高齢者介護における問題|日本が抱える超高齢社会の課題とは

#介護の知識

超高齢社会を迎えた日本では、福祉・医療・経済・財政など様々な問題を抱えています。

高齢者が増加する一方で現役世代の人口がどんどん減少しているため、介護の問題が深刻化しているのは周知の事実でしょう。

この記事では高齢者介護における問題である「介護難民」「老老介護・認認介護」「成年後見人トラブル」「虐待問題」について解説します。

介護問題は誰にでも生じます。自らの課題と捉えてこれからの人生を考えてみましょう。

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高齢者介護における問題とは?

令和4年版高齢社会白書」によると、令和4年での総人口に占める65歳以上人口の割合は28.9%です。65歳〜74歳の割合は総人口の14.0%、75歳以上の割合が総人口の14.9%であり、75歳以上人口が65歳〜74歳の人口をわずかに上回っている状況です。

「超高齢社会」とは65歳以上の高齢者の割合が人口の21%を超えた社会を言います。日本では2010年に高齢者の割合が23%を超え、超高齢社会を迎えました。

日本の総人口に占める高齢者の割合は増加の一途を辿っています。一方で出生率は年々減少しているため、介護の担い手が少ない状況が加速しています。

超高齢社会が引き起こす介護問題を詳しくみていきましょう。

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【介護問題】介護難民の増加

超高齢社会では介護難民の増加が喫緊の課題です。

介護難民とは介護が必要であるにもかかわらず適切な介護が受けられない方を指します。

家族や介護サービス事業者から在宅介護が受けられないケースに加え、病院や施設に入れないケースもあります。

その理由の一つが介護業界の人材不足です。

超高齢社会では介護が必要な人の割合が増える一方で、介護の担い手である若い世代の人数が減少しているため人材が不足するのは当然のことかもしれません。

働き手の絶対数が減少しているのはもちろん、その中でも介護職に就きたいと思う人材も不足しています。介護職はハードな仕事内容にもかかわらず給与が低く、他の業界に比べて労働条件などが良くないことも人材不足の理由の一つです。離職率も高く、職員が定着しないためなかなか人手不足が解消されません。

超高齢社会の到来に伴い、介護施設自体は増えています。しかし、要介護者の人数もそれ以上に急速に増えています。さらに施設が増えても働き手の確保が難しいのが現状です。

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【介護問題】老老介護・認認介護の増加

「老老介護」とは高齢者が高齢者の介護を行うことです。また「認認介護」とは認知症の高齢者が認知症の高齢者を介護している状況を言います。平均寿命が延びたことで認知症高齢者の割合も増加しているため、老老介護がさらに深刻化し認認介護が新たな問題となっています。

老老介護・認認介護の増加の要因を詳しくみていきましょう。

核家族化が進んでいる

老老介護・認認介護が増加する原因の一つに、日本人の生活スタイルが変化したことがあげられます。

日本では核家族化で高齢者の一人暮らしや高齢者夫婦の世帯が増えています。高齢者夫婦とその子ども、高齢者のひとり親とその子どもなどの世帯も増えており、超高齢社会では親の世話をするその子ども自体も高齢になっている状況です。

ライフスタイルが多様化した現代では晩婚化が進み、結婚しない選択や子どもを持たない選択なども増えています。

かつての日本では親と子と孫の三世代が同居する世帯も多く見られました。しかし現代では子供や孫が介護をするという環境が少なくなっています。

平均寿命が延びた

医療の進歩により日本人の平均寿命は延びました。厚生労働省による令和元年度の男女の平均寿命と健康寿命は以下の通りです。

男性女性
平均寿命81.41歳87.45歳
健康寿命72.68歳75.38歳
出典:厚生労働省「健康寿命の令和元年値について

健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。平均寿命と健康寿命の差は男性では8. 73年、女性では12. 06年です。つまり、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できない期間が10年近くあり、何らかの手助けが必要な方が多くなることがわかります。

経済的問題から介護が受けられない

経済的な問題から介護が受けられない方も多くいます。介護保険を使えば1割負担で介護が受けられるとは言え、年金生活で生活に余裕がない方も少なくありません。

金銭的に余裕のない方が施設入居を希望する場合は、まず特別養護老人ホームなどの公的施設を検討する方が多いでしょう。しかし、公的施設は費用が安いため希望する方が多く、入居待ちの期間が長いのが現状です。施設での介護が必要になってもなかなか入居ができず、老老介護や認認介護の状況になってしまいます。

