介助犬とは?身体障害者補助犬の種類や仕事、訓練について解説

#介護の知識

「介助犬」とは肢体不自由者の方を手助けするために訓練された犬のことです。介助犬のサポートにより、障害のある方が自立し社会参加が実現します。

2002年には「身体障害者補助犬法」が成立し、身体障害者の方が補助犬と同伴で施設をスムーズに利用できるように受け入れる義務が定められています。

視覚障害者の方をサポートする「盲導犬」に比べるとまだまだ数が少なく、認知度が低い「介助犬」。今回の記事では介助犬を含め、身体障害者をサポートする補助犬について解説します。

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身体障害者補助犬とは?

身体障害者の方を支える「身体障害者補助犬」には、介助犬のほかに「盲導犬」「聴導犬」の3種類があり、必要なサポートによってその役割が異なります。

介助犬を含む、身体障害者補助犬について確認してみましょう。

肢体不自由者の方をサポートする「介助犬」

「介助犬」は手や足が不自由な、肢体不自由者の方を手助けするように訓練された犬です。主に、車椅子や杖歩行の方が対象になります。

介助犬の役割の一例は以下の通りです。

  • 落としたものを拾う
  • 手の届かないものを持ってくる
  • 移動の補助をする
  • フタなどを開ける
  • ドアを開閉する
  • 靴や靴下を脱がす
  • 緊急時に人を呼ぶ

日常生活の手助けのほか、緊急時の対応も訓練でできるようになります。障害の部位や程度により、その方が必要とする作業は異なるため、それぞれに合わせた訓練が必要です。

介助犬は補助犬3種類の中では1番歴史が浅く、1993年に育成がスタートされました。そのため、まだまだ実働数は少なく、外で見かけることも少ないかもしれません。

視覚障がい者の方をサポートする「盲導犬」

盲導犬は目が見えない方や見えにくい「視覚障害者」の方をサポートするために訓練された犬です。主に視覚障害者の方が安全に外出できるようにサポートします。

視覚障害のある方が外出される際は、白杖と呼ばれる白い杖を持ち歩行されている姿のほうがよく見かけるかもしれません。視覚障害のある方は、杖で障害物を確かめながら目的地に向かっています。盲導犬はその白い杖に変わり段差・障害物・交差点などを知らせ、道路の端を歩くことや指示した方向に歩くことを訓練されています。

盲導犬と視覚障害者の方をつなぐために大切な役割を果たすのが「ハーネス」です。ハーネスは犬の胴体部に取り付けられ、ハーネスに付いたハンドルから犬の動きがダイレクトに伝わるようになっています。そのハーネスから伝わってくる動きにより、さまざまな状況を判断しているのです。

ハーネスは「道路交通法施行令」で、白または黄色を着用するように義務付けられています。犬や人の負担を減らし快適に歩行できるよう、盲導犬の歴史と共により良い形へと改良が続けられています。

聴覚障がい者の方をサポートする「聴導犬」

耳の不自由な方に、音をお知らせするのが「聴導犬」です。音が発生したら、足でタッチするなどのさまざまな方法で知らせてくれます。

聴導犬が知らせる音は、玄関のチャイム・着信音・家電製品の終了音・目覚まし時計やタイマー・泣き声などです。聴導犬は、オレンジ色の「聴導犬」と書かれた胴着を着用しています。外見からでは分かりにくい「聴覚障害」を持つことを周囲の人に知らせる役割も果たします。

聴導犬は介助犬より12年早い1981年に育成がスタートしましたが、盲導犬よりも歴史が浅く、介助犬と同様にその数は多くありません。

介助犬に向いている犬種

介助犬の犬種は、ラブラドール・レトリバーやゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバーとゴールデン・レトリバーのミックスが大半です。

ものを拾ったりドアを開閉したりする作業はある程度体が大きく力が必要になり、小型犬がこれを行うのには困難です。また、人と一緒に何かすることが好きで環境に馴染みやすい性格があります。優しいイメージも好まれやすいでしょう。

盲導犬として選ばれる犬種も介助犬と同様です。ハーネスを着用して目の不自由な方を安全に導くためには大きな体が必要です。一方で、聴導犬は大きい体である必要がありません。小型犬も含めさまざまな犬種が聴導犬として活躍できます。

身体障害者補助犬に共通して言えることは、犬種だけではなく犬によっても性格や適正は違うため、個々を見極めて判断することが大切です。

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介助犬になるまでの流れ

ここからは、介助犬になるまでの流れを確認してみましょう。

生後2ヵ月〜1歳|パピーファミリーのもとで生活

子犬は生後2ヶ月までは母犬や兄弟犬たちと暮らしますが、その後パピーファミリーの元へ引き取られます。パピーファミリーとは、子犬が1歳になるまでの10ヶ月間のお世話をするご家庭のことです。

