介護でのアセスメントシートの書き方は?事例に合わせた記入例やポイントを解説!
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目次
アセスメントシートとは?
アセスメントシートとは文字通り「アセスメントの様子を記入するシート」を言います。介護現場におけるアセスメントは主にケアマネジャーが行いますが、訪問介護やデイサービスなどの介護事業所でもそれぞれ実施します。
そもそもアセスメントとは?
アセスメントとは「査定・評価・判断」を意味し、介護や看護の現場だけでなくさまざまな業界やシーンで使われる言葉です。
人物の能力やスキルなどを評価する際の「人材アセスメント」、開発事業では土地開発が環境にどのような影響を及ぼすかについてを調査する「環境アセスメント」などの言葉が広く使われています。
介護の現場ではご利用者の持つ困りごとや希望などについて情報収集し、分析する作業をアセスメントと言います。
心身の状態・介護できる家族の状況・住環境などの情報を収集した上で分析し、ご利用者にとって必要なケアを検討します。
アセスメントは、ご利用者やご家族が希望する適切なケアを提供するためには重要な作業です。
介護現場におけるアセスメントシートの内容
ケアマネジャーがケアプランを作成する際に実施するアセスメントには、様々な項目があります。厚生労働省で定められている課題分析の標準項目は以下の通りです。
【基本情報に関する項目】
標準項目名 | 項目の主な内容(例) |
基本情報(受付、利用者等基本情報) | 居宅サービス計画作成についての利用者受付情報(受付日時、受付対応者、受付方法等)、利用者の基本情報(氏名、性別、生年月日、住所・電話番号等の連絡先)、利用者以外の家族等の基本情報について記載する項目 |
生活状況 | 利用者の現在の生活状況、生活歴等について記載する項目 |
利用者の被保険者情報 | 利用者の被保険者情報(介護保険、医療保険、生活保護、身体障害者手帳の有無等)について記載する項目 |
現在利用しているサービスの状況 | 介護保険給付の内外を問わず、利用者が現在受けているサービスの状況について記載する項目 |
障害老人の日常生活自立度 | 障害老人の日常生活自立度について記載する項目 |
認知症である老人の日常生活自立度 | 認知症である老人の日常生活自立度について記載する項目 |
主訴 | 利用者及びその家族の主訴や要望について記載する項目 |
認定情報 | 利用者の認定結果(要介護状態区分、審査会の意見、支給限度額等)について記載する項目 |
課題分析(アセスメント)理由 | 当該課題分析(アセスメント)の理由(初回、定期、退院退所時等)について記載する項目 |
ついて」の一部改正等について
【課題分析(アセスメント)に関する項目】
健康状態 | 利用者の健康状態(既往歴、主傷病、症状、痛み等)について記載する項目 |
ADL | ADL(寝返り、起きあがり、移乗、歩行、着衣、入浴、排泄等)に関する項目 |
IADL | IADL(調理、掃除、買物、金銭管理、服薬状況等)に関する項目 |
認知 | 日常の意思決定を行うための認知能力の程度に関する項目 |
コミュニケーション能力 | 意思の伝達、視力、聴力等のコミュニケーションに関する項目 |
社会との関わり | 社会との関わり(社会的活動への参加意欲、社会との関わりの変化、喪失感や孤独感等)に関する項目 |
排尿・排便 | 失禁の状況、排尿排泄後の後始末、コントロール方法、頻度などに関する項目 |
じょく瘡・皮膚の問題 | じょく瘡の程度、皮膚の清潔状況等に関する項目 |
口腔衛生 | 歯・口腔内の状態や口腔衛生に関する項目 |
食事摂取 | 食事摂取(栄養、食事回数、水分量等)に関する項目 |
問題行動 | 問題行動(暴言暴行、徘徊、介護の抵抗、収集癖、火の不始末、不潔行為、異食行動等)に関する項目 |
介護力 | 利用者の介護力(介護者の有無、介護者の介護意思、介護負担、主な介護者に関する情報等)に関する項目 |
居住環境 | 住宅改修の必要性、危険個所等の現在の居住環境について記載する項目 |
特別な状況 | 特別な状況(虐待、ターミナルケア等)に関する項目 |
ついて」の一部改正等について
アセスメントシートは各事業所によって書き方や様式が異なりますが、標準項目に沿って主に以下のような内容が記載されます。
- 介護サービス利用検討者が介護サービスを必要としている理由
- 利用者の心身状態やそのご家族との関係性、生活環境の様子
- 利用者のニーズに沿った、介護サービスの具体的な内容
アセスメントシートによって解決するべき課題や必要な介護サービスが明確化し、利用者個々に応じた介護サービスの提案が実現します。
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介護ではなぜ、アセスメントが必要?
