- 利用者さんから暴力を受けるけど、介護の仕事だから我慢するしかないの?
- ご利用者、ご家族から理不尽なお願いが多いけど何でも従うべき?
- ハラスメントに対して職場は何か対策をしてくれないの?
このような疑問をお持ちではないでしょうか。
今回の記事では、介護現場におけるハラスメントについて解説します。
カスタマーハラスメントについて理解を深め、安心して働ける環境について考えましょう。
目次
介護職で問題になる「カスタマーハラスメント」とは
「カスハラ」とも略される、「カスタマーハラスメント」という言葉をご存じでしょうか?
一般的には、消費者がサービスを提供してくれる従業員に対して、嫌がらせや迷惑行為をすることです。
最近では、このカスタマーハラスメントが介護の現場でも問題となっています。
介護の現場で起こるハラスメントとは、対ご利用者だけでなくご家族からのハラスメントも含まれます。
介護職で起こりやすいハラスメントの種類
介護現場で問題となるハラスメントとは以下の通りです。
- 身体的暴力
- 精神的暴力
- セクシャルハラスメント
それぞれの定義について解説します。
身体的暴力
身体的暴力とは、たたかれる、蹴られる、つねられる、引っかかれるなどの身体的な危害を及ぼす暴力です。
認知症があり介護拒否の強い方の介護をしたことがあれば、このような暴力を受けた経験がある方も多いのではないでしょうか。
身体的暴力は、認知症のご利用者や身体介護の必要なご利用者を対応することの多い、入居系サービスに多いハラスメントです。
精神的暴力
怒鳴る、威圧的な態度、理不尽な要求、嫌がらせは精神的暴力にあたります。
訪問介護、訪問看護などの訪問系サービスに多い傾向がありますが、入居系のサービスにも多く、職員のメンタルに大きなダメージを与えます。
精神的暴力は、ご利用者やご家族の中には認識していない場合も多く、人によって受け止め方も違うのでなかなか声を上げにくいハラスメントです。
セクシャルハラスメント
セクシャルハラスメントは、性的な行為や性的な話を繰り返すなどの嫌がらせです。
介護現場では女性職員が男性のご利用者から受けるケースが多く、その性格上訴えにくいのが現状です。
なぜ介護職はカスタマーハラスメントが多いと言われているのか
なぜ介護現場では、カスタマーハラスメントが多いと言われているのでしょうか。
高齢者は、体調の異変や認知症の周辺症状によって感情のコントロールができなくなり、イライラして暴言を吐いてしまうことがあります。
また、自分の気持ちを相手にうまく伝えられなければ、相手に拒否を伝えるために暴力を振るってしまうことも。
このような特性を持った高齢者を介護するのが仕事である介護職員は、カスタマーハラスメントを受ける機会が多くなってしまいます。
また、ご家族も介護職員が何でも対応してくれると思い、要求がエスカレートしてしまう場合があります。
自身が在宅でおこなっていた介護が当たり前で、同じ対応をしてくれるものと期待してしまうのです。
大切な家族を任せている以上手厚い介護を望むのも当然かもしれませんが、サービスとしてできることとできないことの認識のずれがクレームを生むことになってしまいます。
生活に密着しているサービスゆえに、介護職はクレームやハラスメントを受けるのが多い職種と言えます。
忍耐強いがために我慢しがちな業界体質
介護業界にカスタマーハラスメントが多く我慢してしまう体質があるのは、「福祉」という仕事の性質上、人に役立つ仕事をする、困っている人を助けるという奉仕の精神が根本にあるからかもしれません。
介護者の問題だと捉えて我慢してしまう
介護者は高齢者の性質を勉強し、理解した上で介護にあたっています。
そのため、高齢者が暴言や暴力などのハラスメントに該当する行為をおこなってしまうのはある程度仕方がない、受け入れて対応すべきだと考えています。
また、それにうまく対応できないのは介護者のケア方法が下手だから、未熟だからと介護者の技術不足と捉えてしまうことも少なくありません。
