着脱介助・更衣介助をスムーズに行うコツとは?着替えの手順や注意点を解説

#介護の知識

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上着の着脱介助を行う際の手順

利用者様が普段着用している上着には、「前開きの上着」と「かぶりの上着」があります。

前開きの上着は、片麻痺や骨折、脱臼などで腕が動かしにくい方に最適です。また、かぶりの上着は、ボタンやファスナーなどの付属品がない分、着心地が良いと好評です。利用者様の身体状況や、希望に合わせて選ぶようにしましょう。

ここからは、前開きの上着とかぶりの上着、それぞれの着脱介助の手順をご紹介します。

前開きの上着の着脱介助

前開きの上着を着用している方の多くは、片麻痺や骨折、脱臼などにより、腕が動かしにくい方です。そのため、痛みや負担が生じないよう、丁寧に介助しましょう。

【着衣の介助】

①まずは、椅子またはベッドの端に座ってもらいます。この時、利用者様の姿勢が不安定で倒れそうな場合は、背もたれがついた椅子を使用することがオススメです。介護職は利用者様の患側(片麻痺や骨折、脱臼などがある側)に立って介助を行います。

②上着のボタンを全て外したら、患側の袖を介護職の腕に通して引き抜き、袖を輪の状態にします。可能であれば、利用者様に袖を通してもらってください。患側の腕に上着の袖を通したら、上着を肩と背中に羽織るようにかけます。

③次に、健側(片麻痺や骨折、脱臼などがない側)の腕を通します。患側と同様に、袖を輪の状態にするとスムーズに腕が通せます。両腕の袖が通せたら、ボタンをとめます。もし可能であれば、利用者様にとめてもらうように促してください。

【脱衣の介助】

①まずは、椅子またはベッドの端に座ってもらいます。この時、利用者様の姿勢が不安定で倒れそうな場合は、背もたれがついた椅子を使用することがオススメです。介護職は利用者様の患側に立って介助を行います。

②可能であれば、利用者様に上着のボタンを外してもらいます。もし難しいようであれば、介護職が一部解除または全介助を行いましょう。

③健側の肩から上着を外し、腕を抜きます。腕をスムーズに抜くために、肘を少し後ろに引いてもらいましょう。健側の次は、患側の肩から上着を外し、腕を抜きます。

かぶりの上着の着脱介助

かぶりの上着を着用している方の多くは、楽に着脱できることや、着心地を重視している方が多い傾向にあります。できる限りスムーズに着脱介助ができるよう、介護職は手順をしっかり頭に入れておくことが大切です。

【着衣の介助】

①まずは、椅子またはベッドの端に座ってもらいます。この時、利用者様の姿勢が不安定で倒れそうな場合は、背もたれがついた椅子を使用することがオススメです。介護職は利用者様の患側に立って介助を行います。

②患側の袖を介護職の腕に通して引き抜き、袖を輪の状態にします。可能であれば、輪の状態にした袖を利用者様に渡し、自分自身で袖を通してもらいましょう。

③患側の袖が通せたら、そのまま衣服を引き上げ、首と健側の腕を順番に通します。可能であれば、利用者様にそこまでの手順をしてもらいましょう。

【脱衣の介助】

①まずは、椅子またはベッドの端に座ってもらいます。この時、利用者様の姿勢が不安定で倒れそうな場合は、背もたれがついた椅子を使用することがオススメです。介護職は利用者様の患側に立って介助を行います。

②健側の上着の身頃を胸の上くらいまでたくし上げ、袖から健側の腕を抜きます。次に、健側の手で襟元をを持って、頭を抜いてもらいましょう。

③最後に、患側の腕を抜きます。重度の片麻痺や骨折、脱臼などがある場合は、慎重に丁寧に行うことが大切です。

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ズボンの着脱介助を行う際の手順

ズボンの着脱介助は、必要に応じて腰を動かしてもらったり、立位をとってもらったりするため、バランスが崩れやすいことが特徴です。利用者様が転倒しないよう、スムーズさにこだわらず、ゆっくりと丁寧に介助を行うようにしましょう。

ここからは、ズボンの着衣と脱衣、それぞれの介助の手順をご紹介します。

ズボンの着衣介助

ズボンの着衣介助では、足や腰を上げてもらう動作を含むため、バランスを崩しがちです。利用者様がバランスを崩しても支えられるよう、しっかり見守りながら介助を行います。

①まずは、椅子またはベッドの端に座ってもらいます。この時、利用者様の姿勢が不安定で倒れそうな場合は、背もたれがついた椅子を使用することがオススメです。介護職は利用者様の患側に立って介助を行います。

