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介護現場のハラスメントは我慢するしかない?原因と対策を解説!

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  • 利用者さんから暴力を受けるけど、介護の仕事だから我慢するしかないの?
  • ご利用者、ご家族から理不尽なお願いが多いけど何でも従うべき?
  • ハラスメントに対して職場は何か対策をしてくれないの?

このような疑問をお持ちではないでしょうか。
今回の記事では、介護現場におけるハラスメントについて解説します。
カスタマーハラスメントについて理解を深め、安心して働ける環境について考えましょう。

介護職で問題になる「カスタマーハラスメント」とは

「カスハラ」とも略される、「カスタマーハラスメント」という言葉をご存じでしょうか?
一般的には、消費者がサービスを提供してくれる従業員に対して、嫌がらせや迷惑行為をすることです。
最近では、このカスタマーハラスメントが介護の現場でも問題となっています。
介護の現場で起こるハラスメントとは、対ご利用者だけでなくご家族からのハラスメントも含まれます。

厚生労働省のデータによると、介護現場において、これまで利用者や家族等によるハラスメントを受けたことのある職員の割合は以下の通りです

ご利用者からご家族等から
訪問介護50%17%
訪問看護56%26%
訪問リハビリテーション39%13%
通所介護46%12%
特定施設入居者生活介護60%18%
居宅介護支援46%30%
介護老人福祉施設71%18%
認知症対応型通所介護64%14%
小規模多機能型居宅介護55%22%
定期巡回・随時対応型訪問介護看護61%27%
看護小規模多機能型居宅介護58%20%
地域密着型通所介護43%9%
引用:厚生労働省 介護現場におけるハラスメント対策マニュアル

ご利用者からハラスメンメントを受けた割合が一番多いのが介護老人福祉施設の71%、次に認知症対応型通所介護の64%、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の61%と続きます。トータルすると、半数以上の職員がご利用者からハラスメントを受けている現状です。

家族等からのハラスメントも、全体的に1割〜3割の職員が受けているというデータがでています。

介護職で起こりやすいハラスメントの種類

介護現場で問題となるハラスメントとは以下の通りです。

  • 身体的暴力
  • 精神的暴力
  • セクシュアルハラスメント

身体的暴力とは、たたかれる、蹴られる、つねられる、引っかかれるなどの身体的な危害を及ぼす暴力をいいます。認知症のご利用者や身体介護の必要なご利用者に対応することの多い、入居系サービスに多いハラスメントです。

怒鳴る、威圧的な態度、理不尽な要求、嫌がらせは精神的暴力です。人格を傷つけるような暴言を吐く行為だけでなく、無視をするなどの行為も該当します。

ご利用者やご家族の中には認識していない場合も多く、人によって受け止め方も違うので声を上げにくいケースもあります。

セクシュアルハラスメントは、性的な行為や性的な話を繰り返すなどの嫌がらせです。介護現場では女性職員が男性のご利用者から受けるケースが多く、その性格上訴えにくいのが現状です。

職員がこの1年間で利用者からハラスメントを受けた内容の割合は以下の通りです。

身体的暴力精神的暴力セクシュアルハラスメントその他該当者数
訪問介護41.8%81.0%36.8%3.2%840人
訪問看護45.4%61.8%53.4%3.4%262人
訪問リハビリテーション51.8%59.9%40.1%4.5%222人
通所介護67.9%73.4%49.4%1.7%237人
特定施設入居者生活介護81.9%76.1%35.6%3.4%326人
居宅介護支援41.0%73.7%36.9%4.1%217人
介護老人福祉施設90.3%70.6%30.2%2.2%629人
認知症対応型通所介護86.8%73.7%33.3%1.8%114人
小規模多機能型居宅介護74.7%71.9%32.9%2.7%146人
定期巡回・随時対応型訪問介護看護59.7%72.0%37.1%4.8%186人
看護小規模多機能型居宅介護72.6%71.8%31.1%3.7%241人
地域密着型通所介護58.4%70.1%48.0%2.8%358人
引用:厚生労働省 介護現場におけるハラスメント対策マニュアル

上記のデータからは、在宅介護系のサービスでは精神的ハラスメントが多い傾向です。

入居施設系のサービスでは、身体的ハラスメントと精神的ハラスメントがどちらも多い割合になっていますが、身体的ハラスメントの割合がやや上回っています。

利用者が介護職に行うハラスメントの事例と対処法

利用者が介護職に行うハラスメントの事例と対処法をご紹介します。

ここでは緊急的な対処法をご紹介しますが、前提として認知症の周辺症状で暴力行為が発生している場合は、医師への相談が必要です。周辺症状は薬物療法や非薬物療法で症状緩和へとつなげられる場合があります。