要介護高齢者の介護サービス利用に際し、アセスメントが必要な理由は以下の通りです。
- 利用者の悩みを聞き取り、課題に沿った長期目標、短期目標の設定を行うため
- 「足を骨折したけど、以前のように歩けるようになりたい」など、利用者の希望を叶えるため
- 解決すべき課題や今後の目標を明確にし、適切な介護サービスを検討するため
適切なケアプラン作成のためには、明確で具体的なアセスメントシートの記入が重要です。
アセスメントでは介護サービスを利用される方やそのご家族との信頼関係の構築も大切になるため、時間をかけて丁寧に利用者やご家族とのコミュニケーションを図りましょう。
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アセスメントの流れ・注意点
ここからはアセスメントの流れや注意点を解説していきます。ポイントを押さえて、必要な情報をヒアリングできるようにしましょう。
訪問前に情報収集しておく
課題分析の標準項目でお伝えしたとおり、アセスメントでは聞き取るべき情報がたくさんあります。それらを全て一から質問するのでは、膨大な時間がかかってしまうため、訪問前にはあらかじめ情報収集をしておくことが大切です。
入院していた病院や入居していた施設、地域包括支援センターなどから紹介があった場合は、事前に情報を提供してもらえます。事前の情報の中から、気になる項目をピックアップしておくと、訪問時にスムーズにアセスメントができます。
身体状態について気になる情報があればあらかじめ医師や看護師、理学療法士などに確認しておいたり、希望するサービスや必要であろうサービスが事前に予想できれば、調べておいたりするとよりスムーズです。
ご高齢者の中には、長時間の面談に疲れてしまう方も多いため、ポイントを整理しておき時間をかけすぎないように配慮しましょう。
訪問時のマナーを確認する
ご利用者に不快な印象を与えないように、訪問時のマナーを確認しておきましょう。
初対面では第一印象が大切です。身だしなみを整え、挨拶や言葉遣いにも気をつけます。ご利用者の中にはケアマネジャーと言われてもわからない方もいます。名刺を渡すときは、名前や所属している事業所、自分の役割を伝えて安心してもらいましょう。
初めて訪問する自宅の場合、場所がわからなくて迷ってしまう可能性もあります。事前に地図などで確認した上で余裕を持って出発し、遅刻しないようにすることも大切です。
訪問時はご利用者の生活環境もチェックする
ご利用者宅を訪問したら、歩き方、話し方、身だしなみなどご本人の状況を確認するのはもちろん、自宅の環境もチェックしましょう。危険な箇所はないか、散らかっていないかなど確認しておくと必要なサービスのヒントになります。
生活環境については、長年それが当たり前だと思って生活していると、本人が問題点に気付いていない可能性があります。聞き取りでは情報収集できない場合もあるので目視でもしっかり確認しておくことが大切です。
答えやすい質問をする
アセスメントでは、ご利用者に多くの質問に答えてもらわなければなりません。
質問の方法には、「はい」か「いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンと、相手が自由に答えられるオープンクエスチョンがあります。
全て「はい」や「いいえ」での返答では、具体的な状況がつかめません。また、全てがオープンクエスチョンであれば、時間がかかってしまったり、解答の的が絞れない場合があります。
すでに分かっている項目や問題がなさそうな項目はクローズドクエスチョン、具体的な内容を引き出したい場合はオープンクエスチョンなど、うまく組み合わせて質問していきましょう。
家族の意向も汲み取る
アセスメントでは、ご利用者の想いを汲み取るのはもちろん大切ですが、ご家族の意向も汲み取ることが大切です。
ご利用者の話だけを聞いていても真実が分からないケースもあります。認知症などで理解力が低下している方が正確な返答ができない場合や、実はご家族が困っているケースもよくあることです。
ご家族にも生活があります。ご利用者が望む生活を、ご家族が支えていけるのかもしっかりアセスメントしなければなりません。
ご利用者とご家族の関係性や介護力を把握しておくことも、ケアプランを作成する際には重要な情報です。
専門職と連携する
ご利用者やご家族へのヒアリングの前後には、他職種に相談しアドバイスをもらうことが、よりよいアセスメントにつながります。
疾患や医療ケアなどに課題がある場合は、主治医や看護師に相談します。移動能力・生活動作・福祉用具・住宅改修などの相談には理学療法士や作業療法士といったリハビリテーションの職員から的確なアドバイスがもらえるでしょう。
