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ポータブルトイレとは?
ポータブルトイレは、簡易に設置・持ち運びが可能な介護用トイレのことです。怪我や障害、疾病などによって、これまでのようにトイレでの排泄が難しい方が利用します。普段長い時間を過ごす居室や寝室から、トイレまでの距離が長い場合、移動が大変ですよね。移動に時間がかかり、排泄が間に合わない際に主に使用するのがポータブルトイレです。怪我が治るまでの一時的に使う場合や、脚力が弱まったことによる長期的な使用、ターミナル期のみの使用など、使用期間は様々です。
ポータブルトイレの種類
ポータブルトイレの種類は、大きく分けて4つあります。
プラスチック製標準型は、比較的安価に手に入るポータブルトイレです。軽くて持ち運びが簡易にできる分、やや安定感に欠けるため座位が保てる方に向いています。
木製いす型は、木製なのである程度重量があり安定しています。家具に合いやすいですが、比較的高価なことがネックとなります。傷が生じると、そこについた匂いが取りにくいという難点があります。
金属製コモード型は軽量で、持ち運びしやすいです。無機質なデザインのため、家具に合いにくいです。
スチール製ベッドサイド設置型は、持ち運びしやすく、比較的コンパクトなためベッドの近くでの設置に向いています。汚れてもお手入れがしやすいです。
ポータブルトイレの選び方は?
どの種類が使いやすそうか、機能面では何を重視するか、予算(価格帯)はどれくらいかによって選び方が異なります。また、利用する方の体格に合ったものかどうかの観点も重要です。毎日何度も使うものですので、使い勝手が良さそうか、実際に部屋へ設置した際のイメージを、できる限り具体的にしておきましょう。負担の介助の様子を知っている介護福祉士や、介護支援専門員(ケアマネジャー)、販売店の従業員に相談すると失敗しづらいです。メリットとデメリットの比較が重要なので、ぜひ購入にあたり情報収集をしてみてください。
ポータブルトイレを活用するメリット
トイレまでの移動がネックである場合、ベッドなどの近くに予め置いておくことができるため、尿意・便意を感じてからすぐに使用ができることがメリットです。尿パットの中での排泄は、QOLを下げてしまったり、力みにくいために便秘につながってしまったりするため、トイレに座っての排泄は非常に重要です。ポータブルトイレによって、できるかぎりトイレに座って排泄できる環境をつくりましょう。
ポータブルトイレの機能について
ポータブルトイレは年々進化しています。最低限の機能(排泄し、捨てることができる)から、ウォシュレット付きのもの、自動で排泄物を処理できる最新のもの、家具の一部のように室内に置けるデザイン性の高いもの、折りたたみができて不要な時は収納できるもの、その他にも脱臭消臭、温便座などがあります。例えば、パナソニック社からは肘掛が自動で昇降するものがあります。清潔さを保つためにウォシュレット機能付きは非常におすすめです。予算や必要な機能に応じて製品を選びましょう。
使い方・処理方法は?
ポータブルトイレは、通常は長い時間を過ごす居室内に設置しておくのが一般的です。尿意・便意をもよおしてから、排泄が間に合うような距離に設置しましょう。防水マットの上に設置すると、汚れてしまった時の処理が楽になります。すべり止めシートを併用するのもよいでしょう。ポータブルトイレまで自力、手引き、車椅子で移動し、自力で行えるようであれば、下着を脱ぎ排泄します。(難しいようであれば、横に手すりを設置し掴まってもらい、介助者が手助けします)
居室や寝室にポータブルトイレを設置する場合、留意したいのは被介護者のプライバシーです。トイレと異なり、他の人の視線を遮る必要があります。誰でもすぐに入って来られてしまう心配があると、安心して排泄できません。ポータブルトイレを使用する際には、部屋の鍵をかける、部屋の外にいる人に使用中であることが分かるようプレートをかけるなどの工夫が必要です。また、使用中には、腰回りにタオルをかけるなど、羞恥心に配慮しましょう。できるだけ本人に任せ、できることについては手を出しすぎないことも重要です。介助者が実施した方が早いと思っても、排泄という行為は非常にデリケートとプライベートなものです。たとえ家族であっても、手を出しすぎず、できるだけ本人に任せましょう。拭き残しがあると衛生的によくないため、ウォシュレット機能がついている場合は積極的に使用しましょう。
排泄後は、介助者がタンクに溜まった排泄物を処理します。排泄物はトイレに流し、タンクを洗いましょう。毎回手入れをしないと、匂いがついてしまい居室に設置しておくことが苦痛となる場合もあります。処理の手間を軽減できるポータブルトイレもあります。水洗型は、一般的なトイレ同様ボタンを押すと洗い流せるものです。配管工事が必要なため、いくつかの部屋で持ち運びして利用したい場合には不向きです。バイオ型は、微生物が排泄物を分解し無臭化するものです。ラップ式は、自動的に排泄物をラップで包み、匂いがでないようにしてくれます。こちらは、負担感が少ないですが他のポータブルトイレに比べ高額です。
ポータブルトイレの使用にあたって、介護者に排泄物の処理をさせてしまうことに、被介護者が罪悪感を覚えてしまうことが多々あります。その結果、排泄の回数を減らすために水分の摂取を控えてしまうケースがあります。排泄が滞ると、身体への悪影響があり、持病の悪化や熱中症に繋がるため、そのようなことがないよう、被介護者の心理的変化について、使用開始後には特に留意が必要です。そういった意味でも、もし予算的な余裕があれば、排泄物の処理に手間がかからないタイプのポータブルトイレを選ぶとよいかもしれません。
購入方法は?介護保険の適用は可能?
ポータブルトイレは、福祉用具の販売を行う店舗またはインターネットなどで購入可能です。
また、ポータブルトイレを含む腰掛便座は、「特定福祉用具」の対象種目になり、特定福祉用具販売事業所から購入すれば介護保険が適用されます。金銭面の負担が軽減できるため、介護認定を受けている場合には特定福祉用具販売事業所からの購入をおすすめします。介護保険適応対象の介護用具(福祉用具)であるポータブルトイレの場合、年間10万円を上限として1割の負担で購入することができます。(年度内の介護保険を使用した商品購入は原則として受給者1人につき1回です。)市区町村での独自の補助がある場合もあるため、詳しくは市区町村の窓口や担当の介護支援専門員に相談しましょう。
手順としては、まず介護支援専門員に相談し、商品を決定します。設置後支払いし、領収書を福祉用具店から受け取ったら、市区町村の申請書を記載し、必要書類を添付して提出します。審査の後、口座に還付金が振り込まれます。
心身機能や用途に合わせて快適に利用しましょう
ポータブルトイレは、自身でトイレ排泄することを助ける福祉用具です。足腰が弱くなっても、自身で排泄できることは、自尊心を維持する上でとても重要です。トイレが間に合わなくなってしまったからパッドを使おう、オムツにしよう、ベッド上で交換しようとするのではなく、可能な限りトイレでの排泄が望ましいです。排泄は日常で何度もある動作なため、自身にとっても介助者にとっても負担感が大きいです。互いの生活が維持し、快適に過ごすためにも、状況にあったポータブルトイレの使用を検討してみてください。