介護問題の1つであるヤングケアラーとは?実態や現状、対策や相談先について解説

#介護の知識

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ヤングケアラーとは?

ヤングケアラーとは、本来大人が担うことが想定されている家族の介護や看病、身の回りの世話、家事などを日常的に行っている子供のことです。家族の介護や看病に割く時間が長く、学業や友人関係などに制限や影響が生じてしまうことがあるため、問題視されています。ヤングケアラーは、以下の状況下にある子供や学生などの若者のことを指します。

  • 病気や障がいのある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている
  • 病気や障がいのある家族に代わり、幼い兄弟の世話をしている
  • 病気や障がいのある兄弟の世話や見守りをしている
  • 目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている
  • 日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳をしている
  • 家計を支える為にアルバイトなどの労働して病気のある家族を助けている
  • アルコールや薬物、ギャンブルなどに依存している家族に対応している
  • がんや難病、精神疾患などの慢性的な病気を抱える家族の看病をしている
  • 病気や障がいのある家族の身の回りの世話をしている
  • 病気や障がいのある家族の入浴やトイレの介助をしている

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なぜ「ヤングケアラー」が社会的問題になっているのか

なぜ、「ヤングケアラー」は社会的問題として大きく取り上げられているのでしょうか。ここからは、ヤングケアラーが社会的問題として取り上げられている3つの理由についてご紹介します。

学業に集中できない

ヤングケアラーの多くは小学生~高校生の学生です。学校に通い、勉強をしながら親の介護や看病、身の回りの世話をしないといけないのです。そのため、「勉強に集中できない」「親の介護のために学校を休んだり、早退をしたりしないといけない」「寝不足で授業中に寝てしまう」などの悩みを抱えています。

これらの悩みを抱えているヤングケアラーは、学業よりも家族の介護や看病を優先するため、高校や大学への進学を諦めることも決して少なくありません。

心身ともに疲弊してしまう

ヤングケアラーは学校での勉強や体育科目に加え、家族の介護や看病、身の回りの世話、料理・洗濯・掃除などの家事を1人ですべて担っています。

そのため、体力的にも精神的にも消耗してしまい、うつ病を発症するヤングケアラーが後を絶ちません。

相談相手がいない

ヤングケアラーの多くが「誰に相談すればいいのか分からない」「友達や学校の先生に家族の介護の事を相談するのは恥ずかしい」などの悩みを抱えています。そのため、誰にも相談できずに1人で悩みを抱え込んでしまうのです。

1人で悩みを抱え込むことは、うつ病や引きこもりなどの原因にもつながるため、早急な発見と対応が必要だと言われています。

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ヤングケアラー問題の実態・現状

文部科学省が行った「ヤングケアラーに関する調査研究について」では、ヤングケアラーの人数は推計で「約50万人以上」いると言われています。本当にそれだけ多くのヤングケアラーが存在するのでしょうか。また、ヤングケアラーが近年急増していることには、何か理由や根拠があるのでしょうか。

ここからは、ヤングケアラー問題の実態・現状と、ヤングケアラーが増加している理由についてご紹介します。

「自分が世話をしている家族がいる」と答えた学生の割合

文部科学省の調査では、「自分が世話をしている家族がいる」と回答した学生の割合は、以下の通りであると報告されています。

小学6年生6.5%(約15人に1人)
中学2年生5.7%(約17人に1人)
高校2年生(全日制)4.1%(約24人に1人)
高校2年生(定時制)8.5%(約12人に1人)
高校生(通信制)11.0%(約9人に1人)
参照:文部科学省「ヤングケアラーに関する調査研究について」( https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/mext_01458.html )

「自分がヤングケアラーにあてはまる」と答えた学生の割合

上記のうち、「自分がヤングケアラーにあてはまると思うか」という問いに「あてはまる」と回答した学生の割合は以下の通りです。

小学6年生
中学2年生1.8%
高校2年生(全日制)2.3%
高校2年生(定時制)4.6%
高校生(通信制)7.2%
参照:文部科学省「ヤングケアラーに関する調査研究について」( https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/mext_01458.html )