体の不自由なご利用者、認知症のあるご利用者に対して、ハラスメントをやめてほしいとはっきり伝えるのが難しく、プロとして対応すべきという風潮の強いのが現状です。
一人で抱え込まず相談することも大切
介護現場におけるカスタマーハラスメントは我慢して抱え込んでしまうケースや、仕方のないことだと諦めてしまっている状況が多くみられます。
当たり前になりすぎてハラスメントに気づいていない場合も。
ハラスメントは介護職員の尊厳を傷つける行為であり、許されるものではありません。
このような状況で職員のストレスがピークに達してしまうと、体調を崩したり精神的に不安定になったりしてしまいます。
退職せざるをえなくなるケースや、仕事を辞めたいと悩みを抱えながら我慢して働いている職員も少なくありません。
ハラスメントを誰かに相談するのは、自分の身を守るのはもちろんですが、他の職員の身を守ることにもつながります。
また、組織として取り組むきっかけになれば職場全体がよりよい方向に向かっていけるのではないでしょうか。
勇気を出して声を上げるのも大切です。
しかし、自分自身がハラスメントを受けている時は、どこからがハラスメントでどこからがプロとして対応すべき範疇であるかは判断しにくいものです。
どんなことでも気になれば、まず直属の上司に相談してみましょう。
それでも改善策が見出せない場合は、事業所外の専門機関に相談することも出来ます。
- 厚生労働省「総合労働相談コーナー」
- 法務局・地方法務局「みんなの人権110番」
- 警察相談専用電話
- 各自治体の相談窓口
ハラスメントを起こさないためには事業所全体で対策を行う
ハラスメントを起こさないために事業所全体で話し合うのも大切です。
ハラスメントを仕方のないことだと受け流さずにチームとしてしっかり向き合いましょう。
どんなことでも話し合える風通しの良い環境になれば事業所全体の雰囲気も良くなり、ご利用者やご家族の満足、安心につながります。
職員全員に周知する
前述した通り、カスタマーハラスメントは職員自体が気付かぬうちに受けていたり、当然のことと我慢したりする傾向にあります。
ご利用者やご家族からの迷惑行為は決して当たり前ではなく、職員の尊厳を傷つけるカスタマーハラスメントなのだと職員にも周知する必要があります。
厚生労働省から介護職員向けにマニュアルや研修の手引きが作成されています。
事業所全体で研修、勉強会などの機会を設けて、理解を深める場を持ちましょう。
職員が声を上げて良いのだと気付いて、ハラスメントに向き合うことが大切です。
チームケアでアプローチ
カスタマーハラスメントが起こる背景にはさまざまな要素が絡み合っています。
マニュアルを作成して解決できるものではなく、ケースに合った試行錯誤が必要なため、一人で抱え込まずチームケアでアプローチすることが必要です。
ご利用者の体調の異変や、認知症の行動症状・心理症状として現れる言動であれば医療アプローチが必要なケースも。
チームで話し合い、ご利用者の情報を共有し、介護方法やコミュニケーション方法を検討することで解決方法が見出せる可能性があります。
ご利用者・ご家族に周知する
カスタマーハラスメントをおこなっているご利用者、ご家族の中には自分の行いが当たり前の権利だと思い、ハラスメントだと思っていない可能性があります。
重要事項説明書や契約書をもとに介護保険で受けられるサービスについて分かりやすく伝え、契約の内容をすり合わせましょう。
職員の尊厳を著しく傷つける行為が改善できなければ、契約解除も止むを得ないことをはっきり伝えるのも大切です。
職場環境の良い職場を探すために
上長に相談し、さまざまな策を講じてみても改善されない場合は、自分に合った環境の職場に転職するのも一つです。
ハラスメントを受けることは自分自身の問題だけでなく、ご利用者や職場との相性も考えられ、努力しても変えられないこともあります。
自分を責めず新しい環境で再スタートを切ってみましょう。
せっかく志を持って選んだ介護職です。
より良い環境で安心して介護の仕事を続けてくださいね。