大人用おむつの選び方|種類と適切なサイズ・吸収量の判断基準についてご紹介

#ADLとは#介護の基本#在宅介護対策#大人用おむつ#排泄ケア

初めて家族の介護に直面し、おむつ選びに戸惑う方は少なくありません。適切な大人用おむつを選ぶことは、介護を受ける方の尊厳を守るとともに、介護を担う側の負担軽減にもつながります。

そこで今回は、ADL(日常生活動作)に応じたおむつの種類選びから、正確なサイズ測定方法、吸収量の計算式までをわかりやすく解説します。

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大人用おむつ選びの基本原則

介護現場では昼夜を問わず、複数の利用者様に対して排泄介助を行っています。そのため、お一人おひとりの「ADL(日常生活動作)」「体格特性」「排泄パターン」の3つの視点を軸に、最適な製品やサイズを選定することが重要です。ここでは、介護用おむつを選ぶ際の具体的な方法についてご紹介します。

ADL(日常生活動作)レベルによる分類

まず、ADL(日常生活動作)レベルとは、食事、排泄、睡眠、着替えといった日常生活に必要な動作の程度を示す指標です。ADLレベルは「自立」「部分介助」「全介助」の3つに分類されており、それぞれの自立度に応じて、適切なタイプの介護用おむつを選ぶことが求められます。ここでは、日本褥瘡学会の基準を応用した判断フローをご紹介します。

ADLレベル動作特性推奨タイプ
自立自立歩行可能パンツタイプ
部分介助車椅子移乗両用タイプ
全介助寝たきりテープタイプ

要介護1〜2の認定を受けた方の約78%はパンツタイプを使用しているのに対し、要介護4以上の方では約92%がテープタイプを使用しています。これは、ADLレベルの違いに応じて、使いやすさや交換のしやすさが異なるためです。

サイズ選定の科学的アプローチ

パンツタイプを選ぶ際はウエストの最も細い部分を、テープタイプの場合はヒップの最も広い部分を基準にサイズを測定します。

また、季節によって体感温度や衣類の厚みが変わるため、冬場は寒さ対策として+2cmを目安に厚手の下着を着用することをおすすめします。サイズ選びの際は、こうした季節変動も考慮することが大切です。

吸収量計算式と使用時間管理

尿量や排便の頻度は、高齢者によって大きく異なります。そのため、個々の状態に応じた吸収量のおむつを選ぶことが重要です。適切でないおむつを長時間使用すると、湿疹や褥瘡(床ずれ)などのスキントラブルを引き起こす可能性があります。こうしたリスクを防ぐためにも、個人に適した吸収量の計算方法と、使用時間の管理が必要です。

以下に、具体的な計算式と管理の方法をご紹介します。

【吸収量計算式】
1日推定排尿量=体重(60kg)×20ml×トイレ回数6回で計算

【使用時間管理】
吸収量500mlのパンツタイプの場合
(体重60kg×20ml×6回)÷500ml=1.44回/日 → 1日2回交換が適正

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種類別の特徴と適切な使用シーン

パンツタイプやテープタイプなどの介護用おむつには、それぞれ異なる特徴があり、その特性を活かした使用シーンがあります。利用者様の状態や生活環境に応じて適切な種類を選ぶことが、快適で負担の少ない日常生活につながります。ここでは、介護用おむつの種類ごとの特徴と、それぞれに適した使用シーンをご紹介します。

パンツタイプのメリット・デメリット

パンツタイプのメリットとデメリットは、以下のとおりです。

【メリット】

  • 自立歩行が可能な方の自尊心を保持できる
  • ずれにくい構造のため、転倒リスクを軽減できる

【デメリット】

  • 完全に寝たきり状態の方には不向き
  • 股関節の関節拘縮がある方は着脱が困難

テープタイプの正しい装着テクニック

テープタイプの介護用おむつは、上部のテープを30度下向きに、下部のテープを30度上向きに貼付することで、腹部への圧迫を約22%軽減できます。

また、褥瘡を予防するためには、腸骨部から3cm上の位置を目安に装着することが推奨されています。正しい貼り方を実践することで、利用者様の快適性と安全性を高めることができるでしょう。

両用タイプの効果的使用場面

高齢者の自立度や介助の状況によっては、パンツタイプとテープタイプを併用することがあります。それぞれの特性を活かすことで、より快適で効率的な排泄ケアが可能になります。両用タイプが効果的に活用される代表的な使用場面は、以下のとおりです。

  • 日中のデイサービス(パンツタイプ)→ 自立訓練促進
  • 夜間の就寝時(テープタイプ)→ 介護負担軽減

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現場の声から学ぶ失敗パターン

介護現場で働く約200人の介護職員へのアンケート調査から、排泄介助においては主に3つの失敗パターンがあることが明らかになりました。ここでは、よくある失敗の事例と、それぞれに対する具体的な解決策をご紹介します。

サイズ選びのよくある誤解

介護の専門知識を持つ介護職であっても、介護用おむつのサイズ選びにおいて誤解が生じていることがあります。その代表的な例が「大きめサイズ=楽」という思い込みです。実際には、大きめのサイズを選ぶことでフィット感が損なわれ、約34%の尿漏れの原因となっています。

