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意外と知らない「介護」と「看護」の違い~役割~
「介護」と「看護」には、高齢者や障がい者へのサポートを行うという共通点があり、その違いは介護、看護の仕事に従事している人でさえ分かっていない人が多いです。
まず、介護と看護には大きな違いとして「役割の違い」があります。
介護の役割
介護の役割は、高齢者や障がいがある方に対して安全かつ快適な介助を提供することです。
その人らしい生活の実現に向けてサポートを行い、ご家族の悩みにも寄り添います。
看護の役割
看護の役割は、病気や怪我がある方に対して療養経過を観察することです。
患者の病状、体調の観察を行い、適切な根拠に基づいた判断で患者の病状回復を目指します。
また、病気への予防ケアや患者、ご家族への心のケアも行います。
意外と知らない「介護」と「看護」の違い~仕事内容~
「介護」は福祉分野で、主に介護が必要な高齢者に対してサポートを担う。
「看護」は医療分野で、主に疾病の治療が必要な患者に対してサポートを担う。
介護職と看護師は分野が大きく異なるため、「業務内容」についても大きな違いがあります。
介護職の業務内容
身体介護
食事、入浴、排泄、更衣、移乗、移動介助など、利用者の身体に直触れて行う介助のこと
生活援助
掃除、洗濯、ゴミ出し、買い物、調理など、利用者の身体に直接触れないお世話のこと。
その他の支援
リハビリや余暇活動、レクリエーション、趣味のサポート、利用者のメンタルケアなど。
看護師の業務内容
医療行為
問診、検温、脈拍数・血圧測定
点滴、注射、採血、与薬、手術の準備、執刀医への器具の手渡し業務など
身体介護
食事・排泄・入浴介助、体位交換、座位訓練、患者移送
観察・環境整備
巡回、ベッドメイキングなど身のまわりの環境整備、担当患者のカルテ記録
ミーティング、カンファレンス、ナースコール対応
意外と知らない「介護」と「看護」の違い ~資格~
「介護」では資格が必須ではなく、未経験や無資格でも働けますが、「看護」では資格が必須です。また、介護分野では専門性を深めるために、無資格者への資格取得が推奨されています。
介護、看護では具体的にどんな資格が必要かご紹介します。
介護の資格
- 介護職員初任者研修(公的資格)
- 介護福祉士実務者研修(公的資格)
- 介護福祉士(国家資格)
- 社会福祉士(国家資格)
- 介護支援専門員(公的資格)
介護職は介護を必要とする方に多様な支援を行う「福祉職」です。
介護の仕事は無資格、未経験でもできますが、介護の基礎知識やスキルを証明すること、
介護職としてのステップアップを目的として資格の取得が位置づけられています。
看護の資格
- 看護師(国家資格)
- 准看護師(公的資格)
- 助産師(国家資格)
- 保健師(国家資格)
看護師は医療を必要とする方に必要な支援を行う「医療職」です。
看護師は医師からの指示で医療行為を担うため、資格が必ず必要です。
看護に必要な資格は公的資格の「准看護師」以外は全て「国家資格」です。
介護と看護両方に関わることができる資格もある
福祉分野、医療分野両方に関わる仕事として、理学療法士・作業療法士が挙げられます。
理学療法士と作業療法士はどちらも医療系の国家資格です。
病院や高齢者介護施設など医療と福祉、両方の分野で活躍し、高齢者や障がい者に対して、
生活レベルを向上させる目的でリハビリを行います。
理学療法士・作業療法士と介護職、看護師の連携により、的確で効果的なケアや疾病の緩和、
治療が目指せます。
理学療法士と作業療法士の違いは?
・理学療法士
高齢者や障がい者に対し、起き上がる、立つ、歩くといった基本的な動作の改善を目標に
リハビリを行います。身体の土台となる部分や、大きな動作に対応します。
・作業療法士
高齢者や障がい者に対し、食事、更衣、入浴などの日常生活動作の改善や、手指の細かい動作の改善を目標にリハビリを行います。応用的な動作や細かい作業に対応します。
看護師と介護福祉士両方の資格取得が楽になる?
