介護離職を防ぐ「産業ケアマネ」とは?資格の概要や仕事内容を解説

#介護の資格

産業ケアマネという職業をご存知でしょうか?

産業ケアマネとは、企業などで介護の悩みを持つ社員のサポートを行うことができる資格です。おもに企業などに配置され、仕事と介護の両立に悩む社員の介護離職を防ぎ、仕事が継続できるように介護の専門知識をもとに社員側、企業側それぞれの立場でアドバイスを行います。

今回の記事では、産業ケアマネの資格やその仕事について解説します。ケアマネジャーからのさらなるステップアップを考えている方はぜひ参考にしてください。

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産業ケアマネとは?

産業ケアマネの資格は2020年から検定試験がスタートした新しい資格です。「ケアマネジャーを紡ぐ会」が実施する民間資格であり、ケアマネジャーのキャリアアップの一つとして注目されています。

ここから、産業ケアマネの資格について詳しく見ていきましょう。

参考:一般社団法人日本単独居宅介護支援事業所協会 ケアマネジャーを紡ぐ会

産業ケアマネに必要な資格

産業ケアマネの資格は1級から3級の3段階に分かれており、3級から順に受けなければなりません。3級の受験条件は介護支援専門員資格を所持していることで、3級に合格すれば2級の受験資格が得られます。

2級と3級には試験がありますが1級には試験がありません。2級に合格した方が、研修や産業ケアマネ2級取得者のコミュニティに参加し、企業の顧問としての実績を作った場合に1級の登録が可能になります。

1級から3級それぞれの概要を確認してみましょう。

産業ケアマネ「3級」の概要

産業ケアマネ「3級」の概要は以下のとおりです。

受験の条件介護支援専門員資格を有する者
試験内容〇×式 50問(各2点)
試験時間60分
合格基準70点
試験開催年2回(春分の日・秋分の日)
受験料9,800円(基本テキスト・練習問題・受験料・資格認定料含む)
参考:一般社団法人日本単独居宅介護支援事業所協会 ケアマネジャーを紡ぐ会「3級試験の概要」

3級は、介護支援専門員資格があれば誰でも受けられ、その他の保有資格や年齢、実務経験などは問いません。受験料を支払うことにより、テキストと練習問題がダウンロードできるためそれに従って学習を進めます。

産業ケアマネ「2級」の概要

産業ケアマネ3級に合格した方は、2級の受験資格が得られます。

概要は以下のとおりです。

受験の条件産業ケアマネ3級取得者
試験内容選択肢形式 50問 (各2点)
試験時間60分
合格基準70点
試験開催年1回(勤労感謝の日)
学習方法1.テキスト+練習問題
2.テキスト+練習問題+試験対策講座(動画配信 全5回(動画9本))+試験直前対策講座+ポイント集
受験料1.テキスト+練習問題+受験料+資格認定料のみ 12,000円(税込)
2.試験直前対策講座も申し込んだ場合 30,000円(税込)
参考:一般社団法人日本単独居宅介護支援事業所協会 ケアマネジャーを紡ぐ会「2級試験の概要」

2級の場合はより実践的な知識を身につけるため、テキストと練習問題だけでなく有料で試験対策講座が受けられます。

産業ケアマネ「1級」の概要

受験の条件1.指定の研修全6日間受講(有料)
2.産業ケアマネとして顧問先企業の実績1件
3.産業ケアマネ2級資格者、産業ケアマネ2級取得者同士のコミュニティ参加
受験料1〜3を満たした場合に1級への登録が可能。資格登録料は 10,000円
参考:一般社団法人日本単独居宅介護支援事業所協会 ケアマネジャーを紡ぐ会「1級試験の概要」

一般的なケアマネとの違い

一般的なケアマネと産業ケアマネジャーの違いは、サービスの対象者です。

一般のケアマネジャーのサービス対象者は周知の通り、要介護、要支援の認定を受けている介護を必要とする方です。在宅や施設で介護保険サービスを利用する方やそのご家族のサポートを行います。主な仕事内容は介護サービスを利用するのに必要なケアプランの作成や、介護サービス事業者や行政との調整、そのほか生活するにあたって必要な相談援助業務です。