②上着と同様に、患側のズボンを介護職の腕に通して引き抜きます。裾を輪の状態にし、患側から足を通します。健側も同様に、裾に足を通しましょう。

③両足にズボンを通したら、膝上くらいまで引き上げます。左右交互に臀部を浮かせてもらいながら、ズボンを腰まで引き上げましょう。立位をとるのが可能であれば、手すりやベッド柵を持ってもらい、介護職がズボンを腰まで上げます。

ズボンの脱衣介助

ズボンの脱衣介助では、臀部からズボンを下げれば、後は簡単に足を抜くことができます。しかし、臀部を持ち上げることが難しい方の介助では、無駄に時間をとってしまいがちです。うまく声掛けやサポートを行いながら、臀部を浮かせてもらうことが大切です。

①まずは、椅子またはベッドの端に座ってもらいます。この時、利用者様の姿勢が不安定で倒れそうな場合は、背もたれがついた椅子を使用することがオススメです。介護職は利用者様の患側に立って介助を行います。

②左右交互に臀部を浮かせてもらいながら、膝近くまでズボンを下ろします。立位をとることが可能であれば、手すりやベッド柵を持ってもらい、介護職がズボンを下ろすことができます。

③膝近くまでズボンが下ろせたら、健側から患側の順で、ズボンから足を抜きます。可能であれば、利用者様にご自身で足を抜いてもらいましょう。

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寝たきりの方の着脱介助を行う際の手順

寝たきり状態の方や、廃用症候群(床ずれや関節拘縮、筋委縮など)が進んでいる方は、ベッド上で着脱介助を行う必要があります。ここからは、ベッド上で着脱介助を行う際の手順をご紹介します。

ベッド上での着衣介助

寝たきり状態の方の上着は、「前開きタイプ」がオススメです。かぶりの上着だと、袖や頭を通す時に、利用者様に負担をかけてしまいます。

【上着の場合】

①ボタンやファスナーは開けておき、ボタンやファスナーが付いていない側の袖を通します。もし片麻痺や骨折、脱臼などがあれば、必ず患側から袖を通しましょう。

②背中に衣服を差し込むように入れ、既に袖を通した腕を下にしながら身体を横に傾けます。背中部分から上着を取り出し、もう片方の腕を通します。

③最後に衣服を整え、ボタンまたはファスナーを付け、シワになっていないか背中に手を差し込んで確認しましょう。(褥瘡(床ずれ)防止のため)

【ズボンの場合】

①片足ずつ足をズボンに通します。片麻痺や骨折、脱臼などがある場合、患側から通すようにしましょう。この時、膝関節に拘縮がある可能性があるため、膝は無理に曲げ伸ばしをしないことが大切です。

②腰を浮かせてもらうか、それが難しいようであれば、左右交互に身体を傾けながら、ズボンを腰まで上げます。最後は必ず、衣服やシーツにシワがないか確認しましょう。

ベッド上での脱衣介助

ベッド上での脱衣介助は、一気に衣服を引き抜くのではなく、関節拘縮や褥瘡(床ずれ)などに配慮しながら、丁寧に介助を行う必要があります。効率よりも丁寧さを重視しましょう。

【上着の場合】

①ボタンやファスナーを開き、患側を下にしながら健側の袖を抜きます。痛みや負担が生じないよう、ゆっくり丁寧に、少しずつ腕を抜くことが重要です。

②背中に脱いだ衣服を押し込むように入れ、既に袖を通した腕を下にしながら身体を横に傾けます。背中部分から上着を取り出し、もう片方の腕を袖から抜きます。

【ズボンの場合】

①腰を浮かせてもらうか、それが難しいようであれば、左右交互に身体を傾けながら、ズボンを膝付近まで下ろします。

②ズボンを脱ぐ時は健側から行うことで、利用者様の負担を軽減しながら介助ができます。

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着脱介助を行う前の事前準備が大切!

着脱介助を行う前には、事前準備を行うことが大切です。利用者様に寒い思いをさせたり、プライバシーの配慮に欠けたりしないよう、必要な着替えやバスタオル、ブランケットを用意しましょう。また、忘れやすい下着や靴下の用意ができているかの確認も欠かせません。

着脱介助を行う前には、以下の3点に配慮することが大切です。

  • 部屋の温度調節:寒くないよう、室内温度を23~25℃に設定します
  • リスクマネジメント:転倒・転落のリスクが高い利用者様は、必ず2人介助で対応します
  • 事前の情報収集:これから介助を行う利用者様にスキントラブルや外傷、片麻痺や骨折などがないか、事前に記録を確認します

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正しい手順を理解し、スムーズな介助を

着脱介助では、利用者様一人ひとりの身体状態に合った対応が必要です。例えば、ある程度自立している方の場合、ご自身でできることはしてもらう「自立支援」を心がけること。また、寝たきり状態の方の場合、痛みや苦痛、負担が生じないよう、丁寧な介助を心がけること。利用者様のプライバシーに配慮しながら、個別ケアを行うことが大切です。

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