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介護のレセプト業務とは?
介護事務のレセプト業務とは、介護サービス提供費用の請求書を作成することです。
しかし、介護サービス費用を支払うのは、介護サービスを受けた利用者だけではありません。
利用者は介護サービス費用の1〜2割を自己負担しますが、残りは介護給付費として国が支払います。
そのため、レセプト業務では「国」と「介護サービスを受けている利用者」の双方へ介護報酬の請求業務を行います。
レセプト業務では、サービス提供月の翌月10日までに請求しなければ支払いが行われません。
介護報酬請求書は期限を過ぎて提出を行うと、介護事業所の収入に大きな支障をきたします。
レセプト業務を行うためには短期間で的確な作業を集中してこなすことと、介護保険や介護報酬に関する専門的な知識が必要とされています。
レセプト業務で扱う明細書、請求書について
レセプト業務では、介護サービス費用を利用者本人と国民健康保険団体連合会(以下、国保連)に請求します。
国保連への請求は、介護事業所からデータとして提出するのが基本です。
- 介護事業所、介護施設では「介護給付費請求書」と「介護給付費明細書」
- 居宅介護支援事業所では「給付管理票」と「居宅介護支援介護給付費明細書」
レセプト業務で扱う明細書、請求書は事業所の種別によって異なります。
しかし、請求の流れとしては事業所の種別が違っても一律同じです。
介護サービスを提供した月の翌月1日〜10日までの期間に請求データを作成し、国保連へ提出。
審査が通れば支払いが行われるという流れです。
請求に関する年間スケジュールにおいては毎年、各都道府県の国保連からスケジュール表が発行されるため、しっかり確認を行います。
レセプト業務で扱う「介護給付費請求書」と「介護給付費明細書」の違い
介護サービスを提供する介護事業所が国保連へ提出する請求データには、「介護給付費請求書」と「介護給付費明細書」の2種類があり、違いについては以下の通りです。
- 介護給付費請求書:月に行った介護サービス件数や単位数を集計する
- 介護給付費明細書:介護給付費の内訳として、本体報酬や加算を利用者ごとに細かく記載
また、居宅介護支援事業所では「給付管理票」と「居宅介護支援費請求明細書」を作成します。
- 給付管理票:月に利用予定の介護サービスの内容と、実際に実施された内容を記載
- 居宅介護支援費請求明細書:介護給付費の内訳として、本体報酬や加算を利用者ごとに細かく記載
作成した請求データは介護ソフトを使ってインターネット経由で国保連に送信します。
請求データに誤りがあると、介護報酬の支払いが行われませんので細心の注意が必要です。
レセプトの返戻とは?
「レセプトの返戻」とは、国保連に送信した請求データに誤りや不備があった場合、請求元の介護事業所に請求明細書等が戻されることを言います。
レセプトの返戻が行われた月は、事業所に支払いは行われません。
よって、その月に介護事業所に入る報酬が少なくなってしまいます。
レセプトの返戻が行われる理由は、データ入力の誤りや重複請求などの小さなミスが大半です。
不備の修正を行い、再度請求をすることで、審査が通れば翌月に支払いが行われます。
しかし、再請求せず放置してしまうと国保連からの支払いは一切行われません。
月遅れ請求とは?
「月遅れ請求」とは「サービス提供月の翌月10日まで」と定められている請求期限に何らかの理由で間に合わなかった場合、翌月以降の月で請求を行う方法です。
- 送信した請求データに誤りがあり、返戻として戻ってきた請求データを修正、再提出する
- 利用者の要介護認定区分の変更や更新申請が請求データ作成までに間に合わなかった
上記のような理由で期限内に請求データの作成を行うことができなかった場合、月遅れ請求として翌月以降の介護報酬請求と合わせて請求できます。
しかし、月遅れ請求には2年間という時効があり、請求データを作成して2年間放置しておくと請求・再請求ができなくなってしまいます。
月途中で要介護区分が変更になった場合は?