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【介護問題】独居高齢者の成年後見人トラブル

判断能力が低下した方を助ける成年後見人制度。認知症などにより理解力・判断力の低下が生じ、日常生活でさまざまな支障が出てきた高齢者にとっては助かる制度ですが、成年後見人にまつわるトラブルも増えています。

成年後見人の役割

認知症などが理由で判断能力が低下している方に代わり、支払いや財産の管理、契約などを行うのが成年後見人の役割です。安心した生活が送れるようにご本人の意思を尊重したサポートが求められます。成年後見人は、財産の使い込みなどの不正があった場合は当然罪になり、刑事責任を問われます。

成年後見人は家庭裁判所により、その方に適任な人が選ばれます。家庭裁判所に全てゆだねられており、希望する方が選ばれるものではありません。身近な家族が担うとは限らず、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることもあります。実際に親族が選任されるケースは全体の20%程度です。

財産が不正に使われるトラブルが多い

高齢者の成年後見人に関するトラブルで多いのが、財産の不正流用です。

親族が後見人に選定された場合、その方の財産と自分のお金との境目があいまいになってしまう場合があります。親のお金だから自分が自由に使っていいものだと認識してしまい、親の財産だという意識が欠如してしまうのです。その結果、財産を使い込んでしまうトラブルに発展してしまいます。

他には、後見人がその役割に対して怠慢になっているというトラブルも。後見人は、家庭裁判所の決定した手数料をご本人の財産から受け取ることができます。後見人にはさまざまな役割がありますが、その役割を果たしていないにもかかわらず、手数料だけ受け取ろうとする後見人がいるのです。後見人の報酬は法律で決まっておらず、財産の内容等を考慮し決められるため、財産を減らさないように管理してしまうケースも考えられます。

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【介護問題】高齢者の虐待問題

介護問題は高齢者虐待の問題も深刻です。虐待の種類には次のようなものがあります。

  • 身体的虐待
    殴る、蹴る、つねる、突き飛ばすなどの暴力で高齢者の身体を傷つけたり痛みを与える行為
    動けないように車椅子やベッドに縛って動けないようにする・鍵のついた居室に隔離する・脱げない服やミトン型手袋を使用させるような身体拘束も身体的虐待に該当する(緊急でやむを得ない事由を除く)
  • 心理的虐待
    怒鳴る・脅す・侮辱する・無視や嫌がらせをするなど言葉や態度で精神的な苦痛を与える行為
  • 経済的虐待
    本人の意思や利益に反した財産の使用。本人の合意なしに財産を使用したり、本人が金銭を使用できないように制限する行為
  • 性的虐待
    本人が同意しない性的な行為、性的な行為の強要
  • ネグレクト
    身の回りのことができない高齢者を放置し、食事をさせない・入浴させない・掃除をしない・必要な介護や医療サービスを使用させないなどの介護放棄
    世話をしない、介護サービスを利用させないことにより生活環境および身体的・精神的状態を悪化させる

在宅生活を続けていると、介護疲れやストレスにより家族が疲弊し、虐待に発展してしまいます。在宅介護の悩みを誰にも相談できず1人で抱え込んでしまうのも虐待を引き起こす理由の一つです。

高齢者虐待は介護する家族の虐待の他にも、介護施設の職員による虐待の報告も増加しています。

介護職は重労働であり身体的な負担が多いのはもちろん、介護現場では認知症の利用者からの暴力や暴言、セクシャルハラスメントなどを受けることがあり、精神的な負担もかかります。これを、仕事だから我慢して対応するのが当たり前のことだとされる風潮があり、精神的なストレスを誰にも相談できない状況で悩みを抱え込んでしまうのです。

いくら仕事であっても介護職員も1人の人間です。ストレスが限界に達してしまうとコントロールができずに虐待に発展してしまいます。

この現状を踏まえ、2006年に「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」が施行されました。外部に開かれた施設を目指すべく地域の住民との交流の機会を設け、介護相談員派遣事業が活用されています。

また、地域住民には「認知症カフェ」などの開催で家族が相談できる場所を設けたり、虐待の通報窓口の周知を強化したりさまざまな対策を講じています。

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介護問題は他人事だと思わないことが大切

今回の記事では「高齢者介護における問題|日本が抱える超高齢社会の課題とは」と題して解説しました。介護問題は他人事ではありません。日本全体が抱える問題で、誰しもに降りかかる問題です。

日本全体が抱える問題とは言え、個人としても知識を持ち対策を講じておくことが大切です。

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