介護はプライバシーへの配慮が必須!利用者の個人情報を保護するための基礎知識を紹介

#介護の法律#介護の知識

個人情報の保護やプライバシーの問題への意識が高まる昨今、介護においてもそれらの知識が必要になります。
開示してはいけない情報を知識不足によって公開してしまうと、信頼関係の失墜だけでなく訴訟に発展するリスクもあります。
事業者としても従業員に適切なガイドラインを策定し、ルールを守ってもらうことが必要になっています。
本記事では介護におけるプライバシー問題を取り上げ、配慮が必要になるタイミングや、プライバシーに配慮した介護を行うための前提知識をご紹介します。

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介護現場での大きな悩み「プライバシー問題」

介護職は業務の特性上、被介護者のプライベートへ介入する場面が多くあります。
例えば身体に触れて行う介助や、排泄、家族との対応など、強い信頼関係と守秘義務を守ってもらえるという安心感がなければ任せられない作業をサポートさせてもらっています。
プライバシーの侵害が起こると信頼関係が崩れ、介護そのものの継続が困難になるため、プライバシーの遵守には細心の注意を払う必要があります。
実際に守秘義務違反で訴訟になるケースや、被介護者の家族とのトラブルになるケースも見られています。

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なぜ、介護ではプライバシー保護が重要なのか

介護現場では、利用者のプライバシー保護が大切だと言われています。
なぜ、介護現場では利用者のプライバシー保護が重要視されているのでしょうか。
ここでは、介護現場でプライバシー保護が重要と言われている理由を3つご紹介します。

要介護度が高くなると自己判断が難しいため

人は誰しも、自分の意思で自由に生きる権利を有しています。
しかし、認知症やパーキンソン病、脳血管障害の後遺症による言語障害など、様々な病気や障害があると、必然的に自己判断での行動が難しくなってしまいます。

また、高齢で認知機能が低下していることが一見して分かるようになると、オレオレ詐欺や電話勧誘販売などの被害に巻き込まれやすくなるでしょう。
病気や障害により、自己判断が難しい高齢者の人権や身の安全を守るために、介護施設ではプライバシーの保護が重要視されるのです。

介護施設に勤務する職員は、部外者から利用者の情報を尋ねられても容易に答えてはいけません。
職員が利用者やご家族に無断で情報を公開することは、自分自身の個人情報を上司や同僚が無断で外部者に伝えることと同じことだという認識が大切です。

介護施設や介護職員によって判断が異なるため

介護施設Aでは利用者のプライバシー保護のため、利用者の情報につながるものは一切インターネット上で公開していません。
しかし、介護施設Bでは、利用者の生活の様子やレクリエーションの様子を撮影した写真を介護施設公式のSNSに公開しています。

介護施設Aの施設長は「利用者の情報をネット上に公開するなんてとんでもない。誰が見るかも分からないのに、無責任だ」と主張。
一方、介護施設Bの施設長は「感染症対策で面会に制限があるんだから、ご家族が気軽に利用者の様子を見られるよう、一定の期間内であれば写真をSNSに掲載しても良いんじゃないか」と主張しています。

どちらの意見も間違いではありません。

利用者のプライバシー保護に関しては、介護施設や介護職員によって考えが異なります。
そのため、プライバシー保護に関する一定のルールを定めていないと、どこまでが合法でどこからが違法なのか、判断がつかなくなってしまいます。

プライバシー保護に関する統一した考えを全国の介護施設で共有するため、利用者のプライバシー保護に関する法律やルールが決められているのです。

介護施設・介護職員は利用者のプライバシーに介入するため

介護施設や介護職員が利用者のプライバシーに一切介入せず、介護サービスを提供することはほぼ不可能に近いです。
介護施設では利用者の住所やご家族の連絡先を聞き取る必要があり、自身での金銭管理が難しい利用者の場合、現金を預かることもあります。

また、介護職員は入浴介助や排泄介助など、利用者の羞恥を伴う身体介護を任され、加えてプライバシーへの配慮が求められます。
介護施設の運営や介護サービスの提供には、利用者のプライバシーに介入する場面が多くあるのです。

特に身体介護では、利用者が家族や親戚、近所の人には知られたくないと思うような場面も多くあり、他の利用者や介護職員に配慮しながら介助を行う必要があります。
介護現場で行う業務の内容ゆえに、利用者のプライバシー保護が欠かせないのです。

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どんな時にプライバシー配慮が必要になるのか

介護職の方がプライバシーの配慮のために意識を配るべき行為には、次の5つが挙げられます。

1.入浴・排泄

入浴・排泄ではデリケートゾーンをさらすため被介護者の羞恥心への配慮が必要です。
「見られたくない」「音を聞かれたくない」と思う方も多いので、一律的な介助にせず、被介護者の希望に沿った対応を心がけましょう。
例えば、

