介護の知識

介護における訪問マッサージとは?訪問リハビリとの違いについて徹底解説!

介護におけるマッサージとは?

訪問マッサージとは、あん摩マッサージ指圧師が患者の自宅や介護施設に訪問し、医療上必要とされるマッサージを行うことです。

あん摩マッサージ指圧師は「あん摩」「指圧」「マッサージ」を組み合わせた施術を行い、血液やリンパ液の流れの改善・疼痛等の症状緩和を図ります。

訪問マッサージでは、訪問リハビリのように歩行動作などの訓練は行いません。血液やリンパ液の流れを良くし、筋肉や関節動作をスムーズにすること。また、疼痛等の症状を緩和させることが訪問マッサージでの目的です。

マッサージとリハビリはどう違う?

「マッサージ」と「リハビリ」にはどのような違いがあるのかについてです。適用される保険や施術の目的など、細かい違いについて解説します。

目的 <訪問マッサージ>
・脳梗塞後遺症による麻痺や、拘縮がある方の筋力や関節可動域の維持、拡大
・むくみやしびれがある方の血液やリンパ液の循環の改善
・コリや疼痛がある方の痛みや筋緊張の緩和

<訪問リハビリ>
・要支援、要介護者が在宅で日常生活を送るための身体動作の回復
・歩行動作や立ち上がり動作などの回復や維持
対象者 <訪問マッサージ>
・寝たきりの人、歩行困難で通院ができない人
・医師に「医療上マッサージが必要である」と認められた人

<訪問リハビリ>
・要支援、要介護認定を受けた人
・医師に「日常生活を送るためにリハビリが必要である」と認められた人
適用保険 <訪問マッサージ>
・医療保険のみが適用され、要介護認定の有無は問わない
<訪問リハビリ>
・介護保険、医療保険の2つが適用され、以下のケースでは医療保険適用となる
①要支援・要介護認定を受けていない人
②要支援・要介護認定者だが、急な怪我で医師にリハビリが必要と判断された
該当症状 <訪問マッサージ>
以下のような「厚生労働省が定める疾病等」と医師の診断を受けた人
・脳血管障害や頸椎損傷などによる身体麻痺
・パーキンソン病やリウマチによる身体拘縮
・脊柱管狭窄症による歩行困難及び腰痛
・寝たきりで自力で動くことが困難
<訪問リハビリ>
・65歳以上の高齢者で、要介護、要支援認定者であれば疾患の種類は問わない
必要な医療書類 <訪問マッサージ>
医療保険が適用されるため、医師の同意書(診断書)が必要です。医師の同意書(診断書)は、「マッサージの処方箋」の役割を果たします。また、訪問マッサージの長期利用では、3ヶ月ごとに医師の同意書が必要です。なお、訪問マッサージの自費利用では、患者とあん摩マッサージ指圧師との個人契約となるため、医師の同意書は不要です。
<訪問リハビリ>
訪問リハビリでは、医師の指示書または診療情報提供書が必要です。訪問リハビリを行う理学療法士は医師の指示に従い医療業務を行うため、医師の指示書なしでリハビリは行えません。

マッサージがもたらす効果は?

訪問マッサージでは、以下のような効果が期待できます。

  • 身体への刺激によって、血液やリンパ循環の流れが改善する
  • マッサージによるリラックス効果で精神的な安静が得られる
  • 関節可動域を広げ、炎症の改善や鎮痛作用をもたらす
  • 運動機能の維持や向上を通じ、生活リズムが安定する

一方、訪問リハビリでは、歩行や立ち上がり、姿勢保持、車椅子などへの移乗動作などの日常生活に必要な動作の改善を図ります。マッサージは、リハビリに必要な筋力の維持、筋力低下の予防も目的として行われます。

訪問マッサージはどこで受けられる?

