介護職による言葉の暴力とは?言葉の乱れが利用者の虐待に繋がる

介護職者による「言葉の暴力」

言葉というものは、目に見えるものではなく、発した後はすぐに消えてしまいます。
人は目に見えず、消えてしまいやすいものには意識が向きにくい傾向があります。
そのため、日頃のストレスから暴言を吐いても罪悪感を感じにくく、感覚が麻痺してしまうと無自覚・無意識的に暴言を吐いてしまうケースもあります。
だからこそ、介護職員は自分たちが発する言葉や表現に常に意識を向けて仕事に取り組む必要があります。

介護職で何が虐待に当たるのか

虐待は、身体的な外傷ですぐに判明する暴力が全てではありません。
厚生労働省の定める虐待防止法では、以下の5種類が虐待として区分されています。

  1. 身体的虐待
    暴力的行為によって傷やあざ等の外傷や痛みを与える行為。
    外部との接触を意図的、継続的に遮断する行為。
  2. 心理的虐待
    脅しや侮辱などの言葉や態度、無視や嫌がらせなどにより精神的苦痛をあたえること。
  3. 性的虐待
    本人が同意していない性的行為やその強要
  4. 経済的虐待
    本人の同意なしに財産や金銭を使用し、本人が希望する金銭の使用を強制的に制限すること。
  5. 介護放棄(ネグレクト)
    必要な介護サービスの利用を妨げ、世話を放棄すること。
    高齢者の生活環境や身体的・精神的状態を悪化させること。

このように、身体に関わる行為だけでなく、「言葉の暴力」で精神的なダメージを与え、尊厳を傷つける行為も虐待とされています。

虐待と共に問題視されている「スピーチロック」

「スピーチロック」とは、言葉の拘束と呼ばれています。
「ちょっと待って!」「ダメ!」という言葉で相手に身体的・精神的な抑制を行うことです。
スピーチロックは一般的な声かけと明確な差がないため、分かりにくいのが特徴ですが、虐待と共に問題意識が高まっています。

利用者から「トイレに行きたい」「部屋に戻りたい」と言われた。
介護職員が別の利用者の対応に追われており、「ちょっと待って!」と返した。

このような声かけはスピーチロックに該当します。
すぐに対応できない場合は「〜していただけますか」と、利用者の判断を促すような優しい口調や、具体的な内容を伝えることが大切です。

【言葉の暴力の例①】介護職者から利用者へ

介護職員が利用者に投げる「言葉の暴力」とは具体的にどのようなものでしょうか?
介護施設で実際に起きた言葉の暴力の一例は以下の通りです。

  • 介護職員が利用者に「あほ」「ばか」「忙しいねん」と暴言を吐いた
  • 難聴の利用者に「うるさい」とペーパータオルに書いて渡した

介護職として、このような言動は決して許されるものではありません。
しかし、なぜ介護職員はこのような言葉を吐いたのか。
背景には、多忙を極める介護現場でのストレスにより言葉遣いが乱れているという事実も。
今一度、自身の言葉遣いについて再確認し、利用者への態度を改める必要があります。

言葉の乱れは虐待の始まり

介護現場でよく見かける言葉の乱れは以下の通りです。

  • 利用者に敬語を省略した「ため口」を使い、上から目線で話しかける
  • 利用者に小さな子供のような「赤ちゃん言葉」で話しかける
  • 利用者に「ちゃん付け」や「あだ名」で呼びかける

これらの言動は、介護職員に悪気はなく、利用者との関係を深めるために使用しているというケースが多いです。
しかし、これらの言葉は人生の先輩に対して使うものではありません。
介護職員は常日頃行っている自身の言動について、リスクマネジメントの対象として位置付けておくことが大切です。

また、避けたい表現や言葉として、「~してね」「ダメでしょ」「危ないから座ってて」
というようなものも挙げられます。
「~していただけますか?」「いつでもおっしゃってください」「すぐに行きます」
というような言葉に改善が必要です。

【言葉の暴力の例②】職員から職員へ

言葉の暴力は介護職員から利用者へだけでなく、職員間でも生じます。
職員間での言葉の暴力は、外傷のように目に見える被害がない分、「これっていじめ?」
「仕事だから仕方ないのか?」と自分では判断しにくい場合が多いです。
しかし、職員間の言葉の暴力はパワハラ、セクハラ、マタハラなど、社会で問題視されている「ハラスメント」に該当します。
言葉の暴力は直属の上司や職場の人事、社外の相談窓口に相談しましょう。