専門職の助言で問題がすぐに解決したり、ヒントがもらえたりする場合もあるため、違う観点からの意見を大切にすると、よりニーズに合ったケアプランの作成につながります。
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アセスメントシートの役割・目的
アセスメントシートの役割は、以下の通りです。
- 介護サービス利用者の心身状態、生活環境、ニーズを明確にする
- 利用者の情報を介護サービス提供者間で確認、共有する
- 提供する介護サービスの内容や方針を明確化する
アセスメントシートの作成を行うことで、利用者やご家族、介護サービスを提供する介護職員、医師や看護師などの多職種に情報の共有が行えます。
ケアプランで定められた介護サービスを間違いなく適切に行うためにも、アセスメントシートによる利用者の情報共有は欠かせません。
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アセスメントシートの様式・項目
アセスメントシートの様式にはいくつかの種類があります。
訪問介護などの居宅介護サービスに適した様式や、介護施設でのサービスに適した様式など、介護事業所やサービス内容によってアセスメントシートの様式は異なります。
居宅介護支援事業所でよく使われているアセスメントの様式は「居宅サービス計画ガイドライン方式」や「MDS-HC様式」です。
それぞれの様式にそれぞれの特徴があるため、介護サービスを提供する介護事業所や、提供する介護サービスの内容に適した様式を使用しましょう。
7種類のアセスメントシートの様式とその特徴についてご紹介します。
<包括的自立支援プログラム> 特徴:要介護認定時に利用される「認定調査票」との関連が強い。 この様式では、要介護認定時に利用される認定調査票とアセスメントを関連付けた内容で記載を行うため、ケアマネジャーの個人的な意見が含まれません。根拠に基づいたアセスメントにより、利用者に適した介護サービスの提案を手助けします。 |
<居宅サービス計画ガイドライン> 特徴:全国社会福祉協議会が作った様式で、エンパワメントサポートが含まれている。 この様式では、利用者のできること・できないことにスポットを当て、利用者の「潜在的能力」を引き出すケアプランの提案を手助けします。 |
<MDS-HC方式> 特徴:居宅介護支援事業所、介護施設の両方で利用できる。 この様式は、在宅での介護から介護施設への切り替えを検討している方や、居宅介護支援事業所と介護施設の両方の利用を検討している方に適しています。 |
<R4> 特徴:公益社団法人全国老人保健施設協会が作った様式で、介護老人保健施設に適している。 この様式では、全国老人保健施設協会が保有する介護老人保健施設の情報を基に、「ICF」と呼ばれる国際的分類での5段階の絶対値評価を行います。介護老人保健施設の利用検討者が、快適な介護サービスを受けることに繋がります。 |
<ケアマネジメント実践記録方式> 特徴:広範囲、かつ細かい調査分析を行える。 この様式では、利用者とご家族の意見や希望の項目や、アセスメント担当者の考えや意見などの記入項目があり、広範囲かつ細かい視点からケアプラン作成が行えます。 |
<日本介護福祉会方式> 特徴:要介護高齢者の「衣食住」「健康状態」「家族や社会との繋がり」を分析できる。 この様式は、訪問介護サービスに適しており、要介護高齢者の「価値観や意思」「生活環境やこれまでの生活歴」を尊重したケアプラン作成に特化しています。 |
<日本訪問介護振興財団版方式> 特徴:高齢者や障がい者など、幅広い人に利用できる。 この様式は、他の様式とは違い、高齢者に限定せずに使用することができます。また、複数回記入できるため、介護サービス利用前後の変化が確認しやすいです。 |
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アセスメントシートを作成する時期・タイミング
アセスメントシートを作成する時期は、初回のアセスメントを行うタイミングと、サービス導入後にモニタリングを行うタイミングです。
ただし、サービス導入時の初回アセスメントと、サービス導入後のモニタリングの際に実施するアセスメントでは意味合いが異なります。
詳しくみていきましょう。
アセスメントは介護サービスの利用開始前に行う
アセスメントとは、基本的に介護サービスの利用を開始する前に行うものを指します。ご利用者の情報をしっかり把握しておかなければケアプランに適切なサービス内容を反映させることができません。
サービス開始前は、ご利用者の様子を何も把握していないところからスタートします。アセスメントシートの項目に沿って必要な情報を収集し、現状を把握することが大切です。
アセスメントはモニタリングの時にも行う
次にアセスメントシートを作成するタイミングは、モニタリングの時期です。