訪問マッサージは、自宅でも入居している介護施設でも利用することができます。

しかし、介護施設では一部訪問マッサージの利用を行っていない施設もあります。

まずは以下の流れで訪問マッサージの利用を進めながら、各介護施設や担当ケアマネジャーへの問い合わせも行うようにしてください。

訪問マッサージを行っている事業者に問い合わせる

問い合わせでは、訪問マッサージ事業者との初回カウンセリングを行う日程を調整します。担当のケアマネジャーに相談したり、ネット検索で地域の訪問マッサージ師を探しましょう。

訪問マッサージ師との初回カウンセリングを行う

初回カウンセリングでは、マッサージ師が自宅や介護施設を実際に訪問します。利用者の健康状態や家族の要望を伝え、体験マッサージを受けることができます。無料体験や料金、今後の利用の流れに満足できれば、マッサージの申し込みを行いましょう。

医師に同意書を書いてもらう

訪問マッサージで医療保険を適用するために、医師の同意書が必要です。同意書作成の手続きは訪問マッサージ事業者が行い、同意書は依頼から数日で発行されます。

しかし、同意書には6ヶ月間と有効期限があるため、継続するには同意書の再発行が必要です。

施術開始

医師の同意書が発行されれば、訪問マッサージの施術が受けられます。1回当たりの施術時間は事業者によって異なりますが、目安時間は30分程度です。

訪問マッサージにかかる費用は?介護保険は適用される?

訪問マッサージでは医療保険が適用されるため、介護保険は適用されません。

リハビリは医療保険と介護保険、両方の適用が可能です。マッサージとの併用も可能なため、それぞれの保険適用によって自己負担額が軽減できます。

訪問マッサージの料金は厚生労働省によって定められており、全国一律の料金体制です。

具体的には、以下の3つの要素で訪問マッサージの料金が決定します。

施術の種類・部位数

訪問マッサージの施術には「マッサージ」と「変形徒手矯正術」の2種類があります。

  • マッサージ
    マッサージでは「体幹」「右上肢」「左上肢」「右下肢」「左下肢」の5部位を施術します。1部位350円と決まっており、3部位のマッサージで1,050円となります。5部位全てのマッサージを行うと、最大で1,750円となります。
  • 変形徒手矯正術
    変形徒手矯正術とは、関節可動域の拡大と筋肉増強を目的とする施術で「肩関節」「肘関節」「手関節」「股関節」「膝関節」「足関節」の6大関節が対象です。変形徒手矯正術では、1肢450円がマッサージ費用に加算されます。1度の施術で体幹を除いた左右上下肢の最大4部位まで受けられ、最大費用は1,800円です。

訪問距離

訪問マッサージでは、訪問距離が「4km以内か」「4km以上か」によって往診料が変わります。

全額自己負担の場合、「4km以内=2,300円」「4km以上=2,550円」です。

なお、介護施設への訪問で、マッサージ師が複数名訪問する場合でも往診料は1名分です。

保険者が負担する割合

訪問マッサージでは医療保険が適用されるため、施術料金と往診料を合わせた合計金額のうち、利用者の自己負担は1~3割です。75歳以上の人は1割負担、70歳以上74歳以下の人は2割負担、その他の人は3割負担です。

なお、「障がい者医療費助成制度」では、自己負担なしで訪問マッサージを受けられます。

訪問マッサージを行う職種について

訪問マッサージのサービス提供者は「あん摩マッサージ指圧師」です。

理学療法士、作業療法士などが行う訪問リハビリとは違い、マッサージを行える職種は「あん摩マッサージ指圧師」に限定されています。

また、あん摩マッサージ指圧師として訪問マッサージを行うには、「あん摩マッサージ指圧師国家試験」に合格することが必須です。

訪問マッサージの施術には資格が必要?

訪問マッサージでは「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格が必要です。あん摩マッサージ指圧師国家資格受験には、以下のような要件を満たす必要があります。

  • 文部科学大臣認定の大学、または厚生労働大臣認定の専門学校で3年~4年、「あん摩マッサージ指圧師の養成課程」を修了すること

なお、あん摩マッサージ指圧師国家資格の筆記試験は毎年2月の年1回行われ、150点満点中90点以上の合格基準を満たす必要があります。

訪問マッサージで痛みの緩和を

訪問マッサージは利用希望者も多く、高齢化社会で年々需要が高まっているサービスです。医療保険が適用されるということもあり、利用者は低コストで施術が受けられます。

訪問マッサージの利用を検討されている方は、自分自身にどんな症状があるのか。また、どのような施術内容を希望して、どのような症状の改善を目指したいか。ある程度自分自身の症状や希望を見つめた上で、自分に合った事業者を選ぶことが大切です。

事前に担当のケアマネジャーや訪問マッサージ事業者への相談、問い合わせを行い、自分に合った訪問マッサージ事業を見定めることをオススメします。

訪問マッサージの概要を知るだけではなく、事業者との相性などの細かい部分にもしっかり注目しながら、痛みや身体症状の改善を目指しましょう!