介護分野、看護分野共に精通し、高品質なケアやサポートを患者に提供することを目標として、
介護福祉士から看護師へキャリアアップする人もいます。
勤務先の選択肢が福祉施設のみならず、病院やクリニックなど一気に幅広くなります。
現在介護福祉士の資格を保持している人が看護師の国家資格を受験するには、以下の4つの方法があります。
①文部科学省指定の大学または3年制以上の学校に通い、必要なカリキュラムを修了する
②都道府県知事の指定する看護師養成学校を卒業する
③准看護師の免許を取得し3年間実務経験を積み、看護専門学校を卒業する
④准看護師の免許を取得し指定の大学、学校で2年以上就業する
看護師資格の取得には、3年の期間を要するのが一般的です。
しかし、2021年から実施予定となっている共通基礎課程制度では、資格の取得期間を2年に短縮することができると言われています。
「共通基礎課程」とは?
共通基礎課程とは、厚生労働省が検討している看護師資格取得の新しい制度です。
この制度では、医療福祉系の資格で現在別々のカリキュラムの一部が共通知識として受講免除
となり、通常3年かかる看護師資格の取得期間が、介護福祉士からのステップアップであれば2
年になるとされています。
導入時期に関しては、早ければ2021年度に実施見込みとのことですが、2022年現在も
具体的な時期は発表されていません。
共通基礎課程の対象見込みの資格は介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・保育士などの
福祉系資格と、准看護師・理学療法士・作業療法士・視能訓練士・言語聴覚士・診療放射線技師・臨床検査技師などの医療系資格とされており、今後の議論で変更される可能性もあります。
介護士に医療行為はできないのか
医師免許、看護師免許を保持せず、人に医療行為を行うことは医師法により禁止されて
いるため、介護士が医療行為を行うことはできません。
しかし、医療行為とは別で、「医療的ケア」として介護士もできるものがあります。
「利用者にお願いされ、その処置が医療行為なのか判断ができない」
そのような場合は、必ず自己判断せずに医師に相談しましょう。
一部、介護士が実施できる医療行為もあり、今後介護現場の要請により増える可能性が
あるため、最新情報をこまめに確認しましょう。
介護士ができない医療行為
資格の有無を問わず、介護士が以下の医療行為を行うことは禁止されています。
- インスリン注射、血糖測定
- 摘便
- 褥瘡処置
インスリン注射、血糖測定は利用者本人や医師、看護師のみ行えます。
しかし、以下のようなインスリン注射に関するサポートは介護士でも行えます。
インスリン注射を促す声かけ、血糖値測定器と試験紙の準備測定器への試験紙のセット、測定器の針を腹部に刺すための声かけ測定結果を利用者と確認、投与すべきインスリンの量を利用者と確認注射器を利用者に手渡す、注射器を刺すための声かけ、使用済み注射器の片付け
介護士が行える医療行為と処置
以下は法律によって医療行為と定められているものの、介護士が行える処置です。
ただし、利用者の皮膚などに異常があり、医師や看護師による専門的管理が必要な場合、
医療行為に該当するため、実施の際には医師や看護師への報告、確認が必須です。
- 耳掃除、爪切り
- 口腔ケア
- カテーテルの準備や体位の保持
- ストーマのパウチに溜まった排泄物の除去
- 浣腸(使用する浣腸に規定あり)
以下は医療行為ではなく、利用者の病状が安定している場合、介護士が行える処置です。
- 体温計での体温測定
- 自動血圧測定器での血圧測定
- パルスオキシメータの装着
- 軽い傷ややけどなど、専門的な判断や技術を必要としない処置
- 医薬品使用の介助(以下6点)
(1)一包化された内用薬の服薬介助
(2)湿布を貼る
(3)軟膏の塗布
(4)目薬の点眼
(5)座薬の挿入
(6)鼻腔粘膜への薬剤噴霧
研修を受けた介護士が行える医療的ケア
医療的ケアの研修を受けた介護士は、以下2つの医療的ケアの実施が可能です。
実施には医療と介護の連携体制が整っており、本人・ご家族の同意を得ているという条件が必要です。
- 喀痰吸引:器具を使用して口腔、鼻腔、気管の唾液や痰の排出を行う
- 経管栄養:経口摂取が困難な人の胃や腸、鼻腔から栄養剤の注入を行う
それぞれの役割を理解して適切なケアを
介護は「日常生活を安全、快適に送るためのサポート」
看護は「病気や怪我などの治療、療養のサポート」
それぞれに役割や目的を持って利用者、患者へのケアを行っています。
介護と看護、その他医師やリハビリ職などの連携を行ってこそ、利用者や患者の個々の症状に応じた適切な治療やケアが行えます。
介護、看護の連携を円滑にするためにも、それぞれの職種が持つ役割や業務内容の理解、把握が必要です。