介護の知識

介護のポジショニングとは?寝たきりや拘縮に最適なクッション選びのポイントを解説!

介護におけるポジショニングとは?

人は寝たきりになり、長時間同じ体勢のままでいると拘縮や浮腫、呼吸機能の低下など、治療に

時間を要する症状が起こります。

特に、拘縮は進行に伴って関節が一切動かなくなり、寝たきり状態を悪化させます。

ポジショニングは、そのような身体症状の進行を防ぐことが最大の目的です。

ポジショニングを行い、手足の浮腫や関節の拘縮などを緩和させることで、姿勢の安定や、呼吸

のしやすさが保たれます。

また、ポジショニングには体重の分散や、身体機能の活性化を目指す役割もあるのです。

寝たきり状態の人や介護度が高い人の身体へのストレス軽減として、大きな役割を果たします。

ポジショニングの目的

介護におけるポジショニングの目的には、以下のようなものがあります。

  • 関節拘縮と関節変形の予防
  • 褥瘡(床ずれ)の予防
  • 筋緊張の緩和と調整
  • 呼吸のしづらさの改善
  • 手足の浮腫の改善
  • 日常生活や活動の向上

寝たきりになり、関節を動かさないことで関節が固まり、変形してしまう。

そして、長時間身体の一箇所に体重がかかることで皮膚に炎症が起こってしまう。

さらには、長時間同じ姿勢でいることで血流が悪くなり、手足がむくんでしまう。

こういった身体トラブルの予防や軽減のため、ポジショニングではクッションをかませます。

クッションを身体の各部位にかませることで、筋肉の緊張を取り除いて拘縮や褥瘡、浮腫の改

善、予防が実現します。

また、クッションで体勢を整えることにより、呼吸のしにくさも改善できるのです。

ポジショニングは、筋肉の強張りや関節の拘縮を抑え、血流を促す目的もあるのです。

個々の身体状況に応じてポジショニングを行うことで、身体機能の改善を図ります。

長時間同じ姿勢で寝ることによる影響

長時間同じ姿勢で過ごすことによって、拘縮や浮腫などの悪影響が生じます。

具体的にそれらはどのような症状なのか、身体トラブルの症状についてご紹介します。

拘縮 <症状>・肩、股関節、膝、肘などの関節が動きにくい、または一切動かない・屈曲拘縮では、関節が曲がったままの状態で固まり、伸びない・伸展拘縮では、関節が伸びたままの状態で固まり、曲がらない
<生じる要因>関節には、骨と骨を動く状態に繋ぐ軟骨や筋などの組織があります。それらの組織が長時間動かないことで変化し、関節が動かなくなるのです。
浮腫 <症状>・筋肉の収縮が無くなり、血流が悪くなった状態・全身がだるくなったり、疲れやすくなる・慢性化することで「下肢動脈瘤」などの血管の病気を起こす
<生じる要因>身体を動かすことが減ると、筋肉の動きも比例して減ってしまいます。それにより、手足の血液が心臓に戻りにくくなることで浮腫が生じるのです。
褥瘡(床ずれ) <症状>・血流が悪くなり、筋肉や皮膚組織が崩れてしまう・赤みやかぶれなどのスキントラブルが生じる
<生じる要因>褥瘡は床ずれとも呼ばれ、身体の一箇所に体重がかかることが要因で生じます。長時間同じ姿勢で寝ることによって、身体が圧迫されて血流が悪くなるのです。
呼吸機能の低下 <症状>・心臓のポンプ機能が低下し、心不全になるリスクが上がる・全身の酸素不足や、呼吸機能の低下、呼吸困難を引き起こす
<生じる要因>円背や、筋肉が強張った状態で長時間過ごすことで、呼吸がしづらくなります。そのため、酸素を取り込む機能が低下し、体内の酸素不足が生じるのです。
呼吸器の感染症 <症状>・飲食物や胃ろうなどで使用する経管栄養剤により誤嚥性肺炎を起こす・痰や唾液などが気管、肺に流れ込み、感染症を引き起こす
<生じる要因>寝たきりにより、身体機能が低下することが大きな要因です。身体機能や免疫力が低下することで、誤嚥や呼吸器感染症が生じます。