介護サービスを利用している利用者の要介護状態は常に変化するものです。
病気の発症や、転倒による怪我で心身機能が低下してしまった。
もしくは、これまで怪我によってトイレに行けなかったが、リハビリを行って自分で歩いてトイレに行けるようになったなど。
そのような心身機能や日常生活動作の変化で要介護状態の区分変更が必要になります。
もし、月の途中で要介護認定の区分変更を申請した場合、結果が出るまで介護報酬の請求はストップされます。
そして、要介護認定の区分変更の結果が出てから請求が行えるようになります。
また、要介護認定の区分変更後は変更後の介護度に合わせて請求を行うため、間違えて変更前の介護度で請求を出すとレセプトが返戻されてしまうので要注意です。
レセプト業務に資格は必要?
レセプト業務では、介護福祉士などの介護に関する資格は必要ありません。
しかし、介護事業所の収入に関わる非常に重要な業務なため、経験や知識が必要です。
レセプト業務に必要な資格はありませんが、介護保険制度や介護報酬請求に関する基礎知識は必要なため、資格取得者や専門知識保有者は優遇されやすいでしょう。
- 介護現場で介護職員として働いた経験がある
- 介護福祉士や社会福祉士、ケアマネジャーの資格を保持している
- 資格は持っていないが、介護に関する講習を受けて介護事務の仕事を経験したことがある
上記のような人は介護事務で即戦力として活躍できます。
また、締め切りがある中で請求データを作成する正確さとスピードが求められます。
パソコンや数字の扱いが得意で、期間内に作業を完結できる力が必要です。
レセプト業務に向いている人・向いていない人
介護事務やレセプト業務に向いている人の特徴や、逆に向いていない人の特徴をご紹介します。
介護事務では的確で間違いのない請求データの入力や、利用者やそのご家族などへの連絡や対応も必要になります。
そのため、事務スキルや介護に関する知識、コミュニケーション能力が重要視されます。
自身の性格や得意分野が介護事務の仕事に合っているか、今一度確認してみてください。
介護事務に向いている人
・介護に興味があり、介護に関する知識への探求心が強い人
介護事務の仕事は資格不問ですが、介護保険や介護報酬などの知識が必要です。
そのため、介護への関心が高いことや、勉強会や研修への参加を通じての成長が必要です。
介護事務として必要なスキルや知識の研鑽に励む向上心の強い人は、介護事務に向いています。
・デスクワークが得意な人
介護事務の仕事ではパソコンの基本的な操作が行えることはもちろん、1日中パソコンに向かうことが苦にならないことが求められます。
データ入力や書類整理などの作業を丁寧に行うことが得意な人は、介護事務に向いています。
・コミュニケーション能力が高い人
介護事務の仕事では、利用者への対応や面会されるご家族、その他来客への対応が必須です。
そのため、一般的な事務スキルに加えて丁寧なコミュニケーションが求められます。
また、関係各所への連絡も必要なため、連絡のスピーディーさも求められる傾向が強いです。
介護事務に向いていない人
・計算が苦手な人
介護事務では、介護報酬や従業員の給与の計算などを担います。
そのため、計算が苦手で、計算間違いをしやすい人は向いていません。
小さなミスが介護事業所の収益を左右する大問題に繋がるリスクがあります。
・管理能力がない、スケジュール管理が苦手な人
介護事務の仕事は、介護報酬の請求や従業員の給与計算など、期限がある業務を担います。
そのため、管理能力が低くて、自身のスケジュール管理も苦手だという人には向いていません。
介護事務では、決められた期限内でコツコツと仕事に取り組めることが重要視されます。
レセプト業務は集中力・丁寧さが鍵
レセプト業務では、請求データを間違いなく、期日内に作成することが求められます。
丁寧さとスピードが求められることで、担当者には大きな負担がかかるのも事実です。
介護保険制度や介護報酬に関する知識が豊富であることはもちろんのこと、丁寧に集中して1つの作業をこなすことも大切です。
請求データの作成では、小さなミスが介護事業所の収入に大きな影響を与えます。
ストレスや負担の多い仕事だからこそ、自身のストレス発散やリスクマネジメントにしっかり気を配り、業務に取り組む必要があります。