介護保険施設の種類と特徴 | 特養・老健・介護医療院の違いを徹底解説

要介護3以上の認定を受けた親の介護施設探しに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。2024年の介護報酬改定によって、介護保険が適用される施設の種類やサービス内容に変化がありました。
そこで今回は、介護保険の適用が可能な介護施設のうち、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院の3つに焦点を当て、それぞれの医療体制、入居条件、費用の特徴について詳しく解説します。
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目次
介護保険3施設の基本知識
2024年に実施された介護保険制度の改正により、介護保険が適用される介護施設には大きな変化が生じました。ここでは、改正の概要を踏まえたうえで、特別養護老人ホーム(以下、特養)、介護老人保健施設(以下、老健)、介護医療院の3施設について、それぞれの特徴を比較しながら解説します。
2024年改正の主な変更点
2024年に行われた介護保険制度の改正では、以下の3つの内容が変更されました。
①介護療養型病棟の廃止と介護医療院への移行
介護療養型病棟は2023年度末で廃止され、その役割は主に介護医療院が引き継いでいます。これまで医療と介護を一体的に提供していた介護療養型病棟の機能は、今後は介護医療院によって担われ、医療ニーズの高い高齢者に対して長期的なケアを提供できる体制が整えられています。
②医療連携体制の強化
制度改正により、各施設において医療機関との連携体制がより一層強化されることになりました。特に夜間や緊急時の対応力向上が求められており、地域包括ケアシステムとの連携も重視されています。
③ユニット型個室の普及促進
新たに設置される特別養護老人ホームを中心に、ユニット型個室の導入が進んでいます。このタイプの居室では、利用者のプライバシーが守られやすく、家庭的な雰囲気の中で安心して生活できる点が評価されています。従来型と比べ、より個別性を重視したケアの提供が可能です。
公的施設の特徴比較
特養・老健・介護医療院の介護保険3施設は、「公的施設」とも呼ばれています。ここからは、それぞれの施設の特徴について表を使った解説をします。
項目 | 特養 | 老健 | 介護医療院 |
---|---|---|---|
医療体制 | △ | 〇 | ◎ |
入居期間 | 終身 | 3-6ヶ月 | 長期 |
主な目的 | 生活の場 | 在宅復帰 | 療養医療 |
特別養護老人ホーム(特養)は、要介護高齢者に対して身体介護や生活支援を中心に提供し、終身にわたって利用できる施設です。
介護医療院は、特養よりも医療ニーズの高い要介護者を対象とし、医療と介護の両面からケアを行います。終末期ケアにも対応しており、長期的な療養が必要な高齢者に適した環境が整っています。
一方、介護老人保健施設(老健)は、病院での治療を終えた高齢者が在宅生活へ戻ることを目的としたリハビリ中心の施設です。医師やリハビリ専門職による機能訓練が行われ、比較的短期間での退所が前提となっています。
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施設別詳細解説
ここからは、特養・老健・介護医療院のそれぞれのサービス内容について詳しく解説します。施設選びに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホーム(特養)は、原則として「要介護3以上」の認定を受けた方が入居対象となります。これは、特養が日常生活全般にわたる介護や支援を必要とする高齢者に特化した施設であるためです。
近年では、ユニット型特養の整備が進み、個室を基本とした住環境が整えられています。これにより、利用者はプライバシーを保ちながら、より家庭的な空間で生活することが可能になっています。
また、看取りケアにも対応していることから、人生の最期まで安心して過ごせる「終の棲家」として選ばれるケースも増えています。
介護老人保健施設
介護老人保健施設(老健)は、長期入院を経て要支援または要介護状態となった高齢者が、在宅での生活に戻ることを目的とした施設です。そのため、リハビリテーションに重点が置かれており、機能回復を支援する体制が整えられています。
老健では、理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職が常駐しており、個別のプログラムに基づいた訓練が実施されます。また、在宅での介護負担を一時的に軽減する手段として、短期入所サービスも利用可能です。
ただし、老健の利用期間は原則として3ヶ月から半年程度に限られているため、入所前から在宅復帰に向けた具体的なプランを立てることが重要です。
