介護の仕事は長続きしない?介護離職の原因・介護離職防止の制度を解説

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介護の仕事は離職率が高い?

介護離職とは、介護職が仕事での疲れや負担、仕事と私生活との両立困難などを理由に、介護の仕事を辞めてしまうことを言います。

近年、高齢化による要介護高齢者の急増に伴い、40代~50代の介護職の家族が要介護になるケースが増加しています。

家族介護と仕事との両立が困難になって退職する介護職の多くは、勤続年数が長く、介護主任や管理職などの役職についている方が大半です。

また、「体力的・精神的に疲れたから」「出産・育児が必要になったから」などの理由で退職する介護職も増加しています。

大きな人手不足問題を抱えている介護業界で、介護職が家族介護や育児と両立しながら長く働けるよう、国は様々な施策を講じています。

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介護離職の現状について

「私生活の育児・介護と仕事の両立が難しい」「仕事での体力的負担が大きい」などの理由で退職する介護職はどのくらいいるのか。また、介護現場の介護離職率は年ごとにどのように移り変わっているのか。

介護離職の現状についてご紹介します。

介護離職者数と介護離職率の推移

厚生労働省の「雇用動向調査」では、2020年の介護離職者数は約7万人、介護離職率は約1%と報告されています。

介護離職者数においては2018年・2019年にピークである約10万人を突破し、過去10年間と比較すると、約2倍に増加しています。

2020年の介護離職者数が約7万人であることから、介護離職者数は減少傾向です。また、介護離職率においては2010年以降、上昇し続けており、2013年には1.3%に急増しています。その後も高水準でしたが、2020年には「1%」まで下がっています。

介護離職者の性別・年齢比率

家族に介護・看護が必要になり、離職した介護職の性別・年代は以下の通りです。

男性女性
最多の年代65歳以上65歳以上
次に多い年代35から39歳40から44歳60から64歳55から59歳

家族に介護・看護が必要になり、離職した介護職はどの年代も女性の方が多い傾向です。また、男性よりも女性の方が、一定の年齢層で介護離職しています。

介護職が離職する理由・原因

介護職が離職する理由・原因には、以下の5つがあります。

  • 肉体労働による体力的負担が大きく、家庭との両立が難しい
  • 職場の人間関係に悩み、精神的負担を感じた
  • ハードな仕事内容に対して、給与が安い
  • 昇給や昇進が期待できず、将来的な不安を感じた
  • 私生活で家族の介護または育児が必要になり、仕事との両立が難しいと感じた

特に、介護職が「給与の低さ」や「仕事での将来的な不安」に不満を感じやすいのは、人手不足により人材育成や、職員の評価に手が回っていないことが背景にあります。

介護業界は慢性的に人手不足を抱えているため、解決・改善が難しいことも現状です。

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国が行っている介護離職防止対策

介護職の離職防止対策として、厚生労働省が「介護離職を予防するための仕事と介護の両立支援対応モデル」を立案しています。

これは、家族の介護や育児と、仕事を両立させる介護職を支援するために、厚生労働者が5つの取り組み事例を提示したものです。

厚生労働省が定めた介護離職防止のための取り組みを5つご紹介します。

介護職の「家族介護」や「仕事と私生活の両立」に関する実態把握 

介護職の離職を防止するには、まず介護施設が介護職の「仕事と私生活の両立の状況」や「家族に介護または育児が必要な人がいるか」を把握することが重要です。

介護施設内でのアンケートの実施や、上司による介護職への個人面談を行うことによって、以下のような内容を把握します。

  • ・介護職の家庭状況(家族に介護が必要な高齢者・育児が必要な子供がいるか)
  • ・介護職一人ひとりの介護休暇や育児休暇、福利厚生制度などに関する認知度
  • ・介護職が抱える職場の労働条件(労働時間・休暇・残業など)への不満

介護休業・育児休業の制度見直し

介護職の「家族介護」や「仕事と私生活の両立」に関する実態調査から得た課題を基に、介護休業制度・育児休業制度の見直しを行います。

介護職が働きやすい労働環境を作り、介護離職を防止することを目的とし、介護施設では以下の点を踏まえて介護休業・育児休業の制度を見直します。

  • 介護施設の介護休業制度・育児休業制度の詳細を介護職が理解できているか確認する
  • 介護施設の介護休業制度・育児休業制度の利用手続きが分かりやすく、簡単であるか
  • 介護施設の介護休業制度・育児休業制度が介護職の家庭状況に合った支援内容であるか