モニタリングとは、介護サービスの提供後、定期的にご利用者の生活の様子や意向を確認することを言います。
ケアマネジャーのモニタリングは「要介護者は月に1回」「要支援者は3ヶ月に1回以上」の頻度で実施することが定められています。
モニタリングの目的は、ケアプランに記載されている介護サービスの実施状況や、新たなニーズを把握し、サービスの継続や変更を検討することです。ご利用者の心身状況や環境の変化などを明確にするためにアセスメントを実施し、アセスメントシートを更新します。
ケアプランの内容は、ご利用者の状況により適宜見直しが必要です。定期的なモニタリングの中で随時アセスメントし、ケアプランを調整いくことがケアマネジャーの大切な役割です。
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アセスメントシートの基本的な書き方
アセスメントシートには、基本情報として以下のような情報を記載します。
- 利用者の氏名、性別、住所や電話番号
- 現在の生活環境や生活保護の受給について
- 要介護認定区分や障害者手帳の保持について
- 利用者が現在利用している介護サービスについて
- 利用者の寝たきり度や歩行状態、身体の状態について
- 介護サービスに対する利用者本人の意向
さらに、利用者の情報を分析するためにアセスメント項目というものがあります。
利用者に最適なケアプランを作成するために、利用者の状況に応じてしっかり記入しましょう。
【事例1】認知症の方のアセスメントシート作成
認知症により、社会との繋がりが断たれてしまっている方の場合です。
既往歴や現在の疾病の症状などの健康状態や、食事・入浴・排泄などの日常生活の動作に加え、以下の内容にスポットを当てて観察、聞き取りを行いましょう。
- IADL(手段的日常生活動作)について
調理や掃除、買物、お金の管理などの動作が自分でどこまでできるか。「自立可」「一部介助有」と評価を行います。 - 認知機能及びコミュニケーション能力
日常生活上での意思決定がどの程度行えるか。また、聴力や視力、他者へ意思を伝えることがどの程度行えるかを記載します。 - 社会との関わり
社会活動への参加状況や、本人の孤立感の有無などを記入します。
【事例2】寝たきりの方のアセスメントシート作成
寝たきりにより心身機能の低下が著しい方の場合です。
既往歴や現在の疾病の症状などの健康状態をさらに深掘りして観察、聞き取りを行いましょう。
- 排泄状況
排泄の頻度やおむつ、ポータブルトイレの使用状況を記載します。また、失禁やその後始末、排泄のコントロールについても確認が必要です。 - 食事及び口腔衛生の状況
普段摂取している食事の回数や栄養バランス、水分の摂取量を記載します。また、口腔内の衛生状況についてもしっかり確認しましょう。 - 皮膚状態やその他必要な配慮事項
褥瘡や皮膚疾患、その他疾患による医療的処置が必要かどうかを記載します。また、介護拒否や暴力行為などの問題行為の有無。終末期ケアを要するかの確認も必要です。 - 居住環境及び介護状況
現在住んでいる住宅や環境について、リフォームの必要があるかを図面も用いて記載します。バリアフリー設備が整っているか、介護者の見守りが行き届いているかの確認も必要です。
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アセスメントシート作成のポイント
アセスメントシート作成のポイントとして、以下のような点に注意しましょう。
- 利用者の意向をメインとし、ご家族や介護職員の情報をメインにしない。
- アセスメント担当者の個人的な意見ばかりを記載しない。
- メモとしての記載は避け、誰が見ても分かりやすい内容にまとめる。
アセスメントシート作成の目的は、「介護サービス利用者ご本人の意向を、ご家族や多職種に共有すること」です。
そのため、利用者以外の人の意見を主体とせず、分かりやすい内容を心がける必要があります。
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利用者のニーズを把握し、適切な介護計画を
アセスメントシートは、担当する利用者全員分を同じ内容で記載するわけではありません。
利用者個々の心身状況、ニーズなどを詳細に把握して記載することで、その方に応じた介護サービスの提供が実現します。
そのため、アセスメントシートの書き方や様式を理解しておくだけではなく、利用者の声や話をしっかり聞くことがアセスメントシート作成の根本です。
アセスメントシートの記入方法については、基礎知識として身に着けておくようにしましょう。
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