職員間での言葉の暴力の一例

職員間での言葉の暴力には「暴言」「嫌み」「陰口」があります。
具体的な内容に関しては以下の通りです。

  • 書類を提出すると「やり直せ!」と怒鳴られ、正当な理由なく何度も書類を突き返される
  • 同僚の前で「馬鹿だな」「無能だ」と暴言を浴びせられる
  • 仕事で成果を出すと「無資格のくせに生意気」と嫌みを言われる
  • 妊娠中の時短勤務で「周りの迷惑を考えていない」「脳天気」と陰口を言われる
  • 「女のくせに」「女には無理だ」と仕事を任せてもらえない

なぜ介護職の言葉の暴力が減らないのか

多くの介護職員は「高齢者のよりよい生活をサポートしたい」という熱意で仕事に取り組んでいますが、言葉の暴力をしてしまう介護職員がいるのも事実です。
厚生労働省の調べでは、介護施設で虐待が起こる要因について以下のように報告されています。

  • 教育、知識、介護技術等に関する問題
  • 職員のストレスや感情コントロールの問題
  • 虐待を助長する組織風士や職員間の関係の悪さ、管理体制等
  • 人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ

介護職員の言葉の暴力や虐待が減らない理由として、溜め込んだストレスのはけ口として立場の弱い高齢者や新人に八つ当たってしまうこと。
そして、知識や技術不足でうまく対応できないことでのストレスで高齢者に八つ当たってしまうケースも考えられます。

また、厚生労働省の調べでは、被虐高齢者の状況が以下のように報告されています。

  • 要介護3以上
  • 認知症罹患者
  • 寝たきり度が高い高齢者

人員不足が深刻化している介護現場で被虐高齢者の言動により、介護職への負担が多いことが言葉の暴力や虐待を招く要因とされています。

言葉の暴力の相談はどこにしたらいい?

利用者本人には認知症で言葉の暴力を訴えることが難しい言葉の暴力。
介護職員が利用者に対し、言葉の暴力をしているのを目撃してしまった。
そんな利用者のご家族や別の介護職員が言葉の暴力を報告・相談するべき先は以下の通りです。

  1. 該当職員を含めて施設運営者と話し合う
    利用者への言葉の暴力を目撃したご家族や介護職員は、まず該当職員を交えて施設運営者と話し合い、事実確認を行いましょう。
  2. 警察に相談する
    利用者の居室にカメラやレコーダーを設置し、虐待と認められる暴言の証拠を用意し、警察に相談しましょう。言葉の暴力は立派な犯罪行為です。
  3. 弁護士に相談する
    言葉の暴力を目撃しても、警察に相談できるような証拠がなく、施設運営者が話し合いに応じない場合は弁護士への相談が適切です。

職員同士の場合、まずは証拠集めを

職員間での言葉の暴力やハラスメントに悩み、自力での解決が難しい場合は、以下のような証拠を用意することが最前です。

  • 暴言や悪口の記録やメモ
  • 客観的な第三者による証言
  • メール、SNSの文章
  • 医師による診断書

職員間での言葉の暴力の相談先

職員間での言葉の暴力での相談先は以下の通りです。

  1. 直属の上司
  2. 会社の上層部
  3. 労働局、労働基準監督署
  4. 社外の相談窓口

労働局や労働基準監督署に相談した場合、相談員が会社に連絡し、事実確認や指導を行います。
しかし、事実確認に時間がかかるケースが多く、暴行などの刑法に結びつかない場合、責任の追及が難しいことがあります。
自身が受けているハラスメントが違法行為に該当するか、事前に調べることをオススメします。

また、職場のハラスメントに関する公的な相談先は労働局以外にも様々です。

  • 労働委員会や都道府県庁労政主管課
  • 全国の法テラス地方事務所
  • 法務局
  • 法務大臣の認証を受け、「かいけつサポート」を行っている民間事業者

これらの相談先は、職場でのハラスメントを直接解決できません。
まずは上記の相談先で、解決に役立つ法制度を教えてもらってから上司や人事、労働局などに相談するという方法もあります。

言葉の暴力を少しでも減らすために

私たち介護職員が日々の介護業務の研鑽に励むことで、介護サービスの質が向上します。
しかし、その一方で利用者との距離感が妙に近くなってしまう、介護業務に対する慣れから態度が横柄になってしまうという難点も生じてしまいます。
長年培った介護職務での経験で感覚が麻痺してしまうことのないよう、専門職として自分自身の使っている言葉や態度を見直す機会を定期的に設ける必要があります。

私たち介護職員が日々の介護業務の研鑽に励むことで、介護サービスの質が向上します。
しかし、その一方で利用者との距離感が妙に近くなってしまう、介護業務に対する慣れから態度が横柄になってしまうという難点も生じてしまいます。
長年培った介護職務での経験で感覚が麻痺してしまうことのないよう、専門職として自分自身の使っている言葉や態度を見直す機会を定期的に設ける必要があります。