介護医療院とは?Ⅰ型・Ⅱ型の違いから特養との比較・費用まで徹底解説
「病院からは退院を促されているけれど、自宅で医療ケアをする自信がない……」
「特養は医療対応が難しいと言われたけれど、どこに行けばいいの?」
親の介護において、こうした「医療と生活の場」の狭間で悩む方は少なくありません。そこで新たな選択肢として注目されているのが「介護医療院」です。
本記事では、介護医療院が具体的にどのような施設なのか、類似施設(特養・老健・病院)との決定的な違い、Ⅰ型・Ⅱ型の区分、そして気になる費用までを網羅的に解説します。病院と自宅の中間ではなく、「医療機能を持った住まい」という新しい形の施設について、正しく理解していきましょう。
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目次
介護医療院とは?どんな施設か分かりやすく解説
介護医療院とは、「住まい」としての機能を持ちながら、日常的な「医療ケア」を長期的に受けられる介護保険施設です。
これまでは、医療が必要な高齢者は「病院」に長期入院するか、無理をして「自宅」で過ごすかの二択になりがちでした。しかし、病院はあくまで治療の場であり、生活の場ではありません。
そこで、介護療養型医療施設の廃止・転換に伴い、医療依存度の高い高齢者が「最期まで安心して暮らせる生活の場」として新設されたのが介護医療院です。
介護医療院の役割と3つの機能
介護医療院は、病院と特養(特別養護老人ホーム)の「いいとこ取り」をしたような役割を持っています。
- 医療と介護の一体的提供:日常的な医学管理と、食事・排泄などの身体介護を同時に提供します。
- 長期療養・生活施設としての機能:殺風景な病室ではなく、プライバシーに配慮された「住まい」として機能します。
- 看取り(ターミナルケア)の実践:人生の最期まで尊厳を持って過ごせるようサポートします。
急性期治療(手術や集中治療)は行わず、病状が安定した後の「慢性期医療」を継続する場所であることが、一般の病院との大きな違いです。
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介護医療院の特徴(看護・介護・リハビリ体制)
入所者が安心して暮らせるよう、手厚い人員配置が義務付けられています。
- 24時間看護体制:夜間でも看護師が常駐しているため、急変時や夜間の医療処置も安心です。
- 医師の配置義務(常勤):特養とは異なり、常勤医師がいるため、日々の健康管理がスムーズです。
- 生活支援:介護スタッフによる食事・入浴・排泄介助に加え、レクリエーションなども行われます。
- 生活リハビリ:理学療法士などにより、機能を維持するためのリハビリが提供されます。
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介護医療院の種類:Ⅰ型とⅡ型の違い
介護医療院には、入所者の身体状況や必要な医療レベルに合わせて「Ⅰ型」と「Ⅱ型」の2種類が存在します。
Ⅰ型は「重度の医療ニーズ向け」、Ⅱ型は「比較的安定した人向け」です。
| 項目 | Ⅰ型(重度・医療依存度高) | Ⅱ型(安定・生活重視) |
| 想定対象 | 重篤な身体疾患がある方、認知症があり身体合併症がある方 | 比較的容体が安定している方 |
| 医療体制 | 手厚い(医師・看護師の配置が多い) | 標準(介護老人保健施設相当) |
| 医療処置の例 | 頻回な吸引、経管栄養、重度の褥瘡ケアなど | 糖尿病管理、投薬調整、軽度な処置 |
| 介護体制 | 手厚い配置 | 標準的な配置 |
| ルーツ | 旧・介護療養型医療施設相当 | 老健(介護老人保健施設)相当 |
Ⅰ型・Ⅱ型を選ぶ判断ポイント(チェックリスト)
ご家族がどちらに当てはまるか、簡易的な目安としてご活用ください。
- 【Ⅰ型】の可能性が高い
- 1日に数回のたん吸引が必要
- 経管栄養(胃ろう等)のみで栄養を摂取している
- 深い褥瘡(床ずれ)があり、毎日の処置が必要
- 【Ⅱ型】の可能性が高い
- 病状は安定しており、慢性疾患の管理が中心
- リハビリを行いながら、生活の場としての快適さを重視したい
- 自宅復帰は難しいが、重篤な医療処置は必要ない
※最終的な判断は、医師やソーシャルワーカーとの相談が必要です。「酸素療法」や「気管切開」がある場合は、より専門的な判断が必要となるため、必ず病院の相談窓口へ確認してください。
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介護医療院と他施設の違い【特養・老健・病院との比較】
施設選びで最も迷うのが、「特養や老健と何が違うのか?」という点です。それぞれの目的と機能を整理します。
目的(終の棲家か、リハビリか)と、対応可能な医療レベルが異なります。
| 施設名 | 主な目的 | 医療体制 | 入所期間 | 対象・特徴 |