介助犬の候補となる子犬は、訓練を受ける1歳を迎えるまでの期間、パピーファミリーのもとで愛情をたっぷり受けながら育ちます。ここで人間との信頼関係を築き、共に生活する上でのマナーも身につけます。

パピーファミリーとして子犬を受け入れるにはいくつか条件がありますが、受け入れ先はボランティアとして受け入れてくれた一般の家族です。パピーファミリーは障害者福祉の一環として大切な役割を果たします。

1歳〜|介助犬としての訓練を受ける

1歳になると、訓練センターでの訓練が開始されます。

「基礎訓練」として行うのが、呼んだら来ることや、座る・伏せる・待つなどの基本動作、指示された場所での排泄などです。他の動物や食べ物などの関心を無視できる訓練も大切です。

また「介助動作訓練」では、肢体不自由者の方が必要とする、物を拾う・持ってくる・ドアを開閉するなどニーズに応じた動作の訓練も行います。訓練センター内だけはなく、さまざまな生活場面での対応ができるように、公共施設などでも訓練します。

介助犬に向いていない犬もいるため、訓練センターにきた候補犬が全て介助犬になるわけではありません。それぞれの適性を見極め、介助犬にならなかった犬は一般家庭で暮らすことになります。

パートナーとの合同訓練

パートナーが決定したら合同訓練が始まります。パートナーの障害や生活環境に合わせた動作を学びます。

パートナーと生活を共にするようになったら、介助犬のお世話をするのは基本的に飼い主の仕事です。そのため、飼い主に対して介助犬への接し方や健康管理、エサ、排泄についてなど世話の方法の指導も大切な訓練です。

合同訓練は、 身体障害者補助犬法において、実働40日以上行うこととされています。最終段階ではパートナーの自宅や職場、学校などでの訓練も必要です。

2歳から10歳|介助犬として活動

合同訓練が終了し、厚生労働大臣指定の法人で認定試験と審査で認められると「身体障害者補助犬認定手帳」が発行されます。身体障害者補助犬認定手帳は、認定番号・認定年月日・認定をした団体名などが記載されている大切な書類です。使用者の名前や生年月日連絡先のほか、介助犬の名前と生年月日、犬種なども記載されています。外出時にはこれを携帯し、施設等を利用する際に求められた場合には提示しなくてはなりません。

補助犬に認定され、飼い主との生活が始まってからも、継続的に訓練や指導は行われ、フォローアップされます。特に最初の1年目は2〜3ヶ月に1度は報告を求めることと決められています。

介助犬の活動期間は2歳から10歳までの8年間です。引退後はボランティアのもとで生活します。

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介助犬を希望する方のご相談・お問い合わせ方法

介助犬が申請できるのは身体障害者の認定を受けている方です。介護保険の対象ではないため、四肢が不自由で介護認定を受けていても申請することができません。要介護認定を受けている方で介助犬を申請したい方は、障害者認定も併せて認定されれば申し込める可能性があります。

ただし、自治体によっては年齢を65歳までと定めているところや、身体障害者手帳の等級を2級以上に限定しているところもあるため必ず確認が必要です。

介助犬の相談は、お住まいの地域の「障害福祉担当窓口」で受け付けています。また、厚生労働省から指定を受けた補助犬の認定団体へ直接問い合わせて話を聞いてみるのも良いでしょう。

厚生労働省のホームページに記載されている一覧を参考にしてください。

都道府県身体障害者補助犬法担当窓口一覧

第二種社会福祉事業届出状況一覧(介助犬・聴導犬)

盲導犬指定法人・訓練施設一覧

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町で介助犬を見かけたら?

犬が好きな方であれば、介助犬に声を掛けたり触ったりしたくなるかもしれませんが、そのような行為は避けてください。じっと見つめる行為もNGです。

介助犬がハーネスを付け、指定の胴着を着用している時はお仕事中です。気が散ってしまうと事故の原因になる可能性があります。

ただし、介助犬は完璧ではありません。もし困っている様子があれば使用者さんのほうへ声を掛けましょう。

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介助犬は障がいがある方の生活をサポートする存在

今回の記事では、介助犬について解説しました。介助犬は障害がある方の生活をサポートする大切な存在です。介助犬が手助けすることで、できることや外出の機会が増え社会参加の幅が広がります。

介助犬が活躍するためには周囲の協力も必要です。介助犬が育つまでには、ボランティアのパピーファミリーの協力が欠かせないのはもちろん、介助犬育成のための費用も多くが寄付でまかなわれています。また、介助犬とそのパートナーがより快適に生活できるためには、周囲があたたかく見守ることが何より重要です。周囲が理解を深め、広く受け入れる社会に発展していくことが求められるでしょう。

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