介護職が知っておくべきLIFEの基礎知識!LIFE加算の条件も解説
介護の現場にはさまざまな資格制度があるものの、実際の業務ではそれらの知識や個人の経験をもとにした属人的なケアが行われています。
より科学的で効果のあるケアの実現には、それぞれの施設で行われているケアの情報や介護される人の状態を統合し、科学研究でのデータと合わせて改善点を考える必要があります。
日本でもこの取り組みが徐々に始まっています。
本記事では科学的介護情報システム「LIFE」について解説し、介護現場にどのような影響を与えるかを分かりやすく整理します。
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目次
科学的介護情報システム「LIFE」とは
介護に科学的な視点を取り入れることに先立ち、まずは医療で同様の取り組みが進みました。
医療では「科学的根拠に基づく医療(EBM)」という概念が提唱され、日本でも1990年代から普及しました。
EBMの要点は「患者の臨床上の疑問に関して、医師が関連文献等を批判的に吟味し、患者への適用の妥当性を評価して臨床判断を下すこと」を目指しています。
それによって一方的な医療ではなく、患者の価値観を反映した双方向のコミュニケーションを伴った医療が可能になりました。
最近では介護においても同様の仕組みが始まりました。
さまざまな基礎研究により「効果の高い介護の実践方法」が少しずつわかってきています。
しかし、実際の現場では実験環境のように均一ではなく、すぐに知見を生かすことが難しいという欠点がありました。
そこで現場の情報を網羅的に整理し、どのようなアプローチであれば科学的に実証された方法を適用できるかをサジェストする必要があります。
科学的介護情報システム「LIFE」は「科学的に妥当性のある指標等を現場から収集・蓄積・分析」する情報システムを指し、LIFEで集められた情報を各施設にフィードバックすることで再現性の高い介護の実現を目指しています。
厚生労働省の資料によると、LIFEにより収集・蓄積したデータの活用から、次のような効果が期待されています。
- 施設の効果や課題等の把握、見直しのための分析に活用される
- エビデンスに基づいた質の高い介護の実施に繋がる
- 事業所単位、利用者単位のフィードバックが行える
LIFEの運用は2021年度から開始し、2021年3月末時点で約6万事業所が登録されています。
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介護報酬改定により新設された「LIFE加算(科学的介護推進体制加算)」
LIFE加算(科学的介護推進体制加算)とは、LIFEを活用した介護事業所に対して介護報酬の加算を行う制度です。
この制度はLIFEの利用推進を目的として、令和3年度の介護報酬改定で新たに創設されました。
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LIFE加算の対象サービスは?
ほとんどの介護事業がLIFE加算の対象になりますが、3つの事業形態のいずれに当てはまるかによって加算される単位が異なります。
- 福祉施設系
例: 介護老人福祉施設、老人福祉施設入所者生活介護)
加算単位数: 要件に応じて40単位/月(I)または50単位/月(II) - 保健・医療施設系
例: 介護老人保健施設、介護医療院
加算単位数: 要件に応じて40単位/月(I)または60単位/月(II) - その他
例. 通所介護、通所リハビリテーション、小規模多機能型居宅介護
加算単位数: 40単位/月
IIの加算単位の適応を受ける場合には、Iで提出が必要なデータに加え、介護される方の疾病の状況や服薬の情報も合わせて提出する必要があります。
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LIFE加算の算定要因
LIFE加算が適用されるためには「データの収集・報告」「PDCAサイクルの運用」の2つが求められます。
データの収集では利用者ごとの
- ADL値(Activities of Daily Livingの略で、日常生活動作がどのようであったかを点数化したもの)
- 栄養状態
- 口腔機能
- 認知症の状況
- その他の入所者の心身の状況等に関わる基本的な情報
などの内容を厚生労働省に提出する必要があります。
PDCAサイクルの運用では、利用者の自立支援・重症化帽子を図るサービス計画を策定し、実践したサービスの効果を検証、見直し続ける必要があります。
具体的な対応を記事後半にてご紹介します。
LIFE加算を受けるために必要なデータ入力の頻度についても、厚生労働省の通知により定められています。
基本的には要介護者ごとに6か月に1回の頻度が必要とされますが、以下のような別の介護報酬加算は3か月ごとの提出が必要になるので区別しておくことが大切です。
- 個別機能訓練加算
- リハビリテーションマネジメント加算
- 排泄支援加算
- かかりつけ医連携薬剤調整加算
- 栄養マネジメント強化加算
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LIFEはどうやって利用したらいいの?
LIFEは事業所単位で利用でき、情報の更新は全て専用のWebサイトから可能です。
まずは事業所の担当者がLIFEの利用申請を行い、IDとPassを取得する必要があります。
その後、データ登録を行う職員のユーザー登録、介護サービス利用者の登録を行い、ケアの情報や健康状態に関するデータを入力します。
入力はLIFEのWebサイトから手入力する方法と、介護記録ソフトのデータを出力したファイル(csvファイル)のいずれかが選択可能です。
加算を受けるために必要な頻度は上述のように6か月ごとですが、更新自体は毎日可能です。
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LIFE加算で重要な「PDCAサイクル」
PDCAとはPlant(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の略で、4つのステップを繰り返すことで改善を進めるという考え方を指します。
LIFEではデータを集めて終わりではなく、分析し、実際の現場へ施策をフィードバックすることが意図されているため、PDCAサイクルを回すことが義務付けられています。
LIFE加算におけるPDCAサイクルの一例として、次のような流れが考えられます。
Plan
効率的な介護のためのサービス計画を作成する
Do
サービス計画に基づいた介護を実践する
Check
介護に関係する様々な職種で連携し、介護の効果を検証する
Action
検証結果に基づき、より良いサービス計画を作成・実行する
集められた情報は匿名化され、一連の手続きの後に事業所からアクセスできます。
その際には自身の事業所と全国平均を比較できるなど、使い勝手の良い状態にデータが整理されているため、事業所の負担を増やすことなく介護効果のモニタリングが可能です。
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科学的介護情報システムLIFEで何が変わるのか
2021年より導入された科学的介護情報システムLIFEを活用することで、介護に携わる多くの方がその恩恵を受けることができます。
要介護者にとっては質の高いサービスが受けられるようになり、介護事業提供者にとってはLIFE加算を通した収益の向上が見込まれ、介護をする方はエビデンスに基づいた適切な介護を理解できるようになります。
LIFEはまだ始まったばかりの制度でまだ試験的に活用されている段階ですが、今後の発展には行政と事業所での緊密な連携が必要です。
LIFEに十分な量のデータが蓄積され、介護の現場に生かされていくことが期待されています。
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