一方、産業ケアマネジャーは介護事業所や介護施設に属するのではなく一般の企業に配置されます。介護離職を減らすために、介護に悩む従業員の相談に対応するのが主な役割です。そのため、介護保険の知識だけでなく、さまざまな職場の制度も理解しておく必要があります。要介護者のサポートよりは、介護する側のサポートが中心になります。

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産業ケアマネが生まれた社会的背景

2017年に育児介護休業法が改正されました。育児や介護のために仕事が続けられず、退職を余儀なくされる状況を改善すべく、国をあげて公的制度が整備されています。

総務省による「令和4年就業構造基本調査」によると、2022年の直近1年間に介護離職をした人は10万6千人です。2017年が9万9千人という調査から、介護離職者が5年間で1万人近く増加していることがわかります。

また、介護をしながら就業している従業員の9割が、介護休業等の制度を利用していないのが現状です。介護は育児とは異なり始まる時期の予測が立ちにくいため、突発的な対応が必要になるケースが多くなります。また、介護度が重くなっていったり、介護期間が長期化したりすれば職場復帰の見通しも立ちにくくなります。

親の介護が必要となる40代〜50代の、これまでキャリアを築いてきた働き盛りの人材を失うのは企業としても大きな損失です。仕事と介護の両立に悩む従業員のみならず、少子高齢化で働き手が減少している中、人材不足に悩む企業のためにも産業ケアマネジャーの活躍が期待されています。

参考:総務省「令和4年就業構造基本調査 結果の要約及び概要」

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産業ケアマネの仕事内容・活躍できる職場

産業ケアマネの仕事内容は、介護で悩む従業員の相談に対応することです。

介護の知識や介護にまつわる制度に関する知識を活かし、専門的な視点からアドバイスします。また、従業員から相談された内容を会社側と共有し助言も行います。

従業員の介護の相談に乗るだけでなく、企業側の視点に立った対応も重要です。介護保険制度だけでなく「労働基準法」や「育児介護休業法」など、企業側の制度についても把握し、介護休業制度を取得しながら介護と仕事が両立できるような環境づくりを行い、介護離職防止に取り組みます。

産業ケアマネが活躍できる職場は一般企業です。ただし、その働き方はまだ確立されていません。ケアマネジャーを紡ぐ会で検定試験がスタートしたのが2020年であり、まだまだ資格取得者は少なく、産業ケアマネを導入している企業自体も多くない状況です。

現状では企業の人事部などに勤務しながら産業ケアマネの資格を活かして相談業務を担ったり、企業に就職するのではなく外部からコンサルティングとして関わったりすることでその資格が活かせるでしょう。

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産業ケアマネの給料はどれくらい?

前述のとおり、産業ケアマネの働き方はまだ確立されておらず、産業ケアマネの仕事だけで勤務できる職場はほとんどありません。そのため、一般的な給与の相場も不明です。

企業の人事部として勤務する場合はその企業の人事部としての給料が支払われますし、外部からコンサルティングとして関わった場合は契約の形態により相談料が決まるでしょう。

ちなみに、介護事業所で勤務する一般的なケアマネジャーの平均年収は2022年時点で394万8000円です。少子高齢化で働き手が減少する中で、国は介護と仕事の両立の問題に積極的に取り組んでいるため、産業ケアマネの資格を持った人材の需要は高まっていくことが予想されます。産業ケアマネの資格を取得するには介護支援専門員資格を所有していることが条件となっているため、ケアマネの上位資格にあたります。今後、需要が高まれば給料アップが見込めるかもしれません。

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産業ケアマネとして新たな働き方に挑戦しよう

今回の記事では産業ケアマネについて解説しました。産業ケアマネはスタートしたばかりの資格であり、まだ社会には浸透していません。

しかし、少子高齢化が深刻な中、社会問題である介護離職を減少させることは、国をあげて早急に取り組まなければならない重要な課題です。

介護をしながらでも働き続けたい方をサポートすることは、これまでのケアマネ業務とはまた違った関わり方で社会貢献ができます。ケアマネジャー資格を取得し今後の働き方を模索している方はぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか?活躍の幅が広がるのは間違いないでしょう。

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