介護の知識

介護の申し送りとは?ノートやメモをまとめてスムーズに伝えるコツをご紹介します!

介護の申し送りとは?

申し送りとは、介護職員のシフト交代時に後任の担当者に引き継ぐことです。

口頭や日誌、連絡ノートなどで、利用者の体調不良や心身トラブル、それに伴って必要な処置や

経過観察などの特記事項を職員間で共有します。

そのため、申し送りではダラダラとその日起きたこと全てを伝える必要はありません。

申し送りは利用者に適切な介護サービス提供の一助となります。

伝えるべき要点をしっかりまとめ、後任の担当者へしっかり必要事項を報連相しましょう。

申し送りと引き継ぎはどう違うの?

「申し送り」と「引き継ぎ」はよく似た言葉ですが、それぞれの意味合いが違います。

  • 申し送り:業務上、必要な情報を従業員間で共有することがメイン
  • 引き継ぎ:前任者が退勤や休憩をする際に、後任者が前任者の作業を行うことがメイン

申し送りの目的は?

「申し送り」では、介護職員間で利用者の情報を共有します。

では、なぜ介護職員間で利用者の情報を共有し合う必要があるのでしょうか?

介護現場で申し送りを行う目的について解説します。

①継続的かつ適切な介護サービスを提供するため

申し送りが正確に行えていないことで、介護職員が提供する介護サービスにブレが生じます。

担当する職員によって提供するサービス内容が異なると、利用者は混乱してしまいます。

全ての介護職員が同じ水準で介護サービスを提供するためには、正しい情報の共有が重要です。

②介護施設や介護職員を守るため

介護施設にて利用者が転倒した、徘徊して所在不明になったなどのトラブルが生じたとします。

その際、ご家族から介護施設にクレームが入ることも想定できます。

申し送りで介護職員がその時の状況を共有しておくことで、一貫した対応が行えます。

③ケアプランや業務内容を見直しするため

利用者に行ったケアの内容や、その際の利用者の様子は担当した介護職員にしか分かりません。

そのため、申し送りによって他の介護職員やケアマネ、看護師との多職種連携を図ります。

ケアプランや業務内容の見直しにも繋がるため、申し送りはサービス提供に重要な役割です。

申し送りで伝えるべき内容

介護施設や訪問介護サービスなど、提供する介護サービスの形態が違っても、申し送りの内容に

違いはありません。多くの介護現場で行われている申し送りの内容は以下の通りです。

  • 利用者の体調、精神状態の変化
  • 利用者からの要望や意見
  • 利用者のご家族からの要望や連絡
  • 施設内で起こった事故やトラブル

これらの特記事項は、介護業務を引き継ぐ介護職員に欠かせない情報です。

また、次に業務に入る介護職員に「こうしてほしい」ということを伝える必要もあります。

「日中に意識低下を起こした利用者の夜間巡回を、通常2時間に1回のところ、1時間に1回と、こまめに行ってほしい」というように、具体的な内容を共有しましょう。

申し送りをスムーズに行うコツ・ポイント

申し送りは利用者への継続的かつ適切な介護サービスに欠かせないものです。

しかし、介護職員の中には「申し送りが苦手」と感じている人も少なくありません。

特に新人介護職員は「情報が多すぎて何を選んで伝えればいいのか分からない」と悩みます。

申し送りをスムーズに行うコツ・ポイントをご紹介します。

①メモをこまめにとり、正確な情報を簡潔に伝える

自分の記憶だけを頼りにせず、重要な情報は適宜メモをとりましょう。

また、申し送りでは伝え方や言葉遣い次第で食い違いが生じることもあります。

「体調不良を起こした利用者の情報」や「次の担当者にしてほしいこと」など、伝えるべき事項をピンポイントで用意しておくと、スムーズに相手に伝わります。

②「事実」「意見」「推測」はしっかり区別する

申し送りでは、「事実」や「利用者からの意見」「介護職員の推測」を区別しましょう。

混ざってしまうと聞き手が間違った解釈や誤解をしてしまうことに繋がります。

申し送りの際は、「利用者Aさんからの意見です」や「私の推測になるのですが」など、一言入れると聞き手が理解しやすくなります。

③話の順序を組み立てる

「事実」「意見」「推測」を区別した申し送りでも、話す順序が悪ければ相手に伝わりません。

結論や重要なことを1番最初に持ってくるなど、相手に伝わりやすい順序を考えましょう。

