認知症による暴言・暴力はなぜ起きる?対応や相談の方法をくわしく解説!
高齢者介護において、認知症の対応はとても大きな問題の一つです。
認知症が進行し、暴言や暴力がみられると家族やヘルパーなど周囲の人が困るのはもちろん、適切な介護サービスを受けることもできなくなってしまいます。
そこで今回の記事では、認知症による暴言・暴力の理由や対応方法について解説します。
認知症介護にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
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目次
認知症で「暴力」が起きる理由は?
認知症とは、脳の病気や障害などが原因でさまざまな症状を引き起こし、生活に支障が出てしまう状態です。認知症の症状には記憶障害や見当識障害などの中核症状と、妄想や徘徊などの周辺症状があり、暴力行為は周辺症状に該当します。
暴力行為は認知症になれば誰しもに現れる症状ではなく、暴力を振るってしまうのにはいくつかの要因があります。
不安を感じている時
認知症の方が暴力や暴言に至ってしまう原因は、不安を感じて混乱をしているのかもしれません。認知症の方は今置かれている状況が理解できず、いったん理解しても忘れてしまいます。うまく自分の気持ちが伝えられないためコミュニケーションを取るのが難しくなり、暴言や暴力に現れてしまうのです。
自尊心が傷ついた時
認知症があっても感情はしっかり保たれています。認知症の方ができないことに対して、過度に助言したり手伝ったりしてしまうのは、その方の自尊心を傷つけているかもしれません。入浴や排泄の介助などで羞恥心を感じたり、危険だからと自分の行動を制限されたりするのも自尊心を傷つける行為です。介護者が良かれと思って手伝ってしまうと、自分が今までできていたことができないと感じてしまい、自尊心が傷ついた結果、暴力や暴言につながってしまいます。
体調が悪い時
認知症の方は、自分の体調が悪い時や痛いところがあっても、うまく伝えられない方が多くいます。誰にも助けてもらえず体調不良を我慢することは、非常にストレスになってしまい、いらだちを隠せません。
感情のコントロールがうまくいかない時
認知症の方は、脳の前頭葉が萎縮していることが多く、感情のコントロールが困難になってしまいます。性格がもともと穏やかだった人も、感情を抑制し冷静な行動を取ることが難しくなるので、ストレスが続けば精神的に不安定になってしまいます。通常であれば不安や怒りを感じても感情を抑えられますが、認知症により制御が難しくなるのが暴言や暴力の原因の一つです。
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認知症による暴力行為の対処方法は?
暴言や暴力が現れた時、どのようにしたら良いのか対応に苦慮してしまいます。認知症の症状であるからと理解はしていても、傷ついたり、怒ってしまったり辛い思いをしてしまう方も多いでしょう。暴言や暴力が始まったら、どのような対処方法があるのでしょうか。
いったん距離を取る
暴言や暴力が始まったら、いったん冷静になって距離を置いてみましょう。興奮状態の時にどうにか対応しようとすると余計に刺激してしまいます。少し距離を置き、離れたところから危険な状況がないか見守ってください。時間が経ってからの方が、少し落ち着いて対応できる場合もあります。
対応者を変えてみる
対応する人を別の人に変えてみるのも一つです。家族が対応してうまくいかないならヘルパーに代わってみる、逆も同じでヘルパーが対応してもうまくいかない時に家族に代わってもらうなど、人が変わると案外うまくいく場合もよくあります。介護者が一人で抱え込まず、さまざまな方法でアプローチしてみましょう。
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暴力行為の防止・改善方法について
暴力行為に至ってしまう前に日頃のケアで未然に防止し、改善できるケースもあります。
原因を見つけて解消する
前述した通り、認知症の周辺症状には何か原因があるはずです。日常の行動観察や本人の話を聞くなどして原因を探ってみましょう。原因が分かれば何かを少し変えるだけでも症状が改善される可能性があります。
関わり方を検討する
日頃の関わり方を検討し、変えてみましょう。認知症の方は介護者の言動を敏感に感じ取っています。こちらがイライラした対応をとってしまうと悪循環になってしまいます。本人の意思を尊重した対応を心がけ、不安を取り除くと暴言や暴力の緩和につながります。
体調を確認する
体の不調がうまく伝えられないのが、暴言や暴力として表現される場合もあるので、日頃の体調を気にかけておきましょう。体調不良、痛み、不快感で精神的に不安定になってしまうことはよくあります。
施設入所や入院も視野に入れておく
さまざまな対応を工夫しても認知症が改善されない場合、施設への入所も視野に入れておきましょう。在宅介護が長引けば、家族もその対応に疲れて共倒れしてしまいます。施設に入所すると初めのうちは抵抗し、帰宅願望などで慣れるまで時間がかかる場合もありますが、老人ホームでは介護のプロが認知症ケアにあたってくれるので安心です。
しかし、暴力行為がひどく施設での対応も難しくなった場合は、退所を迫られるケースも考えられます。認知症の状態によっては入院加療が必要な場合もあり、認知症患者が受け入れ可能な病院などへ入院し、治療をする必要があります。
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暴力行為が起こった時にやってはいけないこと
暴言や暴力が起こった時の対応を間違えてしまうと、さらに興奮しエスカレートさせてしまいます。本人の言動に対して暴言や否定的な言葉を返したり、暴力で返したりするのは決してあってはいけません。また、部屋に閉じ込めてしまう、ベッドにくくりつけるなどの身体拘束は虐待にあたる行為です。
介護者が暴言・暴力に対応し、冷静でいることの方が難しいものです。認知症介護をしている人であればよくあることなので、自分を責めず助けを求めましょう。
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認知症での暴力行為に効く薬は?