介護におけるポジショニングの具体例

ポジショニングの具体的な方法は、その方の身体状況や解決したい悩みによって異なります。

症状の悩みに合わせ、その悩みを解決するためのポジショニングが重要です。

以下では、拘縮の症状に合わせたポジショニングの具体例をご紹介します。

「神経性拘縮」のポジショニング

「神経性拘縮」で多くみられる症例は、脳梗塞・脳卒中発症の後遺症により、左右どちらかの

上下肢に麻痺があるといったケースです。

日常生活動作では、麻痺側を支えるために首や体幹が常に緊張している状態になること。

また、椅子や車椅子に座っていると、麻痺側に傾く症状が見られます。

脳血管障害で片麻痺の後遺症が残ることや、麻痺の度合いは個人によって異なります。

<「神経性拘縮」のトラブルとポジショニング方法>

トラブル片麻痺により、麻痺側の臀部に感覚がないため、健側に寄って座っている。
注意点長期間この姿勢で座ることによって、健側の臀部に褥瘡ができるリスクがある。
解決方法健側の臀部が当たる椅子・車椅子の座面に、折りたたんだバスタオルを入れる。
効果健側の座面を少し高くすることで姿勢が楽になり、褥瘡予防に繋がる。

「筋性拘縮」のポジショニング

「筋性拘縮」で多くみられる症例は、寝たきりによる廃用症候群により、両手足の関節が動かな

い、首や下顎などを自分で動かすことも難しいといったケースです。

「筋性拘縮」は、疾患や障害の有無を問わず、「寝たきり状態が続いていること」が特徴です。

寝たきり状態になると自分で動くことが難しいだけではなく、痰や唾液などを誤嚥し、呼吸器感染症を引き起こすリスクも高まります。

<「筋性拘縮」のトラブルとポジショニング方法>

トラブル 仰向けでの寝たきり状態により、臀部や背面の筋肉に負担がかかる。
注意点 長期間この姿勢で寝ることによって、臀部や背部に褥瘡ができるリスクがある。また、自分で首が動かせないため、唾液を誤嚥し、肺炎を起こすリスクもある。
解決方法 身体を横に向け、背部と首にクッションをかませる。また、ネックピローを用いて首や頭部の安定を図る。
効果 身体を横に向けることで、臀部や背部に圧がかかることを防げる。また、クッションによって身体や頭部が安定し、姿勢が楽になる。

ポジショニングを行う際のポイント

ポジショニングを間違った方法で行うと、身体に苦痛を与え、症状を進行させてしまいます。

そのため、利用者の身体状況をしっかり把握することはもちろん、以下のようなポイントに注意

してポジショニングを行う必要があります。

①体軸を整える

身体の軸がゆがむと、腰や手足などの身体の一部に負担がかかって筋緊張や痛みが生じます。

そのため、肩から腰骨の一直線、脊椎がまっすぐ垂直になっていることを確認しましょう。

②身体のすき間を埋める

足首の一点にクッションを入れると、クッションで支えていない腰に負担がかかります。

身体とベッド、身体と椅子とのすき間は必ず埋めるようにクッションを活用しましょう。

③声かけ、確認を徹底する

ポジショニングの際には、身体を動かす都度、苦痛がないかを確認することが大切です。

声かけ、確認を行うことで本人と意向が確認でき、ポジショニングがスムーズに行えます。

どんなことに注意して行う?

ポジショニングでは、「力任せに行わないこと」と「無理に伸ばさないこと」が大切です。

力任せに手足を伸ばすと痛みが生じ、身体への負担が大きくなります。

ポジショニングを行う際には、膝関節を一度曲げてから伸ばすなど、リズムをつけて関節の曲げ

伸ばしを行うことで、スムーズに関節が開きやすくなります。

力任せに行うのではなく、まずは身体が動きやすくなるコツをきちんと理解しましょう。

身体に合ったクッションの選び方

・寝たきりの場合

頸部を安定させるネックピロー、背中や太もも、ふくらはぎに挟む大きなクッションなど。

身体のベッドの隙間を埋めて姿勢を安定させます。

・手や指先の拘縮がある場合

反発力があるボール、ハンドタオルを小さく折ったものなど。

握れるものの反発力によって、指を開きます。

ポジショニングで使用するクッションなどは個人に合ったものを選ぶ必要があります。

そのため、作業療法士や理学療法士によるアセスメントや指導の元行うことが適切です。

身体の状態に合わせたポジショニングの計画を

介護では、寝たきりの人や拘縮のある人のケアを行う機会が多くあります。

ポジショニングに関する正しい知識があることで、その方に適切なケアの選択肢が広がります。

利用者個々の身体状況に合った適切なポジショニングにより、拘縮や浮腫などの症状悪化をくい

とめることも実現するのです。

適切なポジショニングで、要介護者の活動しやすい環境を作ることにも繋がります。

ポジショニングの必要性を理解し、深い知識を身につけることをオススメします。