また、何の話をいくつ話すかを最初に伝えておくと、聞き手も理解しやすくなります。

申し送りの際にとるべきメモの内容

申し送りで伝えるべき内容は、事前にメモにまとめておくことが必要です。

また、申し送りで伝える特記事項がなくても、利用者の細かな言動や表情の変化をしっかり伝え

ることで、体調不良や突然の意識消失の兆候に気づくこともあります。

申し送りでは「特に変わりありませんでした」という内容では後任者が混乱を起こします。

申し送りの際に用意しておくべきメモの内容についてご紹介します。

申し送りに使う言葉は事前に用意しておく

食事、排泄、入浴など、利用者の生活場面に応じた言葉を用意しておくこと。

そして、利用者のその時々の状況に合わせて言葉を選ぶことでメモをとりやすくなります。

以下に、場面ごとでの利用者の状態や様子を表す言葉の具体例をご紹介します。

食事場面での表現 ぱくぱく食べる、ぺろりと平らげる飲み込みにくい様子、咀嚼が難しい様子
気分を表す言葉 元気に、笑って、落ち着いて元気がない、悲しそう、イライラして、ソワソワして
顔色を表す言葉 血色が良い、ほてった、腫れぼったい、むくんでいる赤らむ、青白い、青黒い、黄色い、土気色
皮膚状態を表す言葉 赤い、ピンク色、白っぽい、黒ずむ、青白いひび割れている、腫れている、しっとりしている
睡眠状態を表す言葉 スヤスヤ、ぐっすり、寝言を言っている、いびきをかいている
呼吸状態を表す言葉 荒い、速い、浅い、ぜーぜー、ヒューヒュー、ゴーゴー、ハアハア
外傷の様子を表す言葉 あざ、すり傷、切り傷、ひっかき傷、裂き傷、やけど褥瘡(床ずれ)、出血している、止血している

申し送りに使う文章はテンプレートとして用意しておく

申し送りで使用するメモには時間や文章の流れなどをあらかじめテンプレートとして用意してお

くことで、正確な情報が伝えやすくなります。

申し送りに使うメモには、以下のようなテンプレートを用いて具体的な内容を記載します。

時間①どんな場面で誰が何をした②その時の対応③後任者への依頼事項
12:30 ①昼食時、利用者Aさんが鮭の切り身をゆっくりと二口食べて箸を置いた。②約5分後、「「もう少し食べられそうですか?」」と声をかけたが、硬い表情で「「いらない」」と言われ、おぜんをさげた。③夜勤者に利用者Aさんの夕食、朝食の様子を観察するよう依頼する。
13:00①前回の排泄から2時間経過しており、「トイレに行きましょう」と声をかけた。②トイレでオムツを確認すると失禁しており、オムツと下着衣全て交換。③ケアマネにトイレへの誘導間隔について検討が必要だと伝える。
14:30 ①利用者Aさんが居室ベッド横の床の上に座り込んでいた。②「大丈夫ですか?」と声をかけると、「ホールに行こうと思ったが、うまく立ち上がれなかった」と返答があった。③入浴担当者に伝え、入浴時にAさんの打撲や内出血を確認してもらう。

要点がまとまらない!と困った時は?

申し送りで伝えるべき内容が上手くまとまらない時は、介護記録を見直すことが大切です。

介護記録では、「介護職員が利用者に行ったケアの内容」「その際の利用者の反応」

「利用者の心身状況の変化」などを細かく記載します。

介護記録と申し送りは、どちらも誰が見聞きしても分かるように情報を伝えることが大切です。

相手に伝わりやすい介護記録、申し送りの基本は以下の通りです。

①「5W1H」を意識する

  • 5W:who(誰が)・what(何を)・when(いつ)・where(どこで)・why(なぜ)
  • 1H:how(どのように)

5W1Hは英単語の頭文字をとった言葉で、情報を分かりやすく伝える文章の構成です。

特に、主語である「誰が」は省略してしまうことが多いため注意しましょう。

②客観的な事実を書き、簡潔にまとめる

介護記録や申し送りでは最初に「誰が何をした」という結論に続いて詳しい説明をします。

介護職員の憶測や感想は避け、利用者の言動などの客観的な事実を書くようにしましょう。

メモの書き方に注意し、分かりやすい内容を

申し送りは、利用者に対する継続的かつ適切な介護サービス提供のために欠かせません。

正確な情報を簡潔に伝えることが求められるため、申し送りが苦手な人も多いです。

申し送りでは難しい文章を考えるのではなく、「事実」をありのまま伝えることが1番です。

また、申し送りは伝達ミスが生じやすいため、メモやノートを積極的に活用しましょう。