認知症の薬には、認知症の進行を遅らせる効果のある抗認知症薬と、幻覚や妄想、焦燥、興奮や攻撃性などの周辺症状に対する内服があります。周辺症状に使われる薬は、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬、漢方薬などです。
残念ですが、抗認知症薬は認知症の進行を遅らせる効果はありますが、進行を止める治療薬ではありません。また、服用開始時期は副作用が出る場合があるので注意が必要です。服用についてはかかりつけ医に相談してみましょう。
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家族が暴力を振るわないように!
家族が感情的になり暴力を振るってしまわないように、介護者側の心のケアも必要です。暴言や暴力が仕方のないものだとわかっていても、苦しい状況が続けばストレスをため込んでしまいます。ついカッとなり、虐待行為に発展してしまうことも少なくありません。
ストレス発散のために介護から離れる時間を取り、息抜きするのも必要です。誰かに相談し話を聞いてもらったり、介護保険サービスを利用したりすることで自分の時間を作り、一人で抱え込まないようにしましょう。
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認知症による暴力行為の相談先は?
暴力がひどい場合、警察に通報した方が良いのではと悩む場合があるかもしれません。そこまで認知症の周辺症状がひどくなる前に、早めに医療や介護の専門家に相談しましょう。解決方法が見出せることがあります。
かかりつけ医に相談する
認知症の症状が、体調不良が原因でひどくなってしまう場合もよくあります。かかりつけ医に日頃の体調を定期的に診察してもらい、気分良く過ごせるようにしておきましょう。
また、認知症のタイプにより暴力的な言動が強く出てしまう場合もあります。「前頭側頭型認知症」は発症年齢が比較的若く、性格の変化や社会性の欠如、同じことを繰り返す、抑制が効かなくなるなどの症状が特徴です。レビー小体型認知症は幻聴や幻覚症状が現れ、暴言や暴力を引き起こしてしまうケースが多くみられます。
アルツハイマー型認知症は高齢者に最も多い認知症で、記憶障害や見当識障害の症状が顕著です。症状の進行に伴い、徐々に不安、幻覚やせん妄が起こり、それに伴い暴力や暴言へつながってしまいます。
暴力がひどくなるようであれば医師に相談し、薬物療法の相談や認知症専門医を紹介してもらうのも一つです。
ケアマネジャーに相談する
ケアマネジャーは介護の専門職としてさまざまな認知症の方に対応しています。認知症対応に関して成功事例もたくさん経験しているはずですので、解決に向けてアドバイスしてくれるでしょう。また、介護保険サービスの利用により認知症症状が改善されるケースもよくあります。ケアマネジャーに訪問介護やデイサービスの利用などを相談してみましょう。介護保険サービスを利用し、介護者が休息できる時間を作るのも非常に大切です。
地域包括支援センターで相談する
介護保険サービスの利用を一度もしたことがない方は、地域包括支援センターで相談しましょう。地域包括支援センターは高齢者の暮らしを地域でサポートするための相談窓口です。ケアマネジャー以外にも社会福祉士、保健師などが在籍し、地域の介護事業所、医療機関、行政機関などと連携しています。高齢者のさまざまな相談に幅広く対応しているので、介護保険を申請したい場合も相談してみましょう。
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適切な対処を学び、快適な生活を目指しましょう
今回の記事では、認知症による暴言・暴力の理由や対応方法について解説しました。
認知症介護には正解がなく、悩んでしまう方も多いものです。対処方法を学び、適切な介護をするのも大切ですが、一人で抱え込まず早めに誰かに相談し、助けてもらうことも重要です。
この記事が、認知症介護に悩む方の一助になれば幸いです。
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