介護保険法改正で何が変わる?介護にまつわる法律を解説!
介護は多くの時間を必要とし、仕事との間でバランスを取ることが求められます。
時代背景に合わせて介護にまつわる法律は変化し、介護を行いやすい仕組みが作られてきました。
本記事では介護を行う方が知っておくべき法律の知識をご紹介し、さまざまな制度を利用するきっかけを提供します。
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目次
常に変わり続ける介護職関係の法律
介護に関する法律は60年以上前から時代に合わせて更新されてきました。
1963年に老人福祉法が成立し、高齢者福祉施設の設置や事業のルールが定められました。
1982年には老人保健法が成立し、高齢者医療費の一部を自己負担にする反面、疾病予防・治療・リハビリなどの総合的な保険サービスの提供が開始しました。
これらの制度は一定の効果を上げたものの、
- 利用者は行政窓口に申し込みをし、行政がサービスを決定するため使い勝手が悪い
- 医療と福祉で別々に扱う必要がある
- 利用者の経済的負担が大きい
といった問題がありました。
これらを解消するために2000年に介護保険法が成立し、
- 利用者が自らサービス事業者を選べる
- 医療と福祉を包括的にケアしたサービスが受けられる
- 所得にかかわらず1~3割の自己負担で済む
といった変更がなされました。
介護保険法はその後も更新されており、社会の実状に即した支援を行えるよう定期的に見直されています。
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最初に福祉六法にどんな法律があるのか確認
介護に関わるいくつかの法律は「社会福祉六法」に含まれています。
社会福祉六法は「福祉に関する基本的な法律の総称」で、
- 生活保護法
- 児童福祉法
- 身体障害者福祉法
- 知的障害者福祉法
- 老人福祉法
- 母子及び寡婦福祉法
から成り立ちます。
このうち老人福祉法の中で福祉事業及び施設、費用などの取り決めがなされています。
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定期的に変わる法律「介護保険法」
介護保険法は2000年に成立した後、3年に1度のペースで改正されています。
ここでは2020年、2023年の改正における変更事項を見てみましょう。
2020年の変更項目
- 自己負担割合が最大3割に
- 収入に応じた保険料設定に
- 福祉用具のレンタル価格を適正化
- 介護保険施設として「介護医療院」の設置
2023年の変更項目
- 自治体が行う介護保険事業に「地域の現状」「どんな介護をどれだけ提供するか」「介護サービスを充実させるための取り組み」の記載が必須に
これらの施策により高齢化が進む中でも質の高い介護・医療と税負担のバランスを取り、各自治体が効率の良い介護サービスの提供が行えるよう支援しています。
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老人福祉法とは何が違う?
介護保険法とよく似た法律に、福祉六法に含まれる「老人福祉法」があります。
老人福祉法が「福祉施設のルールを定め、公費によって社会的弱者を救済する法律」であることに対し、
介護保険法は「介護が必要な人を社会全体で支えるための、保険制度を定めた法律」を指します。
つまり、税金か保険かという点に大きな違いがあります。
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介護保険法と介護保険制度
介護保険法の制定には深刻なペースで進む高齢化社会が大きく関係しています。
高齢になると認知症や寝たきりが増え、介護の負担が増大します。
そのような中で介護の責任を個人や家族に押し付けず、社会でカバーしていくことを目指す機運が高まりました。
そこで税収を元にした社会福祉から、保険を基盤とした制度へ改革が進められました。
介護保険は40歳からの加入が義務付けられており、市町村が決める介護保険料を毎月支払う必要があります。
介護保険料は地域によって大きく異なり、3000円台から9000円以上と大きな開きがあります。
介護保険サービスが受けられるのは次の2通りのケースです。
- 65歳以上の要支援・要介護の認定を受けた人
- 40歳から64歳までの医療保険加入者で、特定疾病が原因で要支援・要介護となった人
介護保険サービスを利用すると自己負担額が1~3割となり、残りは公費と集められた保険料によってまかなわれます。
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令和に入って改正・施行された法律「育児・介護休業法」
1992年に施行された育児・介護休業法は令和4年4月に新たな制度が追加されました。