医療的アプローチの対象でなければ、カスタマーハラスメントとしての対応を行います。ご家族と協議することや、施設や事業所としての対応を示す必要があります。

【身体的暴力】の事例と対処法

身体的暴力に該当するのは以下のような事例です。

  • 介助中に殴る・蹴る・引っ掻く・つねる
  • 押し倒そうとする
  • 髪を引っ張る
  • 服を引っ張る
  • ものを投げつける
  • 唾を吐きかける

身体的暴力がみられる方の介助は、可能な限り複数スタッフで行うようにしましょう。また、凶器になりそうな物品がないかなど、環境も確認しておくと安心です。

もし、介助に入るときにご利用者が興奮状態であれば、少し時間を置いて落ち着いた頃に介助に入るのも一つです。

ご利用者様のなかには認知症や精神疾患などさまざまな病気を抱えている方も多くいます。体調不良や不快に感じること、気に入らないことがあっても伝えられないため、暴力的な態度で表現する方もいます。まずは、暴力に至った原因を探してみましょう。ご利用者の不快を取り除けば、暴力がおさまるケースもあります。

【精神的暴力】の事例と対処法

精神的暴力に該当するのは以下のような事例です。

  • 大声で怒鳴る
  • 攻撃的な態度をとる
  • 容姿をけなす
  • 学歴などを見下す
  • 理不尽なサービスを強要する
  • 特定のスタッフを無視する
  • 特定のスタッフに嫌がらせをする

精神的な暴力も、認知症による周辺症状が原因になっているケースがあります。高齢になり、気分的に落ち込んだり心理的ストレスがかかったりしていることも考えられます。

精神的暴力を行う方の介護に関しても身体的暴力の対処法と同様で、暴力に至った原因がないかを考えてみましょう。関わり方を見直すことでご利用者の態度が改善されるかもしれません。

精神的暴力は職員のメンタルに大きなダメージを与えます。とくに、特定のスタッフがターゲットになっている場合はつらいものです。担当やシフトを考慮して一時的に接触を避けるのも一つです。

ハラスメントの原因が疾患であったとしても、許されるものではありません。職員の安全を確保し、早急に対応する必要があります。

【セクシュアルハラスメント】の事例と対処法

セクシュアルハラスメントの事例には以下のようなものがあります。

  • 必要なく体をさわる
  • 抱きしめる
  • 性的な話をする
  • 卑猥な言動をする
  • サービス提供中に体をじっと見る
  • 必要なく下半身を見せつける
  • 性的な写真や動画などを見せる
  • 性的な誘いをしつこくする

介護の現場では、どうしても身体介護などで体が密着するような場面も多くあります。セクシュアルハラスメントの対応としては出来る限り同性介助にしたり、複数人での介助にしたり、対応するスタッフを検討しましょう。

また、ハラスメントを受けたスタッフは、毅然とした対応を取らなければなりません。セクシュアルハラスメントをする当事者は、自分の行為がハラスメントに該当するという認識がない方もいます。その行為がハラスメントにあたることをはっきりと説明しましょう。

利用者の家族が介護職に行うハラスメントの事例と対処法

ご利用者からのハラスメントだけでなく、ご家族からのハラスメントも多いものです。

ご家族からのハラスメントには以下のようなケースがあります。

  • 怒鳴る、威圧的な態度を取る
  • 職員の人格を否定する発言をする
  • 理不尽なサービス・特別待遇を求める
  • ご家族からのセクシュアルハラスメント

ご家族からのハラスメントの場合は、精神的なハラスメントが大半を占めます。ご利用者を思うがゆえ特別扱いを求めたり、要求が過剰になってしまうケースも多いでしょう。

ご家族からの精神的ハラスメントを受けないためには、ご家族が不安な気持ちにならないように、自らのサービスに原因がないかを考え、安心感を与えるような介護が出来るようにすることが大切です。誠実な対応を続けていれば、対応が変わる場合もあります。

しかし、こちらがどれだけ気を付けて対応していても、理不尽な要求が繰り返されるケースもあります。このようなハラスメントの場合は、契約の内容や介護保険のルールなどを明確に伝えなければなりません。

職員の尊厳を著しく傷つける行為が改善できなければ、契約解除も止むを得ないことをはっきり伝えるのも大切です。

なぜ介護職はカスタマーハラスメントが多いと言われているのか

なぜ介護現場では、カスタマーハラスメントが多いと言われているのでしょうか。

高齢者は、体調の異変や認知症の周辺症状によって感情のコントロールができなくなり、イライラして暴言を吐いてしまうことがあります。
また、自分の気持ちを相手にうまく伝えられなければ、相手に拒否を伝えるために暴力を振るってしまうことも。
このような特性を持った高齢者を介護するのが仕事である介護職員は、カスタマーハラスメントを受ける機会が多くなってしまいます。

また、ご家族も介護職員が何でも対応してくれると思い、要求がエスカレートしてしまう場合があります。
自身が在宅でおこなっていた介護が当たり前で、同じ対応をしてくれるものと期待してしまうのです。
大切な家族を任せている以上手厚い介護を望むのも当然かもしれませんが、サービスとしてできることとできないことの認識のずれがクレームを生むことになってしまいます。