・おむつ交換時にベッド周りのカーテンを閉める
・トイレへ誘導する際の声かけを小声で行う

などに注意しましょう。

2.被介護者との会話

被介護者との会話を通して様々な情報を知ることができます。
それらを口外せず、守秘義務として心の中にしまっておくことが必要です。

施設の別の人の話題にも注意が必要です。
「あと人がこう言っていた」と意図しない形で伝わってしまうとトラブルになりかねないので、あくまでも介護者と被介護者の間でのみ共有できる話題を選びましょう。

また、認知症や失語症の方とのコミュニケーションは容易ではありませんが、そのような場合でもないがしろにせず、人として尊重することが求められます。
対応が難しい場合にはケアマネージャーや行政の担当者とも連携して、どのようなコミュニケーションであれば被介護者を尊重できているかを確認すると良いでしょう。

3.被介護者の家族との会話

被介護者の家族であっても、施設での被介護者の行動や会話によって知った情報を全て話していいわけではありません。
時には家族との関係が良好ではないケースもあるので、必要性をよく考慮して話をすることが大切です。

被介護者の家族が病気になった時に、家族から「本人には伏せておいてほしい」と言われるケースもあります。
そのような場合には家族の意向を汲むことが守秘義務の遵守と言えるでしょう。

4.SNS

業務を通じて知り得た情報を、SNSを通して発信することはタブーです。
特にFacebookなどの実名アカウントでは個人の発言が特定されやすい性質があります。
「仕事に不満がある」「介護に疲れた」などのような、被介護者の情報を含まない発信であっても、トラブルに発展するケースがあります。
SNSの投稿には細心の注意を払うことが必要です。

5.被介護者の物品

介護では被介護者の物品を取り扱う場合もあります。
日記や写真など、被介護者の思い入れのある物品を無断で見てしまうと、被介護者の感情に大きな影響を与えるため、それらに触れる必要がある場合には許可をもらうようにしましょう。
訪問介護では被介護者のプライベートな空間に立ち入るため、あらかじめ触れて良いものとそうでないものを打ち合わせておくこともトラブルを防ぐための対策になります。

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利用者のプライバシー保護に関する法律

日本では、介護施設や介護事業所を利用する利用者のために、プライバシー保護に関する法律・公的ルールを定めています。
介護現場では、どのような法律・公的ルールを留意しながら利用者の介護を行う必要があるのでしょうか。
ここでは、利用者のプライバシー保護に関する法律・公的ルールを4つご紹介します。

個人情報保護法

個人情報保護法とは、2005年4月に施行された制度です。
個人情報の不正利用や不適切な取り扱いを防止し、顧客の個人情報を取り扱う事業者に対しては、個人情報を適切に取り扱うことを義務付けています。
個人情報保護法では、以下の5つのカテゴリーに分類し、個人情報保護に関するルールや取り決めを定めています。

  1. 個人情報の取得に関して
    個人情報を取得する際、「事業者側が何の目的で個人情報を取得するのか」「個人情報を何の目的で利用するのか」が本人に伝わっているか
  2. 個人情報の利用について
    取得した個人情報を、取得時に本人に伝えた目的以外で使用しない
  3. 個人情報の保管に関して
    取得した個人情報を安全に管理しているか、個人情報の漏えいリスクがある杜撰な管理方法をしていないか
  4. 個人情報の譲渡に関して
    取得した個人情報を本人に無断で他人に譲渡していないか、委託業者に個人情報を譲渡する場合、本人の許可をとっているか
  5. 個人情報の開示に関して
    本人から「自分の個人情報を開示してほしい」と言われたにも関わらず、特に理由もないのに断っていないか

個人情報として扱う必要があるのは、氏名や生年月日、住所、電話番号、個人を判別するための顔写真・証明写真です。

利用者の個人情報を取得し、管理する介護施設・介護事業所は個人情報保護法に基づいて、個人情報の取得・利用・管理・他人への譲渡・開示を行う必要があります。

万が一、介護施設・介護事業所が個人情報保護法に違反した個人情報の取り扱いを行っていた場合、懲役刑または罰金刑が科せられます。

利用者本人の同意や許可なく個人情報を公開することももちろん違法ですが、利用者本人が個人情報の公開を希望しているにもかかわらず、介護施設・介護事業所側が正当な理由なく拒否した場合も違法になりますので注意が必要です。

医療・介護関係事業者における個人情報の取り扱いのためのガイドライン

医療・介護関係事業者における個人情報の取り扱いのためのガイドラインとは、厚生労働省が定める個人情報取り扱いに関するガイドラインです。
当ガイドラインの対象者は医療・介護関係事業者です。
医療現場・介護現場では、多くの患者や利用者、そのご家族の個人情報を把握し、適切に取り扱うことが求められます。
医療・介護関係事業者における個人情報の取り扱いのためのガイドラインでは、医療現場・介護現場での個人情報の取り扱いについて、以下のように定めています。