一方で、利用者様の体に合った適正サイズを選ぶことで、尿漏れ率は約68%も低下するとされています。快適さと機能性を両立させるためには、正確なサイズ選びが欠かせません。

吸収量過多による皮膚トラブル

皮膚科医が推奨する介護用おむつの交換間隔は、以下のように決められています。

  • 吸収量80%の介護おむつ使用時 → 最長4時間
  • 吸収量50%未満の介護用おむつ使用時 → 2時間以内交換

「交換の間隔を把握していなかった」「介護用おむつの吸収量を確認し忘れていた」といった知識不足が原因で、おむつ交換が遅れるケースがあります。汚れたおむつを長時間着用し続けることで、湿疹や褥瘡などのスキントラブルを引き起こす恐れがあるため、注意が必要です。介護用おむつの吸収量と適切な交換タイミングを正しく理解し、計画的にケアを行うことが重要です。

心理的抵抗を軽減するデザイン選択

60代の若年高齢者を対象にした「超薄型パンツ」は、従来の製品と比べて羞恥心を約41%軽減する効果があるとされています。さらに、目立ちにくいグレー系のデザインは利用者から高い支持を得ており、支持率は78%に達しています。

一方で、介護職の配慮が不十分なまま厚手の介護用おむつを選んでしまうと、利用者様が不快感を抱き、紙パンツを脱いでしまうといったトラブルにもつながります。羞恥心への十分な配慮は、快適なケア環境を整えるうえで欠かせません。

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経済的&身体的負担軽減術

介護用おむつは毎日使用する消耗品であり、年間の費用は約7万2千円にのぼるといわれています。こうした費用は家計への負担にもなりやすく、少しでも軽減したいと考える方は少なくありません。ここでは、介護用おむつにかかる年間コストを削減するための具体的な方法をご紹介します。

尿取りパッドの効果的な併用

トイレ介助やおむつ交換のたびに毎回おむつ全体を取り替えていては、介護を行う側にとって大きな身体的負担となります。

また、介護用おむつはコストも高いため、都度処分していると経済的な負担も増してしまいます。そこで、比較的安価に購入できる尿とりパッドを併用することで、必要なときにパッドのみを交換できるようになります。

この方法により、介護をする側とされる側の双方にとって、身体的・経済的負担の軽減が期待できます。

尿とりパッドの種類吸収量1日にかかるコスト
標準200ml約130円
長時間用350ml約160円

介護保険適用の判断基準

各市区町村の役所にある「介護保険課窓口」で要介護申請を行い、要介護1〜5に認定された方は、介護保険の適用により介護用おむつを購入することが可能です。支給内容や申請方法は地域によって異なるため、詳細についてはお住まいの地域の役所へお問い合わせください。

以下では、要介護1と要介護3に認定された場合の、月間におけるおむつ支給量の一例をご紹介します。

要介護度支給量(一月)
190枚
3180枚

交換負担を軽減する道具

おむつ交換の際に、介護される側・する側双方の負担軽減に役立つ道具がいくつかあります。おむつ交換を行う際には、ぜひ以下の道具を活用してみてください。

  • 介護用エプロン:衣服の汚れを防ぐため、服の汚れを気にせず介助できます
  • 防水シーツ:ベッドや布団の上に敷くことで、シーツ交換の手間を防ぎます
  • 体位変換器具:おむつ交換を行う際の体位交換時に、介護者の負担を軽減します

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よくある質問Q&A

要介護高齢者のおむつ交換に関するよくある質問について、お答えしていきます。特に多い質問を3つに厳選しました。高齢者のおむつ選びでお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。

Q: 同じサイズ表記でもメーカーで異なることはあるの?

同じサイズ表記であっても、メーカーによって実際の寸法やフィット感に違いがあるため、注意が必要です。例えば、パンツタイプの「Mサイズ」と表示されていても、腰回りの対応範囲や伸縮性、ギャザーの位置などはメーカーごとに異なります。

体型によっては、ウエストやヒップの寸法が合っていても、足まわりに隙間ができてしまい、尿もれの原因になることもあります。そのため、購入前には、サイズ表を確認したり、サンプルを試してみたりすることをおすすめします。

Q: 寝たきりの高齢者に適した介護用ベッドの選び方は?

A: 介護用ベッドを選ぶ際は以下のポイントを考慮してください。

  • ベッドの幅と長さが、使用者の身長に合っているか
  • 防水シーツがとれにくい幅や長さのマットレスであるか
  • 実際に高さ調節を行い、介護者が腰をかがめずに使用できるか

Q: 尿漏れパッドの効果的な使用方法は?

A: 尿漏れパッドを使用する際は以下のポイントを考慮してください。

  • 外側のおむつのサイズに合った尿とりパッドを選ぶこと
  • 吸収量不足の場合、高性能な吸収力を持つパッドに変更すること
  • 隙間もれの場合、サイズや装着方法を見直すこと

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まとめ

介護用おむつを選ぶ際は、要介護者の身体状態や生活環境に応じた製品を選ぶことが重要です。特に、おむつの種類やサイズ、吸収量、尿とりパッドとの併用方法など、押さえておきたいポイントは多岐にわたります。これらを適切に選ぶことで、快適で効率的な介護が可能になります。

要介護者の尊厳を守りながら、介護を担う側の負担も軽減できるよう、製品の特性を理解し、状況に応じた使い分けを心がけましょう。

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