厚生労働省の資料によると、改正の目的は「出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女とも仕事と育児を両立できるようにすること」にありました。
そのために5つの制度変更が盛り込まれています。
1.産後パパ育休の創設
男性の育児休暇取得をより円滑にするために、産後パパ育休という新たな制度が作られました。
この制度では「子の出生後8週間以内に、4週間の休業」が取得できます。
休業は2回まで分割することが認められています。
2.育児休業を取得しやすい雇用環境整備
育児休業を申請しやすい職場作りを求めることに加え、
妊娠出産の申し出をした労働者に対して事業主は個別の制度を説明し、休業を取るかどうか意向を確認する必要があります。
3.育児休業の分割取得
通常の育児休業でも休業を2回まで分割することが可能になりました。
4.育児休業の取得状況の公表を義務付け
労働者数1000名以上の事業主は、育児休暇の取得の状況を公表する義務があります。
5.有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
従来、有期雇用労働者が育児・介護休暇を取得するためには「雇用された期間が1年以上」という条件がありました。
今回の改正ではこの要件を廃止し、雇用期間に関係なく、休業が取得できるようになりました。
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育児・介護休業のメリットと取得のポイントは
育児・介護休業の最大のメリットは、それらの活動に時間を割いている期間もある程度の収入を得られることです。
そのためには「育児休業給付金」「介護休業給付金」に申請する必要があります。
育児休業給付金では月額賃金の67%を6か月受け取ることができ、その後最大6か月は50%を受け取ることが可能です。
一方、介護休業給付金では月額賃金の67%を最大93日間受け取ることができます。
給付金をスムーズに取得するためにいくつかのポイントを押さえておきましょう。
- 給付金の対象になるかどうかを事前に確認する
- 労務やハローワークのスタッフとコミュニケーションを取っておく
- 職場の方からの理解を得て、復帰後も仕事がしやすい環境を整える
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直接給与に関わる「介護報酬改定」
介護職に従事されている方にとって大きな影響を与える制度変更の1つが、介護報酬の改定です。
介護報酬は事業者が利用者に介護サービスを提供した場合に、その対価として支払われるサービス費用を指します。
介護報酬のうち1~3割が利用者から支払われ、残りは保険者である自治体が負担します。
介護報酬は厚生労働大臣が社会保険審議会の意見を聞いて、3年に1回定められます。
サービスごとに細かく点数が分けられた上で一覧が公開されていますが、ここ数年の動きとしては2018年に+0.54%, 2021年に+0.70%となり、介護人材の待遇改善に繋がっている傾向があります。
2021年の改定では次のような話題が重点的に議論されました。
- 感染症や災害への対応力強化
- 地域包括ケアシステムの推進
- 自立支援・重度化防止の取り組みの推進
- 介護人材の確保・介護現場の確信
- 制度の安定性・持続可能性の確保
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介護と医療の改定は密接な関係にある
介護報酬改定と同様に、医療サービスの費用の改定(診療報酬改定)も定期的に行われ、それらは相互に関係しています。
例えば介護施設利用者が医療機関に入退院する場合には、入退院支援加算・退院時共同指導料・診療情報提供料などが医療費としてかかります。
そのため、介護施設でケアマネージャーとして勤務されている方などは双方の報酬改定を理解し、適切な入退院プランを設計する必要があります。
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高齢化社会と法改正で介護職を取り巻く環境はどう変わるか
本記事では介護職に関する法改正とその影響についてご紹介しました。
全体的な動きとしては介護職の待遇改善へ進んでいますが、1人の利用者から得られる介護報酬には上限が存在するため、現時点では満足のいく給与とは言えないケースが多いとされています。
しかし、介護福祉士やケアマネージャーの資格を取得し、専門職手当を活用しながら収入アップに繋げることは可能です。
本記事で紹介した制度を理解し、より良い介護サービスの提供へ繋げましょう。
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