上記の結果では、半数以上の学生が「自分自身がヤングケアラーである」という自覚を持たずに、家族の世話を日常的に行っていることが明らかになっています。

なぜ近年ヤングケアラーが増えているのか

日本で近年、ヤングケアラーが増えている理由として、以下の3つが挙げられます。

  • 高齢化による、要介護高齢者の急増
  • 共働き世帯の増加により、親世代が高齢者の介護を担えない
  • 核家族世帯の増加により、親戚に頼りにくい状況の家族が増えている

他にも、新型コロナウイルス感染症の流行により、親世代の在宅ワーク・リモート勤務が増えました。そのことで、障がいを持つ兄弟や介護が必要な高齢者が騒がしくしないよう、子供に介護や身の回りの世話を丸投げする親世代も増加しているのです。

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ヤングケアラー問題の対策方法・相談先

ヤングケアラー問題は日本だけでなく、世界中で取り上げられている問題です。特に、イギリスではヤングケアラー問題への解決や対策に早期から取り組んでおり、2014年にはイギリス政府が「子どもと家族に関する法律」を制定しました。専門資格を持ったNPO法人のスタッフがヤングケアラーの介護を代わったり、ヤングケアラーが悩みを相談できる場を提供しています。

その一方で、日本は世界の中で最もヤングケアラー問題への解決・対策が遅れていると言われているのをご存知でしょうか。日本ではここ数年でようやくヤングケアラーに対する認知度が高まり、自治体や行政が対応策を考案し始めました。ここからは、日本が行っているヤングケアラーへの支援についてご紹介します。

ヤングケアラーへの支援

日本では2020年に埼玉県が全国初の「ケアラー支援条例」を制定しました。この支援条例には、ヤングケアラーも対象に含まれています。全国の学校に対して「ヤングケアラーの相談に乗り、適切な機関への取り次ぎを行うよう努めること」を要求しています。

また、2021年に、神戸市が全国初のヤングケアラー向けの相談窓口を設置しました。設置から約1年半ほどで229件の相談が寄せられています。

さらに、2022年には群馬県高崎市でヤングケアラーへの生活支援サポーターの派遣を行うようになりました。ヤングケアラーが担っている家事や介護などを派遣サポーターが無料で代行するというサポート内容です。

ヤングケアラーの相談先

1人で悩みを抱え込みがちなヤングケアラーが相談できる場所や人の配置を行っています。ヤングケアラーの主な相談先は、以下の通りです。

  • 学校のスクールカウンセラー
  • ヤングケアラーの支援を行っている民間企業/民間法人
  • ヤングケアラーの支援を行っている日本財団

これらの相談先はインターネットで検索することで、詳しい情報を集めることができます。また、政府が運営するヤングケアラー向け相談窓口として、以下の相談窓口を設けています。困った時は是非、連絡してみてください。

児童相談所相談専用ダイヤル

子どもの福祉に関するさまざまな相談を24時間対応・無料で受け付けています。(TEL:0120‐189‐783)

24時間子供SOSダイヤル

子供についての相談を24時間対応・無料で受け付けています。(TEL:0120‐078‐310)

こどもの人権110番

周りに相談できない子どもからの相談を受け付けています。対応日時と時間は月曜日〜金曜日のAM8:30〜PM5:15までです。(TEL:0120‐007‐110)

他にも、非営利団体が運営するヤングケアラー向け相談窓口として、以下の相談先もあります。

  • 一般社団法人ケアラアクションネットワーク協会
  • 一般社団法人ヤングケアラー協会
  • 特定非営利法人ふうせんの会

お住まいの地域に相談窓口がないか、是非自治体の公式ホームページなどをインターネット検索してみてください。

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社会全体でヤングケアラーを支えることが大事

ヤングケアラー問題は、つい最近ようやく周知されてきたばかりの問題です。まだまだ解決に至っていない事例も多く、現在もより適切な対応策がないか模索中の段階です。まずは一人ひとりの人間がヤングケアラー問題を知り、困っていそうな子どもや学生がいたら声をかけてみてください。ヤングケアラー問題は、社会全体で支え合って解決することが大切です。

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