っていても、黄色信号の状態での無理は事故の元です。 上司に「相談」しようとしないでください。相談は「却下」される可能性がありますが、「報告」は事実として受け取るしかありません。
以下のテンプレートをそのまま使い、感情を挟まず伝えてください。LINEやメールでも構いません。
【リスク管理としての業務調整依頼・テンプレート】
「お疲れ様です。ご相談があり連絡いたしました。 現在、疲労と睡眠不足による集中力の低下が著しく、ヒヤリハット手前のミスが頻発している状態です。 このままの状態で業務(特に夜勤・入浴介助)を続けることは、利用者の転倒や誤薬などの重大事故に直結するリスクが高いと判断しました。 事故防止の観点から、体調が回復するまでの◯日間、夜勤の免除(または業務量の調整)をお願いいたします。 個人の辛さの訴えではなく、安全管理上の報告としてお伝えさせていただきます。」
ポイントは「もし事故が起きたら、この報告を無視した管理者の責任になりますよ」というメッセージを、行間に埋め込むことです。
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介護職を「辞める」前に。「戦場を変える」という選択
「介護が嫌いになった」のではなく、「今の施設のシステム」があなたを傷つけているだけかもしれません。 ただし、隣の芝生は青く見えます。「どこに行けば何が楽になるか」だけでなく、「新たなストレス」も理解した上で選びましょう。
| ストレスの源泉 | おすすめの転換先 | メリット(楽になること) | 注意点(新たなストレス) |
| 集団行動・女性社会 | 訪問介護 | 同僚・上司の目を気にせず、1対1のケアに集中できる。 | 困った時にすぐ助けを呼べない。利用者宅の衛生環境や家族との関係に左右される。 |
| 身体介助・腰痛 | デイサービス | 自立度が高く、夜勤がないため生活リズムが整う。 | レクリエーションや送迎業務など、マルチタスク能力が求められる。 |
| 認知症・暴力・不穏 | 有料老人ホーム(自立型) | 接遇やサービス力が重視され、穏やかな関わりができる。 | 「介護」というより「ホテルマン」的な高度な接客・マナーが求められる。 |
| 終わりのない業務 | 訪問入浴 | 3人1組のチーム制で、業務範囲と終了時間が明確。 | 体力勝負。チーム内の人間関係が悪いと車内が逃げ場のない空間になる。 |
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最後に:あなたは「使い捨ての資源」ではない
プロフェッショナルとは、無理をして働き続けることではありません。
「自分のケアができない人間には、他者のケアはできない」
これが対人援助職の鉄則です。 今のあなたは、誰かを助ける側ではなく、助けられるべき側です。まずは自分自身を「要介護者」として扱い、全力で守ってください。
「助けて」と声を上げることは、決して恥ずかしいことではありません。 あなたの人生の主導権を、その手元に取り戻してください。

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