介護医療院
介護医療院は、医療的ケアを日常的に必要とする高齢者を対象とした施設です。喀痰吸引や胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養といった医療管理を24時間体制で行える体制が整っており、特に医療依存度の高い利用者に適しています。
さらに、末期がんなどの慢性疾患や終末期ケアにも対応しており、医療と介護を一体化した長期的な療養の場として機能しています。地域の医療機関と密接に連携しながら、必要な医療と日常的な介護・生活支援を両立させている点が大きな特徴です。
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失敗しない施設選びのポイント
介護保険適用の介護施設選びは、利用者ご本人やご家族にとって重要な決断であり、慎重さが求められることです。以下では、介護施設選びに重視するべきポイントについて解説します。
ニーズに適した施設を選ぶ
介護施設選びで失敗しないためには、まず利用者本人とご家族のニーズを明確にすることが大切です。介護の必要度や医療的ケアの有無、在宅復帰の希望などを整理することで、施設選びの方向性が見えてきます。以下を参考に、施設選びの方向性を定めてみてください。
- 医療的必要性の有無
医療的ケアが必要な場合は、特養や介護医療院など、医療連携体制が整った介護施設が適しています。ご本人の健康状態に応じて選択することが重要です。 - 入居期間の想定
短期的な利用か長期的な住まいとして考えるかによって、選ぶべき介護施設は異なります。短期の場合はショートステイや老健、長期の場合は特養や介護医療院など、終の住処として利用可能な施設を検討しましょう。 - 費用負担の許容範囲
予算に応じた介護施設選びは必須です。前払金や月額費用だけでなく、追加費用や介護保険適用範囲も確認することで、予算オーバーを防ぎます。
見学時に必要事項を確認する
介護施設を選ぶ際には、事前に見学を行うことも重要です。施設見学では、パンフレットやホームページでは分からない実際の居住環境やサービスの質、スタッフの対応などを自分の目で確認できます。
見学前に、以下のようなチェック項目を把握しておくことで、後悔のない施設選びにつながるでしょう。
- 医療連携状況について
医療機関との連携状況は、契約書や運営方針の資料で確認できます。特に、緊急時の対応方法について質問し、不明点は直接スタッフへ聞くことが大切です。 - 夜間対応体制について
深夜〜早朝にかけての夜間スタッフの配置人数や、緊急時対応方法について尋ねることで、安全性が判断できます。 - 緊急時搬送実績について
過去の緊急搬送の事例について質問し、その対応スピードや成功率から信頼性を評価することができます。過去に起こった緊急時の事例やその際に行った対応などについて、詳しく尋ねることが重要です。
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介護保険施設の最新動向と今後予測
現代社会では高齢化が進む中、高齢者施設には新たな課題への対応が求められています。以下では、今後予測される「2026年問題」について詳しく解説します。
2026年問題への備え
2026年には団塊世代が75歳以上となり、高齢者施設の需要が急増することが予測されています。この問題への対応策として、以下の内容が挙げられます。
- 団塊世代の施設需要増
高齢者人口の増加に伴い、新規施設の建設や既存施設の拡充を進めることが推奨されます。また、地域ごとの高齢者人口に合わせた需要分析も重要です。 - 地域包括ケアシステムの進展
地域全体で医療・介護・生活支援のサービスを同時に提供するシステムが拡充されています。これにより、在宅介護と施設介護の連携強化が期待されています。 - 多死社会に対応した施設改造
看取りケアや終末期医療体制の整備が進んでおり、高齢者の看取りの備えとして、個室化や医療設備強化なども行われています。
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まとめ
介護施設を選ぶ際は、利用者の状態や家族の希望に合わせて、最適な施設を見極めることが重要です。特養・老健・介護医療院はいずれも異なる目的やサービス内容を持っており、医療的ケアの必要性、入居期間の目安、費用負担の違いを踏まえて検討する必要があります。
また、2024年の制度改正や地域における医療連携の体制も判断材料として有効です。とくに見学時には、医療対応の範囲や夜間の緊急対応体制などを確認することで、安心して長く利用できる施設を選ぶことにつながります。

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