  1. 患者・利用者の個人情報の利用目的について
    業務上知り得た患者・利用者の個人情報を利用する目的は、以下の通りとする。それ以外の目的で個人情報を利用・公開することは禁じる。
    ・患者・利用者に適切な医療サービスを提供するため
    ・医療保険・介護保険の事務手続きを行うため
    ・他の病院・診療所・薬局・介護サービス事業者と連携を行うため
  2. 個人情報の義務や定義
    どのような情報が患者・利用者の個人情報として該当するのか、また、個人情報として厳重に管理・取り扱いを行うべき情報の定義を定めています。
    患者・利用者の氏名や生年月日、住所、電話番号、個人が判別できる顔写真・証明写真、保険証、障害者手帳などが個人情報に該当します。
  3. 医療・介護事業者が患者・利用者の個人情報を利用する場面
    医療現場・介護現場の通常業務内で患者・利用者の個人情報を取り扱う場面や事例について記載されている項目です。

また、個人情報を取り扱う際の注意点についても記載されています。
万が一、当ガイドラインに定められている「個人情報の管理・取扱いに関する義務」が遵守されていないことが判明した場合、個人情報保護委員会による立ち入り調査や指導、命令、勧告が行われます。

なお、個人情報の厳重な管理・保護が行われるのは、生存する患者・利用者や、現在入院・入所している患者・利用者だけではありません。
亡くなったり、病院・介護施設を退院・退所した方の個人情報に関しても、漏えいや無断公開することなく、厳重な管理・保護を行う必要があります。

社会福祉士及び介護福祉士法

社会福祉士及び介護福祉士法とは、社会福祉士や介護福祉士の資格を保有している方に対し、個人情報の取り扱いや資格名称の使用制限を定められている法律です。
社会福祉士・介護福祉士として、介護施設・介護事業所に勤務する中で、業務上知り得た利用者やご家族に関する個人情報を漏らしてはいけないという内容です。

また、介護施設・介護事業所を退職後も、個人情報の漏えい禁止が適用されます。
社会福祉士・介護福祉士は利用者に適した介護サービスを提供するために、利用者やご家族の情報を収集し、把握する必要があります。
収集した利用者やご家族の個人情報は介護サービスの提供に使用されますが、それ以外の目的で使用することは一切禁止です。

万が一、社会福祉士・介護福祉士が利用者やそのご家族の情報を漏えいしたことが発覚した場合、罰則が科されます。

各介護施設・介護事業所の運営基準

介護施設・介護事業所でそれぞれ定められている運営基準にも、利用者やそのご家族の個人情報保護に関するルールが定められています。
介護施設・介護事業所が適正な運営を行うために基準としている個人情報保護法や医療・介護関係事業所における個人情報の取り扱いのためのガイドライン、社会福祉士及び介護福祉士法について、記載しています。

万が一、各介護施設・介護事業所で定められている運営基準や就業規則に反した行為を行った場合、強制解雇になるため注意が必要です。
介護施設・介護事業所に再就職や転職をした場合、就職先の運営基準や就業規則、個人情報の取り扱いに関するルールを確認するようにしましょう。

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プライバシーに配慮しながら介護をするには

プライバシーを守りながら介護をするためには、個人情報に関する知識も必要になります。
ここでは基本的な心構えに加えて、介護ではどこまで介入しても良いのかを法とガイドラインに基づいて紹介します。

被介護者に対して、尊厳を持って接する

プライバシーを侵害しないためには、被介護者が自分と対等な個人であるという認識を常に持ち、尊厳を欠かさないことが大切です。
「自分が介護をされる立場だったらどう感じるだろう」という視点を常に持ち、被介護者のサポートに努めましょう。

事業所全体で認識を共有する

プライバシーが守られる環境を、事業所全体で作り上げることも効果的です。
個人情報に関する研修や、噂話が起こりにくい環境づくりをスタッフ一丸となって行うことで、被介護者が安心して生活できるようになります。

個人情報保護法を理解する

個人情報保護法とは個人の権利と利益を保護するために、個人情報を扱う事業者に対して義務を定めた法律です。
氏名や生年月日、その他の個人を特定できる情報が誰にでも見れる形で公開されないように求めています。
個人情報の管理を怠ることで罰則が適用されることもあるので、介護の現場においても厳重な情報管理が求められることを理解しておきましょう。

厚生労働省のガイドラインを理解する

個人情報保護法の施行と同時に、厚生労働省から「厚生労働分野における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」が発表されました。

このガイドラインでは介護における個人情報の取り扱い方に加え、漏洩などの問題が行った際に対処を行う体制をどのように構築するかなどについて提言をしています。

また、医療・介護特有の問題として遺伝情報や生活記録など、基礎研究に役立つ情報も取り扱うことがあります。
それらを公的機関に登録する際には、個人が判別できない形式にすることなども本ガイドラインで規定されています。

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利用者のプライバシー配慮と介護の両立

介護は被介護者と近い関係にならざるを得ないため、多くの個人情報を扱う可能性があります。
その場合にも被介護者の気持ちに寄り添い、プライバシーの確保に努める必要があります。
本記事では、プライバシーの尊重のために「入浴・排泄」「被介護者との会話」「被介護者の家族との会話」「SNS」「被介護者の物品」の5つに特に注意が必要なことを述べました。
これらに留意して被介護者が安心して生活できる環境を構築しましょう。

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