家族介護を担う可能性がある介護職への支援 

実態調査により、「家族に介護が必要になる可能性がある」と回答した介護職は、具体的に家族介護が必要になる時期が予測できません。

そういった場合にも、介護施設は介護職員へ適切なアドバイスや支援を行います。具体的なアドバイス・支援の内容は以下の通りです。

  • 介護施設で行っている「介護休業制度」の利用に関する周知
  • 介護施設が「仕事と介護の両立」を支援する方針を揚げていることの周知
  • 家族に介護が必要になった場合に利用できる相談窓口や介護サービスに関するアドバイス

現在、家族介護を担っている介護職への支援 

実態調査により、「現在、家族の介護を担っている」と回答した介護職は、家族介護と仕事が上手く両立できず、離職を選ぶ可能性があります。

介護離職につながらないよう、家族介護と仕事の両立を行いながら、中長期的に働くための適切なアドバイスや支援を行います。具体的なアドバイス・支援の内容は以下の通りです。

  • 介護休業制度や家族介護で利用できる相談窓口・介護サービスに関するアドバイスを行う
  • 周囲の職員に対し「家族介護」の周知を行い、理解を促す
  • 短時間勤務や仕事の中抜けなど、勤務時間・勤務日数の調節を行う

介護職の働き方改革 

介護業界では、介護職の離職防止のために以下のような職場環境の改善を推奨しています。

  • 長時間労働やサービス残業の撲滅
  • 介護職への有給休暇取得の呼びかけ
  • 個人の家庭の事情を理解し合える職場環境づくり

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介護離職防止のための助成金制度

介護職が家族の介護または育児と仕事を両立しながら、中長期的に働き続けられるよう、厚生労働省が「両立支援等助成金」の支給を行っています。

両立支援等助成金とは、従業員の介護離職防止に取り組む中小企業の事業主に国が支給する助成金です。

両立支援等助成金の申請が通れば、介護職の介護休業取得時や職場復帰時、介護両立支援制度利用時に、それぞれ28.5万円の助成金が支給されます。

以下では、助成金を活用した介護離職防止の取り組みを2つご紹介します。

「両立支援等助成金」の受給による介護休業の促進

介護サービスを提供する中小企業が両立支援等助成金を受給することで、介護職の「家族の介護または育児と仕事との両立不可」による離職が防止できます。

両立支援等助成金の支給により、実現できる介護離職防止に向けた具体的な取り組みは以下の通りです。

  • 家族の介護または育児に悩み・不安を抱える介護職の相談窓口の設置
  • 会社の介護休業制度・育児休業制度の詳細を記載したリーフレットの配布
  • 家族の介護または育児と仕事を両立するためのアドバイスを行う社内研修の実施
  • 家族の介護または育児で休業中の職員の分も業務を行えるよう、事前に人材を確保し、適切な人員配置で業務を分担する
  • 日頃から「ノー残業」や「会議時間の短縮」を徹底し、職員が休暇をとりやすい職場環境を整えておく

助成金の活用により、短時間労働者の雇用を積極的に行ったり、休業中の職員の分もカバーできるだけの人材確保が可能になります。

「両立支援等助成金」の受給による柔軟な働き方改善

家族の介護はいつ必要になるか予測ができません。

慢性的な人手不足を抱えている介護業界では、介護職が「今でも残業ばかりなのに、家族に介護が必要になったらどうしよう」という不安を抱えがちです。

また、私生活で結婚や出産、育児などのライフステージの変化が生じた場合、今の仕事との両立が難しいと不安を抱える介護職も少なくありません。

両立支援等助成金の支給により、実現できる介護職の働き方改善は以下の通りです。

  • 家族の介護や看護、子供の育児などを担う介護職に看護休暇(有給)の取得を促す
  • 短時間での家族介護や育児を担う介護職に中抜け制度(無給)の利用を促す
  • 私生活で引っ越しが必要になった介護職に引っ越し代の支援を行う

助成金の活用により、介護職一人ひとりの私生活をサポートすることが可能になり、仕事が円滑に行えるようになります。

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制度や防止策の整備で介護職の離職を防ぐ

高齢化による要介護高齢者の急増により、介護業界は人材の確保が追いついていません。そのため、「サービス残業を強要される」「家族の介護や育児で有給休暇がとりにくい」といった悩みを抱える介護職は少なくありません。

介護離職を防ぐには、介護施設が「介護離職の防止に向けた取り組み」や、「介護休業制度・育児休業制度の見直し」を行うことが重要です。

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