介護の現場で耳にする「ADL」とは?評価指標や介護予防の方法と一緒に紹介

#介護の知識

「ADLってなに?」「介護とどんな関係があるの?」
介護の現場でよく耳にする言葉「ADL」。

聞いたことはあるけれど、内容までは知らないという人も多いのではないでしょうか?

今回は「ADL」について、介護予防のポイントも交えながらご紹介します。

    この記事を読んでわかること

  • ADLとはなにか
  • ADLの評価方法
  • ADLの低下を予防する対策

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介護に必要な概念「ADL」とは

「ADL」は「Activities of Daily Living」の略称です。日本語での意味は「日常生活動作」。

移動や食事といった、人が日常生活を送るのに必要な基本的動作です。

ADLは以下の2種類に分けられます。

  • 基本的日常生活動作(basic ADL=BADL)
  • 手段的日常生活動作(instrumental ADL=IADL)

一般的にはADL=BADLとして認識されています。

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ADLの具体的な動作

以下の生活動作がADLに分類されます。

  • 移動(歩行、階段昇降)
  • 入浴(ひとりで浴槽に入れる)
  • 食事(嚥下の状態、自力での食事)
  • 着衣(自分で着替えられる)
  • 排せつ(トイレに行ける、おむつの必要性)

ADLはどのように評価するのか

ADLを評価する際は、「FIM(Functional Independence Measure)」という指標を使います。

ADLを「運動項目」と「認知項目」の2つに大きく分類。それぞれのなかで細かい採点基準を設定し、介助が必要な度合いを点数であらわします。

点数が高いほどADLが高く、介助を必要としない「自立」に近い状態 と判断できます。

以下がFIMの評価項目と採点基準です。

運動項目 認知項目
セルフケア

食事
整容
清拭
更衣(上半身)
更衣(下半身)
トイレ動作

コミュニケーション 理解(聴覚・視覚) 表出(音声・非音声)
排せつ 排尿コントロール
排便コントコール
移乗 ベッド
いす
車いす
トイレ
浴槽・シャワー
社会認識 社会的交流
問題解決
記憶
移動 歩行・車いす
階段

※横スクロールで全体が見れます。

自立 7点 完全自立
6点 修正自立
部分介助 5点 監視
介助あり 4点 最小介助
3点 中等度介助
完全介助 2点 最大介助
1点 全介助

※横スクロールで全体が見れます。

(参照:厚生労働省 (参考)日常生活動作(ADL)の指標 FIMの概要

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ADLの低下を予防するために大切なことは

ADLの低下を防ぐためには、介護予防の考え方が大切です。

以下は、厚生労働省による介護予防の考え方。

介護予防は、高齢者が要介護状態等となることの予防や要介護状態等の軽減・悪化の防止を目的として行うものである。特に、生活機能の低下した高齢者に対しては、リハビリテーションの理念を踏まえて、「心身機能」「活動」「参加」のそれぞれの要素にバランスよく働きかけることが重要であり、単に高齢者の運動機能や栄養状態といった心身機能の改善だけを目指すものではなく、日常生活の活動を高め、家庭や社会への参加を促し、それによって一人一人の生きがいや自己実現のための取組を支援して、生活の質の向上を目指すものである。

(引用:厚生労働省 介護予防の推進について

「生きがい・役割をもち、地域社会と交流できる環境づくり」を実践しましょう。

また、自宅の環境やサポートの仕方を考え、高齢者がもつ能力を引き出すことも、ADL低下の防止につながります。

  • 地域のボランティアに参加する
  • バリアフリーのリフォームを検討する
  • 高齢者が自分でできることは、極力見守る

上記のほかにもできることを考え、身体機能の維持・向上を目指しましょう。

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ADLより高度な判断を要する動作「IADL」

「IADL」は、「Instrumental Activities of Daily Living」の略称。

「手段的日常生活動作」という意味で、買い物や金銭管理といった日常生活における複雑な動作をあらわします。

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IADLの具体的動作

以下の動作はIADLに分類されます。

  • 掃除
  • 食事の支度
  • 洗濯
  • 買い物
  • 交通機関の利用
  • 電話の使用
  • 服薬の管理
  • お金の管理

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IADLはどのように評価するのか

IADLの評価には「Lawtonの尺度」を用いることが多いです。
日常生活における複雑な動作を8つに分類し、それぞれに採点基準を設定。

FIMと同じく、点数が高い方ほど「自立」の状態に近いと判断できます。

以下は「Lowtonの尺度」の採点基準です。

項目 採点
A 電話を使用する能力
1 自分で番号を調べて電話をかけることが出来る 1
2 2、3のよく知っている番号であればかけることが出来る 1
3 電話には出られるが自分からかけることは出来ない 1
4 全く電話を使用出来ない 0
B 買い物
1 すべての買い物を自分で行うことが出来る 1
2 少額の買い物は自分で行うことが出来る 0
3 誰かが一緒でないと買い物が出来ない 0
4 全く買い物は出来ない 0
C 食事の支度
1 自分で考えてきちんと食事の支度をすることが出来る 1
2 材料が用意されれば適切な食事の支度をすることが出来る 0
3 支度された食事を温めることは出来る、あるいは食事を支度することは出来るがきちんとした 食事をいつも作ることは出来ない 0
4 食事の支度をしてもらう必要がある 0
D 家事
1 力仕事以外の家事を1人でこなすことが出来る 1
2 皿洗いやベッドの支度などの簡単な家事は出来る 1
3 簡単な家事はできるが、きちんと清潔さを保つことが出来ない 1
4 全ての家事に手助けを必要とする 1
5 全く家事は出来ない 0
E 洗濯
1 自分の洗濯は全て自分で行うことが出来る 1
2 靴下などの小物の洗濯を行うことは出来る 1
3 洗濯は他の人にしてもらう必要がある 0
F 交通手段
1 1人で公共交通機関を利用し、あるいは自家用車で外出することが出来る 1
2 1人でタクシーは利用出来るが、その他の公共輸送機関を利用して外出することは出来ない 1
3 付き添いが一緒なら、公共交通機関を利用し外出することが出来る 1
G 服薬の管理
1 自分で正しい時に正しい量の薬を飲むことが出来る 1
2 前もって薬が仕分けされていれば、自分で飲むことが出来る 0
3 自分で薬を管理することが出来ない 0
H 金銭管理能力
1 家計を自分で管理出来る(支払計画・実施が出来る、銀行へ行くこと等) 1
2 日々の支払いは出来るが、預金の出し入れや大きな買い物等では手助けを必要とする 1
3 金銭の取り扱いを行うことが出来ない 0

※横スクロールで全体が見れます。

(参考:日本老年医学会 手段的日常生活動作(IADL)尺度

男性の場合、以前はC、D、Eの項目は対象外でしたが、現在では男性も8項目で評価することが推奨されています。

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IADLの低下を予防するために大切なこと

身体機能の低下によりIADLは下がります。

介助のし過ぎが身体機能の低下につながる場合も。

下の図をご覧ください。

このように、高齢者が自分で体を動かす機会を奪ってしまうと、体がどんどん衰える悪循環に陥ってしまいます。

身の回りのことを付きっきりでサポートするのではなく、高齢者が自分でできることは見守りながら、能力を最大限引き出せるようサービスを提供しましょう。

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ADLを正しく理解し高齢者の自立支援をしよう

ADLの評価ポイントを理解することで、介護予防に役立てられます。

日頃から自分で体を動かすのが、ADLの低下を防ぐために重要なこと。

必要な部分は適切にサポートしながら、高齢者の能力を引き出す介助を行いましょう。

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