生活に密着しているサービスゆえに、介護職はクレームやハラスメントを受けるのが多い職種と言えます。

忍耐強いがために我慢しがちな業界体質

介護業界にカスタマーハラスメントが多く我慢してしまう体質があるのは「福祉」という仕事の性質上、人に役立つ仕事をする、困っている人を助けるという奉仕の精神が根本にあるからかもしれません。

介護者の問題だと捉えて我慢してしまう

介護者は高齢者の性質を勉強し、理解した上で介護にあたっています。
そのため、高齢者が暴言や暴力などのハラスメントに該当する行為をおこなってしまうのはある程度仕方がない、受け入れて対応すべきだと考えています。
また、それにうまく対応できないのは介護者のケア方法が下手だから、未熟だからと介護者の技術不足と捉えてしまうことも少なくありません。

体の不自由なご利用者、認知症のあるご利用者に対して、ハラスメントをやめてほしいとはっきり伝えるのが難しく、プロとして対応すべきという風潮の強いのが現状です。

一人で抱え込まず相談することも大切

介護現場におけるカスタマーハラスメントは我慢して抱え込んでしまうケースや、仕方のないことだと諦めてしまっている状況が多くみられます。
当たり前になりすぎてハラスメントに気づいていない場合もあるでしょう。

ハラスメントは介護職員の尊厳を傷つける行為であり、許されるものではありません。
このような状況で職員のストレスがピークに達してしまうと、体調を崩したり精神的に不安定になったりしてしまいます。
退職せざるをえなくなるケースや、仕事を辞めたいと悩みを抱えながら我慢して働いている職員も少なくありません。

ハラスメントを誰かに相談するのは、自分の身を守るのはもちろんですが、他の職員の身を守ることにもつながります。
また、組織として取り組むきっかけになれば職場全体がよりよい方向に向かっていけるのではないでしょうか。
勇気を出して声を上げるのも大切です。

しかし、自分自身がハラスメントを受けている時は、どこからがハラスメントでどこからがプロとして対応すべき範疇であるかは判断しにくいものです。
どんなことでも気になれば、まず直属の上司に相談してみましょう。
それでも改善策が見出せない場合は、事業所外の専門機関に相談することも出来ます。

ハラスメントを起こさないためには事業所全体で対策を行う

ハラスメントを起こさないために事業所全体で話し合うのも大切です。
ハラスメントを仕方のないことだと受け流さずにチームとしてしっかり向き合いましょう。

どんなことでも話し合える風通しの良い環境になれば事業所全体の雰囲気も良くなり、ご利用者やご家族の満足、安心につながります。

職員全員に周知する

前述した通り、カスタマーハラスメントは職員自体が気付かぬうちに受けていたり、当然のことと我慢したりする傾向にあります。
ご利用者やご家族からの迷惑行為は決して当たり前ではなく、職員の尊厳を傷つけるカスタマーハラスメントなのだと職員にも周知する必要があります。

厚生労働省から介護職員向けにマニュアルや研修の手引きが作成されています。手引きを参考に、事業所全体で研修、勉強会などの機会を設けて、理解を深める場を持ちましょう。
職員が声を上げて良いのだと気付いて、ハラスメントに向き合うことが大切です。

チームケアでアプローチ

カスタマーハラスメントが起こる背景にはさまざまな要素が絡み合っています。
マニュアルを作成するだけで解決できるものではなく、ケースに合った試行錯誤が必要なため、一人で抱え込まずチームケアでアプローチすることが必要です。

ご利用者の体調の異変や、認知症の行動症状・心理症状として現れる言動であれば医療アプローチが必要なケースもあるでしょう。チームで話し合い、ご利用者の情報を共有し、介護方法やコミュニケーション方法を検討することで解決方法が見出せる可能性があります。

ご利用者・ご家族に周知する

カスタマーハラスメントをおこなっているご利用者、ご家族の中には自分の行いが当たり前の権利だと思い、ハラスメントだと思っていない可能性があります。

重要事項説明書や契約書をもとに介護保険で受けられるサービスについて分かりやすく伝え、契約の内容をすり合わせましょう。

介護現場での職員へのハラスメントが問題になっていることを伝え、どのような行為がハラスメントに該当するのか、ハラスメントが行われた際はどのように対処するのかを明確に伝えます。

行っている行為がハラスメントであることが認識できていないケースもあるため、ハラスメントに該当する具体的な行動例を示して、わかりやすく伝えるのがポイントです。場合によっては契約解除になることも適切に伝える必要があります。

職場環境の良い職場を探すために

上長に相談し、さまざまな策を講じてみても改善されない場合は、自分に合った環境の職場に転職するのも一つです。

ハラスメントを受けることは自分自身の問題だけでなく、ご利用者や職場との相性も考えられ、努力しても変えられないこともあります。
自分を責めず新しい環境で再スタートを切ってみましょう。

せっかく志を持って選んだ介護職です。
より良い環境で安心して介護の仕事を続けてくださいね。