| 介護医療院 | 長期療養 + 生活 | 医師常勤・24h看護 | 長期(終身可) | 医療依存度が高い |
| 特養 (特別養護老人ホーム) | 生活支援・介護 | 医師非常勤・看護配置 | 長期(終身可) | 要介護3以上・医療ニーズ低 |
| 老健 (介護老人保健施設) | 在宅復帰・リハビリ | 医師常勤・リハ充実 | 原則3〜6ヶ月 | リハビリが必要な方 |
| 病院 | 病気の治療 | 医師常勤・高度医療 | 治療終了まで | 急性期の治療が必要な方 |
特養との違い
特養はあくまで「生活の場」であり、医師は非常勤(配置のみ)のケースが大半です。そのため、夜間のたん吸引や点滴など、継続的な医療行為が必要になると入所を断られる、あるいは退所を求められる場合があります。
「医療ケアが必須」であれば、介護医療院が適しています。
老健との違い
老健は「在宅復帰」を目指す中間施設であり、原則として終身利用はできません(3〜6ヶ月程度で退所検討)。
「自宅に戻ることは困難で、長く入所したい」場合は、介護医療院が適しています。
病院との違い
病院は「治療」が終われば退院しなければなりません。介護医療院は「施設サービス計画」に基づき、生活を営む場所として長期滞在が可能です。
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介護医療院の対象者・入所条件
入所できる条件
- 要介護認定:原則として要介護1〜5の方(実態としては要介護3以上が多い)
- 医療ニーズ:主治医の意見書等により、医学的管理が必要と認められた方
具体的な対象例
- 経管栄養(胃ろう・鼻腔栄養)が必要な方
- 酸素療法を継続している方
- 褥瘡(床ずれ)の処置が必要な方
- 重度の認知症があり、精神科的な管理も含めた医学対応が必要な方
入所の流れは、他の介護施設と同様に「見学・相談 → 申し込み → 面談(判定会議) → 契約 → 入所」となります。病院に入院中の場合は、院内の医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談するのが最もスムーズです。
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介護医療院で受けられるケア・費用
医療・介護ケアの内容
日常的に以下のようなケアが提供されます。
- 医療ケア:たん吸引、インスリン注射、経管栄養、褥瘡治療、酸素管理、疼痛管理など
- 介護ケア:食事・入浴・排泄の介助、整容、移動支援
- 看取りケア:苦痛の緩和、家族への精神的支援(グリーフケア)、最期の時間を穏やかに過ごすための環境づくり
費用の目安と他施設との比較
費用は「介護サービス費(1〜3割負担)」+「居住費」+「食費」+「日常生活費」の合計です。
- 特養:比較的安い(医療加算が少ないため)
- 老健:中間的
- 介護医療院:特養よりは高く、病院よりは安い傾向
介護医療院は医療体制が手厚いため、特養に比べると基本料金が高めに設定されていますが、病院に長期入院するよりは居住費等の負担が抑えられる設計になっています。
※所得に応じた減免制度(負担限度額認定証など)も利用可能です。
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まとめ
介護医療院は、医療ニーズの高い高齢者が安心して暮らせる「最後の砦」とも言える施設です。
- 医療ケアと生活の場を高いレベルで両立している。
- Ⅰ型(重度向け)とⅡ型(安定期向け)があり、状態に合わせて選べる。
- 特養では対応できない医療処置が可能で、老健とは違い長期入所ができる。
- 看取り(ターミナルケア)まで対応しており、終の棲家として利用可能。
「医療行為が必要だから施設は無理」と諦める前に、ぜひ介護医療院という選択肢を検討してみてください。まずは現在入院している病院の相談員や、担当のケアマネジャーに「地域の介護医療院」について尋ねてみることから始めましょう。
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FAQ:よくある質問
Q:介護医療院は医療と介護のどちらがメインですか?
A:両方です。医療法上の「医療提供施設」でありながら、介護保険法上の「介護保険施設」でもあります。医療依存度の高い方でも、生活を楽しみながら療養できるよう設計されています。
Q:老健から介護医療院へ移ることはできますか?
A:可能です。老健でのリハビリ後、在宅復帰が困難で、かつ継続的な医療管理が必要と判断された場合、介護医療院への移行が有力な選択肢となります。
Q:認知症でも入所できますか?
A:はい、可能です。特に医学的な管理が必要な重度の認知症の方や、身体合併症がある方を受け入れている施設が多くあります。

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